評     価  

 
       
File No. 1545  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2012年02月04日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   マーク・フォースター  
       
上 映 時 間   129分  
       
公開時コピー  
ただ、救いたい
拉致された子ども4万人の命。
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ジェラルド・バトラー [as サム・チルダース]
ミシェル・モナハン [as リン・チルダース]
マイケル・シャノン [as ドニー]
キャシー・ベイカー [as デイジー]
スレイマン・スイ・サヴァネ [as デン]
マデリン・キャロル [as ペイジ・チルダース]
グラント・R・クラウズ [as ビリー]
ピーター・キャレイ [as ビル・ウォレス]
バーバラ・コーヴン [as シャノン・ウォレス]
 
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あ ら す じ    1990年代、アメリカ・ペンシルバニア州。刑務所を出所したサム・チルダースは、信仰に目覚めた妻リンがストリッパーを辞めて稼ぎの悪い工員になったと聞き、苛立ちのあまり家を飛び出す。そして、悪友のドニーと合流したサムは、再び酒と麻薬に溺れる生活に逆戻りしてしまう。そんなある日、サムはヒッチハイクしてきた男と車内でもめて、男を半殺しのまま放置してしまう。後悔したサムはリンに助けを求め、教会で洗礼を受けるのだった。
 人生をやり直すと決意したサムは建設現場で働き始め、やがて会社を設立する。数年後、教会の礼拝でウガンダの牧師の話に感銘を受けたサムは、リンや娘ペイジ、母デイジーらに快く送り出され、現地のボランティアに参加する。北部ウガンダの建設現場に派遣されたサムは、スーダン人民解放軍のデンと出会い、彼と行動を共にしたサムはサムは、スーダンの難民キャンプで子供たちが武装ゲリラ・神の抵抗軍(LRA)に拉致されては少年兵に仕立てられるという現実を目の当たりにする。
 数週間後、帰国したサムはスーダンに孤児院を建てることを決意し、麻薬から更生したドニーに家族を任せて再びスーダンに赴く。LRAの妨害に遭い計画は困難を極めたが、リンの電話に励まされたサムは孤児院を完成させる。しかし孤児院の維持や子供たちの救出は簡単なことではなく、サムは苛立ちをつのらせていく。帰国しても攻撃的な態度を取り続けたサムは、ドニーに冷たく当たってしまう。行き場をなくしたドニーは再び麻薬に溺れ、やがて孤独に死んでいくのだった。
 それでもサムのアフリカの子供たちを救いたいという思いは、募りこそすれ衰えることはなかった。サムはリンに相談せず建設会社を売り払うと、スーダンへ旅立つ。サムの攻撃性はエスカレートし、孤児院でも凶暴な態度で振る舞うようになる。そんなサムの目を開かせてくれたのは、ある日サムの部屋に尋ねてきた元LRAの少年兵だった。彼は、LRAの命令で母親を殺したという悲惨な体験を語りながらも、自尊心を失うことなく真っ直ぐに生きようと努力していた。そんな少年に感銘を受けたサムは、改めて自分の使命を悟るのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    タイトルの『マシンガン・プリーチャー』を直訳すると“マシンガン牧師”。さすがにそんな邦題じゃ、タチの悪いコメディ映画と勘違いされそうで、原題の読みをそのまま邦題にしたようで・・・・・なんてことはどうでもいいことで、元麻薬売人からアフリカの子どもたちを守る人生へと180度転身した、“銃を持った牧師”と呼ばれる実在の人物サム・チルダースの半生を描いた作品。ジェラルド・バトラーにとっては新境地とも言える役柄だが、本人も認める熱演だったんじゃないかと、勝手に思っている。ただ、見た目は全然似てないけどね(笑)。
 ジェラルド・バトラーが演じるサムを観ていて感じることは、ズバリ不器用さだ。麻薬の売人という仕事から、自らの意志で足を洗ったのはすばらしい決断で、なかなかできるものじゃない。そして、さらに驚くべきなのは、アフリカの子供たちに救いの手を差し伸べたいと思い、思うだけだったら誰でもできるのだが、彼の場合は実際に行動した点だ。不器用だからこそ、周囲の状況がどうであろうと迷わず突き進むことができたのだろう。そして、不器用であるがために、子供たちの方ばかりへ目が向いてしまい、自分の家族を顧みる余裕すらもなかったのだ。
 麻薬の売人という仕事に比べれば、見返りなど求めることなくアフリカの子供たちを助けようという行為が尊いのは疑う余地のない善行だ。しかし、それはあくまで自分や自分の家族の生活という基盤があってこそ成り立つもので、家族の存亡を危うくしてまでも貫き通すべきかというと、正直疑問を感じる。家財を差し押さえられ、家は抵当に入れられてまでも子供たちを救おうとしたサムだが、一方で自分の娘・ペイジに手を差し伸べることを忘れてしまっている。その辺りが、一つの事に熱中してしまうと猪突猛進、周囲が見えなくなってしまうという彼の不器用さの表れだろう。
 サムを懸命に支える妻・リンを演じたミシェル・モナハンが、麻薬の売人である夫に苦しみ、そして自らの家族をも顧みずにアフリカの子供を救おうとする夫に違った意味で苦しむ、そんなけなげな女性を好演している。そして、サム同様に悪事から足を洗い、サムの代わりに家族を支える役目を演じた、マイケル・シャノン扮するドニーには共感を覚える。それだけに、報われない形で迎える彼の最期には心を動かされずにはいられなかった。