評     価  

 
       
File No. 1536  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2012年01月14日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   矢口 史靖  
       
上 映 時 間   111分  
       
公開時コピー   変形しない。
戦わない。
働きもしない。
そんなロボットに
日本中が恋をした
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   五十嵐 信次郎 [as 鈴木重光]
吉高 由里子 [as 佐々木葉子]
濱田 岳 [as 小林弘樹]
川合 正悟 [as 太田浩二]
川島 潤哉 [as 長井信也]
田畑 智子 [as 伊丹弥生]
和久井 映見 [as 斉藤春江]
小野 武彦 [as 木村宗佑]
 
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あ ら す じ    家電メーカーの木村電器の社員、小林弘樹太田浩二長井信也の3人は、社長の木村宗佑から二足歩行可能なロボットの開発を命じられていた。近く開催されるロボット博で、木村電器をアピールするのが目的だった。ところが、ロボット博まであと1週間と迫ったある日、動き出したロボット“ニュー潮風”が研究室の窓から転落して、木っ端微塵に大破してしまう。
 今さらロボットを作り直す時間などなく、窮地に追い込まれた3人は、とんでもない策を思いつく。それは、ロボットの中に人間を入れて誤魔化すというものだった。そして、ロボットの内側にぴったりと収まる体型の人間を探すために、架空の着ぐるみショーのオーディションを開催して人を集めた。そして、選ばれた一人が実は金属アレルギーだったため、お鉢が回ってきたのは仕事を引退して久しい一人暮らしの73歳・鈴木重光だった。
 胸に“木村電器”のステッカーが貼られた“ニュー潮風”は、ロボット博の会場でその姿をテレビカメラの前に披露してお役ご免のはずだった。ところが、中に入った鈴木のジイさんは、小林たち3人の指示もないままに次々と自分勝手な行動を始める。挙げ句に、倒れてきた柱の下敷きになりそうになった女子大生の佐々木葉子を助けたことで脚光を浴びてしまう。そして、“ニュー潮風”の活躍に鼻高々の木村社長は、「ロボット博の当日だけ」と3人に命じたことなどなかったかのように、“ニュー潮風”を次々と公衆の面前に披露するのだった。
 ところが、“ニュー潮風”が救った葉子は実は大学のロボット研究会に所属するロボットオタクで、小林たち3人など及びもつかない知識の持ち主だった。そんなことも知らずに招かれた大学の講演では、学生たちから次々と繰り出される質問に答えられるはずもない3人はしどろもどろになってしまう。鈴木のジイさんの勝手な行動にはますます拍車がかかるうえに、就活中の葉子があろうことか木村電器への入社を希望し、3人の嘘はもはや破綻寸前にまで追い込まれるのだったが・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    『スウィングガールズ』『ハッピーフライト』の矢口史靖監督がメガホンを執ったコメディ作品。“ロボジー”という音だけ聞くと、もっぱら“ゲッターロボG”を思い浮かべてしまう世代の私だが、この作品のロボットはコピーにもある通り変形もしなければ戦いもしなくて、せいぜい“おてもやん”を踊るくらいだ。そんなロボット、“ニュー潮風”の中には人が入っていたとは、ずいぶん古典的な発想のような気がするし、そんなもんすぐにバレるんじゃないの?と突っ込みたくもなる。けれども、そういったリアリティを追求した作品ではないので、野暮な真似をするのはよしましょう。一応、濱田岳扮する小林弘樹を筆頭に“ニュー潮風”の製作担当者たち3人は、ロボットの機密を守るために専門家の前には一切“ニュー潮風”を披露しないという、ちょっと苦しいとも思える防衛戦を張ってはいるけどね。
 主演はこの作品のために200名のオーディションから選ばれた新人の五十嵐信次郎73歳・・・・・なんて建前を信じていたらトンデモない、実はミッキー・カーチスだったのだ。なるほど新人にしてはヤケに演技慣れしてるのも当然、新人どころか芸歴数十年という超ベテランなのだから。そして、演技だけでもなく多分本職であると思われる歌の方でも、STYXのあの有名な「Mr.Roboto」(♪Domo arigato Mr.Roboto Mata ah-oo hima de〜)を「五十嵐信次郎とシルバー人材センター」というクレジットで歌ってたりする。敢えてミッキー・カーチスという名前を使わなかったのは、話題性を兼ねてのことだろうか。加えて、私のように「主演:ミッキー・カーチス」と書かれていたらちょっと引いていたかもしれない人間も、「主演:五十嵐信次郎」だと何の抵抗もなく、逆にどんな人物なのか興味津々で観ることになる、そんな効果を狙った・・・・・ワケじゃないよね(笑)。
 小林たち3人は、そもそもはちゃんと二足歩行可能なロボットを作っていたわけなのだが、それが展示会の直前に窓から転落してバラバラ、バックアップも取っていなかったという窮地に追い込まれてしまう。この“ロボットが窓から転落”というシチュエーションが、巧く物語の転機に使われている。そして、展示会を切り抜けるために考え出された苦肉の策が、中に人が入って動かすというもの。だから、展示会を乗り切ればちゃんとしたロボットを作り直すつもりだったのだが、中に入っていた偏屈ジイさん鈴木重光の勝手な行動のおかげで“ニュー潮風”は脚光を浴びてしまい、引っ込みがつかなくなって嘘を突き通すハメに陥ってしまう。すべてはオレの手柄と言わんばかりの鈴木のジイさんに3人が振り回されるドタバタ劇の幕開けだ。
 そこへ絡んでくるのが、吉高由里子扮するロボットマニアの佐々木葉子で、彼女には『カイジ2』のような役柄よりも、こっちの方がずっと似合っている。最初は単なるロボット好きと思われていた彼女が、実はロボット工学の専門家並の知識を持っていて、3人の嘘を見破った彼女は3人を信奉する立場から一転して嘘を暴こうとするのだが、そこで2度目のロボット転落劇になる。なるほど、これなら嘘を闇に葬れるワケだと、妙に納得させられた。
 小林が葉子に渡した書類が何だったのか、そこに書かれた何が彼女を動かしたのかはわからないが、彼女は3人と同じ木村電器に就職して、3人と共に新しいロボット作りに取り組むことになるのだが、ここで3度目の転落劇となり、見事なオチへと繋がるのだ。真実が正しいと信じていた葉子も、正しいだけではやっていけない、表と裏が存在する社会を知って成長(?)したということなんだろうな。