評     価  

 
       
File No. 1530  
       
製作年 / 公開日   2010年 / 2011年04月16日  
       
製  作  国   アメリカ / スウェーデン / イギリス / カ ナ ダ  
       
監      督   マイケル・ウィンターボトム  
       
上 映 時 間   109分  
       
公開時コピー   そして目覚める。もう一人の自分。  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ケイシー・アフレック [as ルー・フォード保安官助手]
ケイト・ハドソン [as エイミー・スタントン]
ジェシカ・アルバ [as ジョイス・レイクランド]
ネッド・ビーティ [as チェスター・コンウェイ建築会社社長]
イライアス・コティーズ [as ジョー・ロスマン建築業評議会会長]
トム・バウアー [as ボブ・マプルズ保安官]
サイモン・ベイカー [as ハワード・ヘンドリックス郡検事]
ビル・プルマン [as ビリー・ボーイ・ウォーカー弁護士]
ブレント・ブリスコー
リーアム・エイケン [as ジョニー・パパス]
ジェイ・R・ファーガソン [as エルマー・コンウェイ]
アリ・ナザリー [as マックス・パパス]
マシュー・マー [as ジェフ・プラマー保安官助手]
 
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あ ら す じ    1950年代の西テキサス。田舎町セントラルシティの保安官助手ルー・フォードは、物腰が柔らかくて愛想がいいと評判の青年だ。29歳の彼は亡き父親の屋敷を相続し、幼なじみの女性教師エイミー・スタントンとの気ままな逢瀬を重ねている。そんなある日、ルーは上司からジョイス・レイクランドという娼婦に対する市民の苦情処理を任され、彼女の自宅に赴く。暴れるジョイスをベッドに押さえつけたルーはベルトを手にし、彼女の尻をありったけの力で何度も叩く。やがてルーが詫びると、欲情したジョイスは自らキスを求め、二人は激しく愛し合った。
 この日以来、ジョイスとの情事が日課になったルーは、彼女から思わぬ話を持ちかけられる。彼女に夢中のエルマー・コンウェイを引っかけ、金をむしり取ろうというのだ。彼の父親チェスター・コンウェイは地元建設業界を牛耳る顔役で、6年前にルーの義兄マイクを事故に見せかけて殺害した疑いのある人物だった。ルーは準備を整え、作戦決行当日の夜、エルマーよりひと足早くジョイスの家を訪れる。だが突然彼女の顔面にパンチを浴びせ、容赦なく殴り続けたルーは、何も知らずにやってきたエルマーを射殺し、その拳銃をジョイスの手に握らせるのだった。
 事件を担当する検事ハワード・ヘンドリックスはルーに疑いの目を向け、ルーとチェスターの因縁を知る建設組合長のジョー・ロスマンも意味深な言動でルーを苛立たせる。そんな中、事件の容疑者としてルーもよく知る地元の若者ジョニー・パパスが逮捕された。留置場に出向いたルーは、自らが2人を殺害したことを打ち明けたうえで、首吊り自殺に見せかけてジョニーを殺害してしまう。
 ところが、ルーが以前葉巻で火傷を負わせた流れ者の男が自宅に現れ、犯罪の口封じとして5,000ドルを要求される。そして、男に金を渡す約束の日。その日は結婚を誓い合ったエイミーと駆け落ちをしようと約束した日でもあった。だがルーは、さらなる殺人を重ねることを決心していた・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    「去年見逃した作品をDVDで」の第2弾は、やはりジェシカ・アルバの出演するこの作品だ。そして、ハリウッドの嶋田久作ことベン・アフレックの弟で、『ジェシー・ジェームズの暗殺』で私の目にも留まったケイシー・アフレックの主演作。表面上は虫も殺さないような穏やかな好青年でありながら、内には恐るべき猟奇性を抱えているという、実にクレイジーな主人公ルーを怪演している。そして、やっぱりジェシカ・アルバは半端じゃなく可愛いし、ケイト・ハドソンなどはジェシカと比較すると完全に霞んでしまう。
 人を殺すという行為には、大きく分けて3つのタイプが存在すると思う。ひとつは、自らを守るための殺人。これには正当防衛や緊急避難といった合法的なものも含まれれば、いわゆる口封じのための殺人も含まれる。その人物を生かしておいては、自らの身に危険が及ぶために行われる殺人だ。2つ目は、障害を取り除くための殺人で、強盗殺人などはその典型的なパターンだと言える。ある特定の目的を達成するために、邪魔になる者を殺すというものだ。そして3つ目は、これが一番厄介なタイプなのだが、殺すことによって達成すべき目的が存在しない、つまりは殺人という行為自体が目的となる殺人。人を殺したいという衝動を抑えきれず、殺人を行うことで快感を得るといういわゆる快楽殺人もこのタイプに属する。
 この作品のルーの場合は、おそらく3つ目のタイプに属するであろう殺人者で、彼の殺人すべてにはこれといった動機が存在しない。かと言って、殺人を行うことによって欲求を満たすタイプかというと、それも違うようだ。彼の行動すべては、抑えることのできないある種の強迫観念によって行われていると思われるフシがある。それは、ケイト・ハドソン扮する恋人のエイミーを殺す際に顕著に表れていて、「彼女を殺さなければならない」と思うものの、そうしなければならない具体的な理由は存在しないのだ。
 彼の表向きの顔と裏の顔、その二面性をジキルとハイドにたとえる向きもあるかもしれないが、それは誤っている。ジキルとハイドの場合は完全な二重人格で、一方の人格が覚醒しているときはもう一方の意識は存在しない。しかし、ルーの場合は自らの意志で二面性を演じ分けているのだ。彼がそのような殺人衝動に駆られるようになったのは、どうやら少年期に起きた出来事に起因していると思われるが、残念ながらその詳細はこの作品中では描かれていない。ただ、それが性的なものと密接に絡んでいることは容易に想像できる。なぜなら、彼は女性を抱く際にスパンキングをするという性癖があり、それはジェシカ・アルバ扮する娼婦のジョイスに対しても、恋人のエイミーに対しても同様に行っているからだ。だから、殺害方法は相手が男性の場合は様々だが、女性の場合はいずれも殴打を繰り返して撲殺している。女性が男性に殴られるシーンを観るのは正直あまり気持ちのいいもんじゃないし、特にジョイスの場合はこれでもかと言わんばかりに殴打が繰り返されて、痛々しいったらありゃしない。
 これがもし兄のベン・アフレックが演じていたら、単なる異常者で終わっていたところだが(あくまで個人的見解)、整ったルックス(それでも時折モアイ顔が浮かぶが)のケイシーが演じると、冷静かつ淡々と殺人を犯していく怖さが際立つ。
 そう言えば、この作品で珍しい人物に遭遇した。一人は、『あなたが寝てる間に・・・』や『インデペンデンス・デイ』のビル・プルマンで、あまりに久しぶりなために最初は見逃していた。もう一人は、ドラマ『THE MENTALIST』で主役を務めたオーストラリア出身の俳優サイモン・ベイカーだ。私は、彼が長編映画に登場するのを観るのはこれが初めてだったが、キャラクターが『THE MENTALIST』そのままなものだから、顔を観なくても髪型だけですぐに彼だとわかってしまった(笑)。