評     価  

 
       
File No. 1557  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2012年02月25日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   ジェイソン・ライトマン  
       
上 映 時 間   94分  
       
公開時コピー   あなたは、ワタシを、笑えない。  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   シャーリーズ・セロン [as メイビス・ゲイリー]
パットン・オズワルト [as マット・フリーハウフ]
パトリック・ウィルソン [as バディ・スレイド]
エリザベス・リーサー [as ベス・スレイド]
コレット・ウォルフ [as サンドラ・フリーハウフ]
ジル・アイケンベリー [as ヘッダ・ゲイリー]
リチャード・ベキンス [as デヴィッド・ゲイリー]
メアリー・ベス・ハート [as ジャン]
ケイト・ノウリン [as メアリー・エレン・トラントウスキー]
ジェニー・デア・ポーリン [as ニップル・フュージョンのベーシスト]
レベッカ・ハート [as ニップル・フュージョンのギタリスト]
ルイーザ・クラウズ [as ホテルのフロント]
 
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あ ら す じ    37歳になるメイビス・ゲイリーは自称作家だが、現在はゴーストライターとして“ヤングアダルト”(少女向け)小説を執筆中だった。バツイチで恋人ナシ、心の友はアルコールと愛犬という彼女はある日、一通のメールを受け取った。それは、元カレのバディ・スレイドとその妻ベス・スレイドからの、ベイビー誕生パーティへの招待状だった。メイビスはある考えから急遽旅支度をし、愛犬ドルチェを連れて故郷のマーキュリーへ向かい愛車のミニクーパーを走らせた。
 早速バディに連絡して会う約束を取り付けるたメイビスは、その夜出かけたバーで、あからさまに彼女を見つめる視線に気づく。その視線の主は、彼女の高校時代の同級生でゲイだと噂されていたマット・フリーハウフだった。そして、メイビスはマット相手に彼女がマーキュリーに戻ってきた真意を打ち明ける。それは、元カレのバディとヨリを戻して、ふたたび高校時代のような輝く自分を取り戻すという、恐るべき独りよがりの考えだった。
 その翌日、久しぶりにバディと再会したメイビスは、彼の話すべてを自分に都合よく解釈してしまい、バディが自分の元へ戻ってくると言う思いにますます自信を持ってしまう。そして、バディから赤ちゃんの命名式に招待されたメイビスは、ついに彼が自分と町を出る決意をしたと思い込み、自信満々で彼の家へと向かうのだが・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    久しぶりに観るシャーリーズ・セロンの主演作は、ルックスにに恵まれて経済的には自立し女性だが、精神的に大人になりきれないメイビス・ゲイリーを演じている。監督のジェイソン・ライトマンと脚本のディアブロ・コディのタッグと言えば『ジュノ』の時と同じ組み合わせで、『ジュノ』と同様にどこか世の中の常識からかけ離れた規格外の人間を描きながら、それでいて主人公を決して突き放すことなく暖かな視線で見守るような、そんな作品に仕上がっている。
 『モンスター』でオスカー主演女優賞を獲得した次には『イーオン・フラックス』と、常に自分が演じたことのない役柄に挑むシャーリーズ・セロンが今回挑んだのは、トンデモない自信過剰で思い込みの強いメイビスだ。そう言えば、香港でアンディ・ラウのファンである一女性が、彼を熱狂的に想うあまりにやがて現実と空想の区別が付かなくなり、アンディが自分を愛してくれると錯覚して逆ストーカーとなった実話をテレビで観た事があるが、その女性に相通じるものがあるようなキャラクターだ。
 とにかく、元カレの赤ちゃんの誕生パーティに招かれたことを、彼からの救いを求めるメッセージダなどと勘違いしたスタート時点からして間違っているのだから、その誤った考えを修正などできるはずがない。それどころか、誤った考えはますます現実と乖離してしまっていくばかりだ。けれども、赤ちゃんの命名式で大勢の人たちの目も構わずにバディに本心をぶちまけて、惨めな思いにうちひしがれるメイビスを自業自得だと切り捨てる木にはどうしてもなれない。程度の差こそあれ、私も彼女のような勘違いをした経験がある。ただ、私の場合は彼女ほどの自信がないために、相手に何も言わずに終わってしまたという違いだけだ。
 ヤング・アダルト・・・・・成人期なのにもかかわらず半人前で、大人として精神的に未成熟な者を意味するが、そんな一種のモラトリアムから抜け出せずにいる人間が、現代社会では少なくないように思う。私が生まれる前の昭和の時代には有機的でアナログだった人と人とのつながりが、今では遥かに無機的でデジタル化していて、そのために他人と直接ふれ合う機会が減っているのは間違いない。だから、相手の真意を察することもできず、ともするとメイビスのように自分の都合のいいように解釈してしまうのだ。そして、決して馬鹿じゃないからこそ、バディの気持ちを知ったメイビスのショックは計り知れない。マットやその妹サンドラの助けを借りながらも、体勢を立て直して故郷を去る彼女を、素直に応援してあげたくなった。