評     価  

 
       
File No. 1535  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2012年01月14日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   園 子温  
       
上 映 時 間   129分  
       
公開時コピー   [生きろ」と、君が言った。  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   染谷 将太 [as 住田祐一]
二階堂 ふみ [as 茶沢景子]
渡辺 哲 [as 夜野正造]
吹越 満 [as 田村圭太]
神楽坂 恵 [as 田村圭子]
光石 研 [as 住田の父]
渡辺 真起子 [as 住田の母]
黒沢あすか [as 茶沢の母]
でんでん [as 金子]
村上 淳 [as 谷村]
諏訪 太郎 [as まーくん]
堀部 圭亮 [as 茶沢の父]
川屋 せっちん [as 藤本健吉]
窪塚 洋介 [as テル彦]
吉高 由里子 [as ミキ]
モト冬樹 [as てつ]
西島 隆弘 [as YOU]
鈴木 杏 [as ウェイトレス]
 
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あ ら す じ    15歳、中学3年の住田佑一のささやかな願いは“普通”の大人になることだった。大きな夢を持たず、ただ誰にも迷惑をかけずに生きたいと考える住田は、貸ボート屋を営む彼の家の敷地内にテントを張って暮らしている、元・社長の夜野正造田村圭太田村圭子の夫婦、それに新しく越してきたまーくんら、震災で家を失った大人たちと平凡な日常を送っていた。
 住田と同じクラスの茶沢景子の夢は、愛する人と守り守られ生きることだった。彼女は他のクラスメートとは違い、大人びた雰囲気を持つ住田に恋い焦がれ、彼に猛アタックをかける。疎ましがられながらも住田との距離を縮めていけることに日々喜びを感じる茶沢。しかし、そんな2人の日常は、ある日を境に思いもよらない方向に転がり始めていく。
 借金を作り、蒸発していた住田の父が金を無心するために戻ってきたのだ。口を開けば「お前は要らないんだよ」と言う父親は、住田を激しく殴りつける。さらに、母親もほどなく中年男てつと駆け落ちしてしまい、住田は中学3年生にして天涯孤独の身となる。そんな住田を必死で励ます茶沢。そして、彼女の気持ちが徐々に住田の心を解きほぐしつつあるとき、“事件”は起こった。
 “普通”の人生を全うすることを諦めた住田は、その日からの人生を“オマケ人生”と名付け、その目的を世の中の害悪となる“悪党”を見つけ出し、自らの手で殺すことと定める。夢と希望を諦め、深い暗闇を歩き出した少年と、ただ愛だけを信じ続ける少女。2人は、巨大な絶望を乗り越え、再び希望という名の光を見つけることができるのだろうか・・・・・?
 
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たぴおか的コメント    ご存じ、主演の染谷将太、二階堂ふみがヴェネチア国際映画祭でマルチェロ・マストロヤンニ賞に輝いた作品。そして、監督があの園子温となると、これは期待しないわけにはいかない。ちなみに、観る前からずっと気になっていた『ヒミズ』というタイトルだが、トガリネズミ目モグラ科に属するほ乳類の名前で、漢字で書くと「日不見」。モグラよりも小型の手のひらサイズで、夜に地上を徘徊することはあっても、日光が照る場所には出てこないことに由来している名前とのこと(Wikipediaより)。
 まず感じたのは、どうでもいいことかもしれないけど、キャスティングが今までの園監督作品に登場したオールキャストのよう。主演の2人はともかく、渡辺哲、吹越満、神楽坂恵、黒沢あすか、でんでん、諏訪太郎は『冷たい熱帯魚』。しかも、吹越満と神楽坂めぐタンはいずれも夫婦役で出演しているし、吹越、諏訪、でんでんは『ちゃんと伝える』でも共演。渡辺真起子と西島隆弘は『愛のむきだし』、さらに吉高由里子と光石研は『紀子の食卓』といった具合だ。橋田壽賀子作品の常連が“橋田ファミリー”と呼ばれているように、彼らも“園組”とでも呼ぶべき俳優・女優たちなのだろう。
 昨年3月11日の大震災後の光景にショックを受けた園監督が、ほぼ完成していた脚本の舞台設定を震災後に書き換えたとのことで、そのためかいつもの園作品に見られる毒気は影を潜めているように感じられる。園監督作品に特有の、その醜さからついつい目をそらしてしまいたくなるような人間の本質的な内面を描く手法も、この作品では至って控えめだ。強いて言えば、住田の父親と茶沢の母親がそれに当たるかも知れないが、それ以外の大人たちはおしなべて“いい人”なのだ。それは、窪塚洋介扮する窃盗犯のテル彦や、でんでん扮する金貸しのヤクザ・金子であっても本質は悪人ではなく、その立ち位置ともかくとしても言っていることは至極真っ当なのだ。
 そんな大人たちに囲まれて、共に恵まれない家庭環境に置かれた住田と茶沢だが、すでに希望を持つことすら諦めてしまったかのような染谷将太扮する住田に対し、二階堂ふみ扮する茶沢はそれでも懸命に希望を信じて生きようとしているのが対照的だ。そんな2人が、住田の家である貸しボート小屋で夜を共にするのだが、あくまで2人をプラトニックな関係に留めていて、従来の園監督作品のような展開を期待していると肩透かしをくってしまうからご注意。また、今までの園監督作品であれば、住田が自殺して幕を下ろすというエンディングが極めて自然に思えるが、この作品では最後に希望を持たせて終わっており、これは震災から立ち直ろうとする人々に対するエールが込められているためだと思われる。
 『指輪をはめたい』で強く印象に残った二階堂ふみが、『指輪〜』のエミとは違ったひたむきさの感じられる茶沢を熱演していて、観ている側もついつい熱くさせられてしまいそう。対する染谷将太は、確かにこの作品の演技は賞賛に値すると思うが、今までの作品『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』や『アントキノイノチ』とキャラクターの性格が同じタイプだから、もっと違ったキャラクターでキャスティングするとどういう演技を見せてくれるのかが知りたくなった。