評     価  

 
       
File No. 1550  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2012年02月10日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   デヴィッド・フィンチャー  
       
上 映 時 間   158分  
       
公開時コピー   誰がハリエットを殺した?  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ダニエル・クレイグ [as ミカエル・ブルムクヴィスト]
ルーニー・マーラー [as リスベット・サランデル]
クリストファー・プラマー [as ヘンリック・ヴァンゲル]
スティーヴン・バーコフ [as ディルク・フルーデ]
ステラン・スカルスガルド [as マルティン・ヴァンゲル]
ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン [as ニルス・ビュルマン]
ベンクトゥ・カールソン [as ホルゲル・パルムグレン]
ロビン・ライト [as エリカ・ベルジェ]
ゴラン・ヴィシュニック [as ドラガン・アルマンスキー]
ジェラルディン・ジェームズ [as セシリア・ヴァンゲル]
ジョエリー・リチャードソン [as アニタ・ヴァンゲル]
インガ・ランドグレー [as イザベラ・ヴァンゲル]
ペル・ミルバーリ [as ハラルド・ヴァンゲル]
マッツ・アンデション [as グンナル・ニルソン]
イーヴァ・フリショフソン [as アンナ・ニーグレン]
ドナルド・サンプター [as グスタフ・モレル警部補]
エロディン・ユン [as ミリアム・ウー]
ヨセフィン・アスプルンド [as ペニラ・ブルムクヴィスト]
エンベス・デヴィッツ [as アニカ・ブルムクヴィスト]
モア・ガルペンダル [as ハリエット・ヴァンゲル]
ウルフ・フリベリ [as ハンス=エリック・ヴェンネルストレム]
 
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あ ら す じ    スウェーデンを揺るがせたハンス=エリック・ヴェンネルストレムによる財界汚職事件の告発記事を書きながらも、逆に名誉毀損で訴えられて敗訴したミカエル・プロムクヴィスト。意気消沈の日々を送っていた彼のもとに、ある日スウェーデン有数の財閥ヴァンゲルの元会長ヘンリック・ヴァンゲルから家族史編纂の依頼が舞い込む。しかしそれは表向きで、ヘンリックの真の目的は40年前に起きた親族の娘ハリエット失踪事件の真相究明だった。40年前に一族が住む孤島から何の痕跡も残さずに消えた少女ハリエット。ヴァンゲルは彼女が一族の誰かに殺害されたと信じていたのだった。
 依頼を受けたミカエルは、ミレニアム社の共同経営者であるエリカ・ベルジェにしばらく社から離れると告げ、ヴァンゲルの屋敷へと赴く。膨大な資料をヘンリックから渡されたミカエルは早速調査に取りかかり、成功の裏に隠された一族の血塗られた過去に気づいたものの、手掛かりが掴めずにいた。するとそこへ、ヘンリックの親友でもある弁護士のディルク・フルーデから、助け船が出される。天才的な資料収集能力の持ち主として、事前にミカエルの調査をも依頼したというリスベット・サランデルという名の女性を助手にするようにとの申し出だった。顔中にピアスをした小柄なリスベットの彼女の肩口から背中にかけては、異彩を放つドラゴンの刺青が彫られていた。そして意外なことに、彼女はこの事件に異様な関心を示すのだった。
 やがて彼女は、ハリエットの日記に記された聖書にまつわる数字が、ロシアの国境付近で未解決のままとなっている連続猟奇殺人事件と関連があることを突き止めるのだが・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    私のお気に入りであるスウェーデン映画『ミレニアム』3部作のハリウッド・リメイク版。てっきり舞台をアメリカに置き換えて製作されたのかと思ったが、原作に忠実で舞台もデンマーク、登場人物もそのままというのは意外だった。ただ、登場するスウェーデン人々が喋るのがすべて英語というのは、当然ながらもやはり違和感を感じる。そして、主演がダニエル・クレイグという時点で既に出来映えが心配だったのだが、観てみると案の定、ルーニー・マーラーのリスベットが前面に押し出されていて、完全にミカエルは脇役的な存在だった。結論を言えば、あらゆる点でスウェーデンのオリジナル版の方が勝っていて、2作目『火と戯れる女』、3作目『眠れる女と狂卓の騎士』を観るかは微妙な状況だ。
 『ミレニアム』が153分に対してこの作品は158分と、尺はほぼ同じなのだが、内容の濃さが全く違う。『ミレニアム』を観てストーリーを把握していたから良かったものの、もしも『ミレニアム』を観ずにこの作品だけを観たら、果たしてちゃんとストーリーを理解できたどうか大いに疑問だ。『ミレニアム』ではちゃんと描かれていた、ミカエルとリスベットが聖書になぞらえて行われた連続猟奇殺人の現場を巡るシーンが割愛されていて、おかげで2人の結びつきが深まったことに対する説得力も不足しているし、何の脈絡もなく真犯人が現れて・・・・・といった唐突さを感じてしまう。
 ダニエル・クレイグは相変わらず表情に乏しく、どうあがいても『ミレニアム』のミカエル・ニクヴィストには及ばない。ミカエルは決してジェームズ・ボンドのようなスーパータフガイではなく、優秀な記者ではあっても悩むこともあれば苦しむこともある普通の人間なのだ。けれども、ダニエル扮するミカエルからは、繊細な心の動きが感じ取れない。そもそも彼をキャスティングした時点で、そうなることは火を見るより明らかだから、デヴィッド・フィンチャーには『ミレニアム』とは違ったミカエル像を造ろうという意図があったのだろうが、果たしてそれが成功したと言えるのかどうか・・・・・私にとっては何とも物足りない中途半端なミカエルだった。
 ルーニー・マーラーは体当たりの演技で健闘していると思うし、もしもノオミ・ラパスの演技を観ていなければ充分に満足できるレベルだろうとは思う。だが、残念ながらノオミ・ラパスのリスベットを観てしまうと、どうしても女性的な柔らかさが目に付いてしまう。言い換えれば、ノオミ・ラパスのリスベットからは“女”としての感情が感じられないのだが、ルーニー・マーラーのリスベットは明らかに“女”を垣間見せる。そして、それが結果的に作品全体のとがった雰囲気を希釈してしまっているように思えて仕方ない。
 また、『ミレニアム』では随所にフラッシュバックで挿入されていたリスベットの父親に対するトラウマが、2作目の『火と戯れる女』への重要な布石だと思うのにもかかわらず、この作品では全く触れられていない。2作目にどう繋げるのか、その点だけには興味がある。