評     価  

 
       
File No. 1555  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2012年02月18日  
       
製  作  国   フランス / ド イ ツ / ポーランド  
       
監      督   ロマン・ポランスキー  
       
上 映 時 間   79分  
       
公開時コピー   顔で笑って、心に殺意。  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ジョディ・フォスター [as ペネロペ・ロングストリート]
ケイト・ウィンスレット [as ナンシー・カウアン]
クリストフ・ヴァルツ [as アラン・カウアン]
ジョン・C・ライリー [as マイケル・ロングストリート]
エルヴィス・ポランスキー [as ザッカリー・カウアン]
エリオット・バーガー [as イーサン・ロングストリート]
ジョセフ・レツウィン [as ウォルター(電話の声)]
ネイサン・リッピー [as デニス(電話の声)]
ターニャ・ロパート [as マイケルの母(電話の声)]
ジュリー・アダムス [as 秘書(電話の声)]
 
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あ ら す じ    ニューヨーク、ブルックリン。ザッカリー・カウアンイーサン・ロングストリートの顔を棒で殴ったという11歳の子供同士の喧嘩の後、彼らの両親が話し合いのためにロングストリートのマンションに集まった。リベラルな知識層である夫マイケルと妻ペネロペのロングストリート夫妻と、アランナンシーのカウアン夫妻との話し合いは、穏やかな雰囲気の中始められた。
 冷静に平和的に始まったはずの話し合いだったが、次第に強烈なテンションで不協和音を響かせる。やがてお互いの本性がむき出しになっていき、夫婦間の問題までもが露わになっていくのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    いや〜、久しぶりに涙が出るほど笑わせてもらった。いわゆる、子どもの喧嘩に親がしゃしゃり出てしまう話で、おそらく当事者であるザッカリーとイーサンの2人はとっくに仲直りして一緒に遊んでいるだろうに、2人の両親はやれ誠意だのやれ責任問題だのとモメにモメてしまうのだ。そして、その怒りの矛先が予想もしなかった所へ飛び火して、誰が火傷をするのかわからない展開が面白い。
 この作品を生み出した最大の要因は、やはりキャスティングの妙だろう。加害者側の両親は、母親ナンシーにケイト・ウィンスレット、父親のアランに曲者クリストフ・ヴァルツ、被害者側の両親には、母親ペネロペにジョディ・フォスター、父親マイケルにがジョン・C・ライリーという豪華な顔ぶれだ。そして、これほど感情的になってヒステリックなまでに叫ぶケイト・ウィンスレットとジョディ・フォスターを、私は今までに観た記憶がない。そして、一方の旦那はというと、妻の狂態などどこ吹く風とあくまでマイペースなのだ。
 アランの電話魔ぶりがまた滑稽で、自分の息子が怪我をさせた相手の親を訪ねてきているというシチュエーションもお構いなしに、携帯で電話しまくりなのだ。しかも、会話の内容を聞いていると、彼の職業は弁護士らしいのだが、いかにも舌先三寸で相手を言いくるめてしまう悪徳弁護士にしか思えない。あれじゃ、ペネロペがイライラするのも当然だし、ナンシーが腹を立てるのも当たり前だ。最初は本心を隠して表面上は穏やかに談笑している4人だが、実は一触即発状態であることが感じられる。そして、些細なことをきっかけに、いわゆる“堪忍袋の緒が切れる”ことになるのは火を見るよりも明らかで、いつ誰がそのきっかけになるのかが最大の楽しみなのだ。
 気分が悪くなったナンシーの吐きっぷりは見事(笑)。気持ち悪いならトイレに行けばいいものを、リビングで豪快に、しかもペネロペが大切にしている書籍の上にぶちまけちゃ、ペネロペも切れるわけだ。しかも、よせばいいのに酒を飲み出したナンシーが、抑えが利かなくなって本音をぶちまけ始める。その最初の犠牲者となったのが夫のアランで、彼の携帯をナンシーは花瓶に水没させてしまうのだ。アランの電話にイライラしていたペネロペがそれを痛快に感じたのは当然で、電話ができなくなりオロオロするアランを、ナンシーとペネロペが大笑いする。この2人の笑いには、観ていた私もつられて爆笑してしまった。
 そうなってしまうと、もはやロングストリート夫妻VS.カウアン夫妻という構図などとこかへ吹き飛んでしまい、男性と女性に分かれることもあれば、3対1に分かれることもありと、もうハチャメチャな状態。これだから大人の喧嘩は面白いのだ。