評     価  

 
       
File No. 1518  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2011年12月10日  
       
製  作  国   フランス  
       
監      督   フレデリック・シェンデルフェール  
       
上 映 時 間   100分  
       
公開時コピー  
もうひとりの自分。それは殺人鬼の私
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   カトリーヌ・ヴァナッス [as ソフィ・マラテール]
エリック・カントナ [as ダミアン・フォルジャ]
メーディ・ネブー [as ステファン・デファース]
カリーナ・テスタ [as ベネディクト・セルトー]
オーレリアン・ルコワン
カリーナ・テスタ [as クレール・マラス]
ブリュノ・トデスキーニ
 
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あ ら す じ    モントリオールに住む25歳のカナダ人女性ソフィ・マラテールは容姿も気立ても悪くないが、バカンスを一緒に過ごす親しい友人や恋人がいなかった。その上、ファッション・イラストレーターの仕事は不調で、仕事をもらえるはずだった雑誌社からも断られてしまう。ところが、雑誌社の編集者クレールからランチに誘われたソフィは、クレールからあるアドバイスを受ける。それは“switch.com”というサイトにアクセスし、海外の利用者と自宅を交換してみてはどうかというもので、クレール自身もそのサイトを利用して運が好転したと言う。
 クレールの体験談に惹かれたソフィは早速“switch.com”に登録し、間もなくくベネディクト・セルトーという女性との間で契約が成立する。互いに家の鍵を交換し、ソフィはパリに飛んだ。パリ7区にあるベネディクトのアパートに訪れたソフィは、外観も内装も豪華な造りのその部屋をすっかり気に入り期待に胸を膨らませるが、翌朝待っていたのは悪夢のような出来事だった。
 激しい頭痛と嘔吐感で目覚めたソフィーがシャワーを浴びていたところへ、玄関を破壊して警官隊が突入してくる。連行された警察では、殺人課の警部ダミアン・フォルジャから信じられない話を聞かされる。アパートの別の部屋でトマ・ユイゲンスという若者の死体が見つかったというのだ。その上、その死体は切断された頭部が行方不明で、凶器のナイフにはソフィの指紋が付着していた。
 さらに問題なのは、警察がソフィを“ベネディクト・セルトー”として逮捕したことだった。ソフィは自分がソフィ・マラテールであると主張し、すべての経緯を説明するが、アパートで押収されたベネディクト名義のパスポートにはソフィの写真が貼られ、“switch.com”というサイトも存在しなかった。さらに、アパートの近隣の人々はおろか、ベネディクトの母親もソフィの写真をベネディクトだと証言したのだ。
 このままではフォルジャ警部によって精神病院へ送られてしまうという窮地に立たされたソフィは、検査の隙を突いて人質をとり、警部の銃を奪って警察から脱走する。一方のフォルジャ警部は、事件を調べていくうちに次々と判明する事実に、ソフィの訴えが事実ではないかと考えを変えていく。しかし、ベネディクトはソフィの母親を殺害して家に火を放ち、パリへと舞い戻るといよいよソフィにその魔手を伸ばすのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    私の不確かな記憶によれば、新宿武蔵野館で映画を観るのは2007年1月の『フリーダムランド』以来のことになる。それほど意識して避けていた新宿武蔵野館に足を運んだのは、この作品の公開の上映館が全国でも新宿武蔵野館と大阪の梅田ガーデンシネマのたった2館しかなかったため。ここまでして観た結果が面白くなければ非常に不愉快な気持ちにさせられただろうが、どうやら最悪の事態だけは回避されたようだ。3スクリーンあるうち最大のスクリーンで観ることができたのも幸いだった。
 コピーに「もうひとりの自分。それは殺人鬼の私」などとあるために、例によって予備知識を仕入れなかった私は、てっきり主人公のソフィが二重人格なのだと思っていたが、観てみるとその予想は全くの見当違いであることがわかった。そして次に、『フォーガットン』のようにすべてエイリアンの仕業で片付けてしまうようなドンデモ映画なのかと思ったが、それもやっぱり違っていた(笑)。ソフィが陥れられた信じ難いような状況には、実は何の超常現象もエイリアンも絡んでこない、れっきとした理由があるのだ。ちょっと苦しいとは思うけど。
 ソフィはベネディクトと“Switch.com”というサイトを経由して自宅を交換するという設定は、キャメロン・ディアスとケイト・ウィンスレットの『ホリディ』を思い出させる。日本では家を交換するなんてあり得ないし考えられないような話だが、欧米では一般的に広く行われているのだろう。そして、その“Switch.com”に偶然ソフィが登録して、偶然ベネディクトと家を交換することとなり、偶然にも殺人事件に巻き込まれた・・・・・ずいぶん偶然が重なるじゃないか、と思ったら、実はそれらはすべて偶然ではなく必然だったのだ。ソフィは“Switch.com”で家を交換する相手を探さなければならなかったし、彼女の相手はベネディクトでなければならなかった。その辺りの理由は、ストーリーが後半に進むにつれて次第に明らかになっていく。
 この手の作品の場合は、警察などあてにならないために主人公が独力で事件の真相を暴く、というのが通例になっているが、この作品に登場する警察(ダミアン・フォルジャ警部)はバカじゃない。最初はソフィの訴えに少しも耳を貸そうとしなかったが、些細な事実から真相に徐々に迫っていく。そうなると、それまでは敵のように思っていたダミアンが、急に頼もしく見えてくる。そして、彼が危機一髪のところでソフィを助けてくれるのだ。
 ストーリーの展開上必要だとは思えないソフィの入浴シーンがあるのは、観客に対する単なるサービス?そんなサービスはなくても、次から次へと展開するストーリーは、観る者を決して退屈させない。ひとつ不満を言わせてもらうならば、ベネディクトの顔をハッキリと確認できるシーンがなかったことだろうか。