評     価  

 
       
File No. 1537  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2012年01月14日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   板尾 創路  
       
上 映 時 間   102分  
       
公開時コピー  
俺はいってぇ誰なんだ
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   板尾 創路 [as 男]
浅野 忠信 [as 岡本太郎/森乃家うさぎ]
石原 さとみ [as 弥生]
前田 吟 [as 森乃家天楽]
國村 隼 [as 席亭]
六角 精児 [as 森乃家金太]
津田 寛治 [as 熊倉隊員]
根岸 季衣 [as 岡本孝子]
平田 満 [as 達造]
木村 祐一 [as 平尾小隊長]
宮迫 博之 [as 神楽文鳥]
矢部 太郎 [as 森乃家福次郎]
木下 ほうか [as 椿家詩丸]
柄本 佑 [as 森乃家笑太郎]
千代 将太 [as 森乃家天助]
佐野 泰臣 [as 森乃家小天]
ドクター中松
 
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あ ら す じ    第二次大戦終戦後間もない昭和22年。とある町に現れた、顔中を包帯を巻いた軍服姿の。彼は人々の笑いに誘われるように寄席へ足を踏み入れると、そのまま高座に上がってしまう。何か喋るのかと思われた男は、しかし高座の上でただ黙ったままだった。落語家たちに寄席からつまみ出された男と出くわした弥生は、男が手にしたお守りを見て、彼が自分の父・森乃家天楽の弟子で、同時に自分と結婚を約束した落語家の森乃家うさぎだと悟った。
 ところが、男はすべての記憶を失っていた上に、なぜか一言も喋らなかった。そんな男に落語家としての勘を取り戻させるために、天楽は森乃家小鮭という仮の名を与えて高座にあげた。しかし、それでも男はやはり一言も喋らないままだった。ところがそんな折、やはり軍服を着たもう一人の男が町にやって来る。その男こそが、本物の森乃家うさぎだったが、彼は首に受けた傷のために言葉を発することができなくなってしまっていた・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    初監督作品である『板尾創路の脱獄王』に続き、板尾創路が監督・脚本・主演の三役をこなす作品で、最初私は『月光仮面』をパロディ化した作品なのかと安易に考えていたのだが(そう思った理由のひとつには、昨年彼が主演する『電人ザボーガー』が公開されたことがある)、考えが甘かった。古典落語の「粗忽長屋」をモチーフにした作品なのだが、残念ながら落語に詳しくない疎い私が「粗忽長屋」を知るはずもなく、いきなり意味不明状態に陥ってしまった。もっとも、仮に「粗忽長屋」を知っていたとしても、意味不明には変わりなかっただろうとは思う。
 「難解な映画」には2つのタイプがあると思う。ひとつは、難解だが観る者に理解させようという意欲を喚起させる奥の深さがある作品。そういう作品は、観る回数を重ねる毎に新しい発見があるものだ。そしてもうひとつは、理解しようという意欲すら喪失させるような作品。これはもう、難解じゃなくて意味不明という言葉の方が適切かもしれない。そして、この作品は残念ながら後者の部類に属するようだ。
 前作『脱獄王』に続き、主演の板尾創路には台詞が全くない。記憶喪失はわかるが、だからといって一言も喋らないというのは必然性に大きく欠ける。浅野忠信扮する森乃家うさぎが、喉の怪我のために喋ることができないのとはワケが違う。そして、一言も発しない男に対して不審感を抱くどころか、いきなり高座に上げてしまうという森乃家天楽を筆頭にした森乃家一家。高座に上がってもやはり喋らない男は、その奇妙な振る舞いで笑いを取るが、そんなもの芸とは言えない。それでも男を信じ、彼が偽者のさぎであることがわかったにもかかわらず、本物のうさぎが喋れないからといって、男をウサギに仕立て上げてしまう天楽。何もかもが不合理というか不条理だから、ただでさえ意味不明な話を余計にややこしくしてしまっている。
 、遊女と男が2人で遊郭の地下にトンネルを掘る目的は何なのか、そして掘った先に何の脈絡もなく突然登場する、タイムトラベラーのドクター中松。驚きを通り越して茫然とさせられてしまいう、これこそ不条理の極みとでも言うべきクライマックスシーン。なぜ主人公の男があのような行為に及んだのか、そこには理由などもはや存在しないし、理由があったとしてももはや意味をなさない。事を終えて人力車で男は立ち去るのだが、人力車に乗っていたのは板尾創路扮する男ではなく、浅野忠信扮する岡本太郎だった。しかも、彼の首に巻かれていたはずの包帯はなく、首には傷ひとつなかった。一体何が現実で何が幻想なのか。私の拙い理解力の許容限度を遥かに超えた作品だった、ということにしておこう。