評 価
File No.
1507
製作年 / 公開日
2011年 / 2011年11月11日
製 作 国
アメリカ
監 督
ベネット・ミラー
上 映 時 間
133分
公開時コピー
常識を打ち破る理論で
野球を変えた
ひとりの異端児の闘い。
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最初に観たメディア
Theater
Television
Video
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キ ャ ス ト
ブラッド・ピット
[as ビリー・ビーン]
ジョナ・ヒル
[as ピーター・ブランド]
フィリップ・シーモア・ホフマン
[as アート・ハウ監督]
ロビン・ライト
[as シャロン]
クリス・プラット
[as スコット・ハッテバーグ]
ケリス・ドーシー
[as ケイシー・ビーン]
スティーヴン・ビショップ
[as デヴィッド・ジャスティス]
ブレント・ジェニングス
[as ロン・ワシントン]
ニック・ポラッツォ
[as ジェレミー・ジアンビ]
ジャック・マクギー
[as ジョン・ポローニ]
ヴィト・ルギニス
[as ピッタロ]
ニック・サーシー
[as マット・ケオフ]
グレン・モーシャワー
[as ロン・ホプキンス]
アーリス・ハワード
[as ジョン・ヘンリー]
ケン・メドロック
[as グラディ・フューゾン]
ケイシー・ボンド
[as チャド・ブラッドフォード]
ロイス・クレイトン
[as ミゲル・テハダ]
タカヨ・フィッシャー
[as スザンヌ]
タミー・ブランチャード
[as エリザベス・ハッテバーグ]
リード・トンプソン
[as 若き日のビリー]
ジェームズ・シャンクリン
[as ビリーの父]
ダイナ・ベーレンズ
[as ビリーの母]
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あ ら す じ
高卒で将来を嘱望されプロ球団に入団したものの成功せず、メジャー経験のあるプロ野球選手から球団のフロントに転身するという珍しいキャリアを持つ
ビリー・ビーン
。風変わりで短気なその性格は、若くしてアスレチックスのゼネラル・マネージャーになってからも変わらなかった。自分のチームの試合も観なければ、腹が立つと人や物に当り散らすという、そんなビリーが経営するオークランド・アスレチックスはワールドシリーズにあと一歩というところでヤンキースに敗れ、しかもそのオフには主力選手が次々と他球団へ移籍してしまう。
貧乏球団のアスレチックスには、優秀で年俸の高い選手は雇えなかった。チームの低迷は永遠かと思われ、ワールド・チャンピオンの夢はほど遠かった。だがある時、野球経験はないものの独自のデータ分析に秀でた、イエール大経済学部卒の
ピーター・ブランド
と出会い、彼の理論に貧乏球団が勝つための突破口を見いだしたビリーは、ピーターを自らの右腕として引き抜く。そしてピーターとタッグを組んだビリーは、後に“マネーボール理論”と呼ばれる“低予算でいかに強いチームを作り上げるか”という独自の理論を実践していく。有名選手を高額の年俸で雇う代わりに、彼とピーターの眼鏡にかなった無名の選手を安い年俸で集めるのだ。キャッチャーしか経験のなかった
スコット・ハッテバーグ
を一塁手として雇ったりもする、そんな彼のやり方は、野球界の伝統を重んじる古株のスカウトマンだけでなく、選手や
アート・ハウ監督
らの反発を生み、チーム状況は悪化していく。
それでも強引に独自のマネジメントを進めてゆくビリーだったが、その甲斐あって徐々にチームに勝利をもたらし、やがてアスレチックスは20連勝という前人未踏の記録を達成する。惜しくもワールドシリーズ出場はならなかったものの、球界はビリーの手腕を認め、周囲からの信頼も次第に回復していく。そしてある日レッドソックスから、GMとして史上最高の金額でヘッドハンティングのオファーが飛び込んでくるのだった・・・・・。
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たぴおか的コメント
今もなお現役のオークランド・アスレチックスGM、ビリー・ビーンの“マネーボール理論”にまつわるエピソードを描いた作品。アスレチックスと言えば今年松井秀喜が在籍した球団で、そこに今もビリー・ビーンがGMとして君臨しているとあれば、彼の目には松井秀喜の存在はどう映っているのだろうか。そして、彼のマネーボール理論では果たして今のアスレチックスに松井秀喜は必要なのかそれとも不要なのか?今オフの松井の去就が気になって仕方ない。
“マネーボール理論”の詳細についてはわからない。私が知るのは映画の中から得た知識のみだが、あくまでその前提で言わせてもらうならば、“マネーボール理論”自体はそれほど斬新でも異端でもなく、ごく当たり前の確率論だと感じた。そう感じるのはおそらく私が日本人だからで、“マネーボール理論”よりも早い時期からID野球と称して細かなデータ分析を元にした野球理論を実践した、野村克也という人物がいたためかもしれない。ただ、ビリー・ビーンと野村克也は立場的に大きく違う。実際に監督として選手を動かす野村に対して、ビリーはあくまで強大な人事権を持つものの、実際に試合で采配を振るうことはできない。ってことは、アスレチックスのアート・ハウ監督は優れた監督だったということになるけど・・・・・いかにも「私はサラリーマン」的なノリで決して優秀な監督には見えないんだがなぁ・・・・・あ、そう感じてしまうのは、ハウ監督を演じていたのがフィリップ・シーモア・ホフマンだからというワケではないので、念のため(笑)。
ビリー・ビーンの何が秀でていたかといえば、私は人材を見極める眼力であると断言したい。そしてその最たる例が、自らの右腕としてピーター・ブランドを引き抜いたことだろう。ピーターの存在なくしては“マネーボール理論”も生まれなかったのではないだろうか。おそらく映画にはそこまで詳細にわたって描写することはできなかっただろうが、彼の理論の基盤にはピーターが収集した膨大なデータとその分析結果、そして緻密な計算があったに違いない。
ブラピはビリー・ビーンを憎らしいほど余裕しゃくしゃくに演じているのはさすがで、それがまた見事に絵になっている。そして、彼の娘ケイシーを演じたケリス・ドーシーが、目を惹くような美少女ではないが、愛くるしいルックスには好感が持てる。ただ、“マネーボール理論”が認められるまでには数々の紆余曲折があっただろうし、ビリーも苦悩したり挫折しかかったこともあったと思われる。そんなビリーの人間的側面や、彼を支えたであろう家族との交流が、今ひとつ不足しているように感じるのは惜しまれる。