評     価  

 
       
File No. 1514  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2011年12月03日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   蔵方 政俊  
       
上 映 時 間   123分  
       
公開時コピー   いちばん近くにいるのに、
一番わからないあなた。
 
人生は鉄道に乗った長い旅
夫婦の絆を描く、感動シリーズ第2弾
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   三浦 友和 [as 滝島徹]
余 貴美子 [as 滝島佐和子]
小池 栄子 [as 片山麻衣]
中尾 明慶 [as 小田友彦]
吉行 和子 [as 井上信子]
塚本 高史 [as 片山光太]
岩松 了 [as 島村洋二]
徳井 優 [as 河野啓司]
中川家 礼二 [as 楠木雅也]
仁科 亜季子 [as 深山朋香]
清水 ミチコ [as 沢田良子]
立川 志の輔 [as そば屋の出前]
米倉 斉加年 [as 吉原満]
西村 雅彦 [as 冴木俊也]
 
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あ ら す じ    富山地方鉄道で運転士を務める滝島徹は、仕事一筋の日々を過ごして59歳になった。55歳になる妻・滝島佐和子に支えられながら。徹が1か月後に定年退職を控え、夫婦で第2の人生をスタートさせようとしていたある日、佐和子は結婚するときに辞めた看護師の仕事を再開すると宣言する。しかし徹は佐和子の申し出を理解せず、2人は口論となってしまう。
 思わず家を飛び出した佐和子と徹の溝は深まる一方で、ついに佐和子は離婚届を徹に手渡す。これからの人生は妻のためにと思っていた徹に対し、自分の人生を生きたいと願った佐和子。実は佐和子には、徹の知らないある理由があった。
 そばにいるのが当たり前すぎて、本当の気持ちを言葉にできない2人に、ひとり娘の麻衣とその夫片山光太、徹の同僚や部下、佐和子が担当する患者井上信子の一家の人生が交錯していく。やがて徹と佐和子は、思ってもみなかった第2の人生の出発点にたどりつく・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    2010年に公開された、中井貴一主演の『RAILWAYS』の第2弾となる作品。前作では中井貴一扮する主人公の生き様がメインになっているが、今回の作品では前作の主演より一回り歳上の、定年を間近に控えた三浦友和扮する滝島徹と、余貴美子扮するその妻佐和子の夫婦の絆を中心にした作品になっている。そして、個人的には前作よりも今回の作品の方が、心にしみる秀作だと思う。決して派手さはなくかなり地味な作品かもしれないが、ボディブローを食らうようにじわじわと確実に効いてくる。私のような世代の人間にもそうなのだから、主人公と同じ世代の熟年夫婦にとっては、我が身に照らし合わせて思い当たる節もあるだろうし、感慨も一入だろうと思う。
 それまで仕事一筋に生きてきて、不器用であればこそ35年無事故という輝かしい業績を誇る徹は、自分が妻をないがしろにしてきたこに気づいていないわけじゃない。だからこそ、定年を機に妻に対して今まで報いることができなかった分まで恩返しをしようとしたのだ。ところが、そんな心情になっている徹の気持ちなど知る由もない佐和子は、突然働き始めると言い出し、これが徹の気持ちを逆なでしないはずがない。
 2人は互いに典型的なコミュニケーション不足で、「言わなくても相手はわかってくれている」なんていうのは夢物語に過ぎないのだ。意志は何らかの形で表現しなければ、相手に伝わることはない。それが今回の作品の副題「愛を伝えられない大人たちへ」にも表れている。そして、いい大人、それも人生という年輪の半分以上を刻んできた熟年夫婦のこと、互いに自分の身勝手さをわかっていながらも素直になれないのだ。
 娘の麻衣を演じた小池栄子や、徹の勤務先の後輩の楠木を演じた中川家礼二に新人の小田を演じた中尾明慶、佐和子が介護を担当することとなった老婦人役の吉行和子ら、個性的な脇役陣も魅力的だ。個人的には、徹の高校時代の級友の深山朋香を演じた仁科亜季子の、還暦手前とは思えない若々しい美しさには驚いた。もし私が徹だったら、間違いなく彼女に夢中になってしまったことだろう。
 そして、この作品で最も心を動かされたのはラストシーンでの徹の決断だ。普段は佐和子に対して言葉数も少ない徹が、佐和子に対してああいう提案をしたなんて、思わず「よく言った!」と褒めてあげたくなる。主人公が熟年夫婦だけに劇場へ観に来ていた観客の年齢層は高かったが、扱っている題材は「愛」という世代を問わない普遍的な題材だけに、若い世代が観ても必ず感じるところはあると思う。