評     価  

 
       
File No. 1516  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2011年10月22日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   及川 拓郎  
       
上 映 時 間   119分  
       
公開時コピー   笑ってると、ダマされるぜ。  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   金子 ノブアキ [as 戸辺コウヘイ(レイモンド)]
賀来 賢人 [as 轟ゲンゴロウ(エラリー)]
鎌苅 健太 [as 堺シンゴ(エド)]
ムロ ツヨシ [as 物部ユウサク(大藪)]
市川 亀治郎 [as 神宮寺(アガサ)]
中村 ゆり [as 牧野カオリ]
吹田 早哉佳 [as ヨーコ]
光石 研 [as 行定刑事部長]
 
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あ ら す じ    1週間前以前の記憶を失ってしまった戸辺コウヘイ宛てに届いた、1通の招待状。そこに書かれていたのは、わずか1日の拘束で身体に危険が及ぶこともなく200万円という法外な報酬を得ることができるという、モニター調査のプロジェクト“シャッフル”への招待だった。そして、戸辺が気になったのは、なぜか“シャッフル”の主催者が戸辺の記憶喪失を知っており、しかも失われた記憶を取り戻せるという一文だった。戸辺は招待状に誘われるがまま、とある田舎町・ミツルギ町を訪れる。
 会場に指定されたワインの廃工場跡には、やはり“シャッフル”に参加するために訪れた3名の先客がいた。大阪から来た建設業の堺シンゴ29歳、飲食店を営む物部ユウサク35歳、そして、オカルト系のフリーライター、轟ゲンゴロウ26歳。そしてそこへ現れたのは、“シャッフル”のモニター調査員の神宮寺だった。神宮寺は戸辺ら4人に、モニター調査の説明を始める。ルールはたったひとつ、与えられた課題を拒否したり途中で放棄した場合は、報酬の200万円は支払われない、と。
 神宮寺から提示された課題に取り組む戸辺は、そのたびに激しい頭痛に襲われると共に奇妙な映像が頭に浮かんだ。それは、以前彼は今いる場所に神宮寺らと共にいたという光景だった。それもそのはず、実はコウヘイたち5人は、1週間前にミツルギ町メインバンクを襲撃した銀行強盗“森の窃盗団”のメンバーで、アガサこと神宮寺は計画立案、エラリーこと轟はシステム工作、エドこと堺は銃を使いフロアを制圧、大藪こと物部は逃走路の確保、そしてレイモンドこと戸辺は金の運搬をいう役割分担を演じていたのだ。ところが、奪った3億円の現金を隠した戸辺がアクシデントで記憶を失ってしまい、金の隠し場所がわからなくなってしまった。記憶を失って怯える戸辺を追求すると自殺しかねない、そう考えた残りの4人は、事件を連想させるような偽のモニター調査を通じて戸辺の記憶を回復させようとした、それが“シャッフル”の真相だったのだ。
 シナリオ通りに運んでいると思われた“シャッフル”だったが、予期しない事態が発生する。5人以外には誰もいないはずの廃工場に何者かが侵入し、神宮寺が殴打されてしまったのだ。そして、モニターに登場した人物は、彼らにミツルギバンク襲撃を依頼したMr.ヤマシタで、自分の正体は5人の中の一人だと言う。しかも、戸辺と意気投合して一夜を過ごし、こっそり彼の跡をつけてきたヨーコが人質になっているのだ。そしてMr.ヤマシタは、制限時間内に戸辺の記憶を取り戻せなければ、建物内に設置した爆弾の起爆装置を作動させるという、恐るべきゲームを5人に提案してくる。果たして、時間内に戸辺の記憶は戻るのだろうか?そして、Mr.ヤマシタの正体は何者なのか・・・・・?
 
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たぴおか的コメント    10月22日に公開の作品だが、地元の劇場で12月3日から公開されると知って、期待度もそれほど大きくなかったために、地元公開まで約2ヵ月待つことにした。及川監督が自ら手がけた同名の舞台を映像化した作品だが、いかにも舞台をそのまま映像化したという雰囲気が、良くも悪くも強く感じられる。この作品を観た方の感想が書かれた掲示を見てみると、二転、三転する先の読めないストーリーが面白いという感想が多く、是非ともその真偽のほどを確かめてみたくなったのだが、結論を言えば前評判は決して嘘ではなかった。
 二転、三転すると書いたが、実際にはそれどころか四転、あるいは五転もしているのではないかというストーリー。“シャッフル”の真の目的が実は戸辺の記憶を取り戻すことではなかったとは、さすがに想定外だったし、さらにその裏側に密かな悪意が隠されていたなんてわかるはずもない。ところが、その後もさらに予想を裏切る展開が続くのだ。そこまでどんでん返しが続いてしまうと、さすがに感覚が麻痺してしまって、もはや「そう来るのか!?」という驚きを感じることもなく、「はぁ、そうですかぁ」とそれが当たり前のように受け入れてしまう自分がいた。どうせなら最後にさらにもうひと捻り加えて、実は戸辺とヨーコが・・・・・なんて終わり方の方がスッキリしていいような気もする。“あの女性”と光石研扮する行定刑事部長が結託していたというのは、ちょっと強引過ぎて無理があるんじゃないだろうか。
 限られた一室で繰り広げられる、5人の男性による密室劇という設定は、ある意味『キサラギ』に通じるものがある。ただ、その5人が銀行強盗であることや、最後には殺人まで絡むため、後味はハッキリ言っていいとは言えない。また、キャストが今ひとつインパクト不足で魅力に欠けるのも否定できない。主演の金子ノブアキも頑張っているのはわかるが、どうしても華がないというか地味に感じてしまい、残念ながら観る者を惹き付けるような演技ではなかった。主役がそんな有様だから、準主役のエラリー、エド、大藪を演じた3人も推して知るべしだろう。
 そんな中私の目を引いたのは、妙に大真面目でそれでいてどこか笑いを誘うような神宮寺を演じた市川亀治郎の怪演だ。そのやたらとハイテンションな神宮寺だが、課題を与えるごとにやたらと戸辺に絡む。そして、それが実は最初のどんでん返しへの布石になっていたりするのだ。それだけに、彼がスクリーンから姿を消すと物足りなさを感じてしまった。