評     価  

 
       
File No. 1567  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2012年03月16日  
       
製  作  国   イギリス  
       
監      督   フィリダ・ロイド  
       
上 映 時 間   105分  
       
公開時コピー   世界を変えたのは、
妻であり、母であり、
ひとりの女性だった。


英国史上初の女性首相の栄光と挫折、そして最愛の夫との感動の物語。
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   メリル・ストリープ [as マーガレット・サッチャー]
ジム・ブロードベント [as デニス・サッチャー]
オリヴィア・コールマン [as キャロル・サッチャー]
ロジャー・アラム [as ゴードン・リース]
スーザン・ブラウン [as ジューン]
ニック・ダニング [as ジム・ブライアー]
ニコラス・ファレル [as エアリー・ニーブ]
イアン・グレン [as アルフレッド・ロバーツ]
リチャード・E・グラント [as マイケル・ヘーゼルタイン]
アンソニー・ヘッド [as ジェフリー・ハウ]
ハリー・ロイド [as 若き日のデニス]
アレクサンドラ・ローチ [as 若き日のマーガレット]
マイケル・マロニー [as 医師]
ピップ・トレンス [as イアン・ジルモア]
ジュリアン・ワダム [as フランシス・ピム]
アンガス・ライト [as ジョン・ノット]
 
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あ ら す じ    雑貨商の家に生まれたマーガレットは、市長も務めた父の影響で政治を志すが、初めての下院議員選挙に落選してしまう。失望する彼女に心優しい事業家デニス・サッチャーがプロポーズする。「食器を洗って一生を終えるつもりはない」野心を隠さないマーガレットを、デニスは寛容に受け入れるのだった。
 双子にも恵まれ、幸せな家族を築く一方で、マーガレットは政治家としての階段も昇りはじめる。失墜した英国を再建する、それは気の遠くなるような闘いだったが、彼女はその困難に立ち向かう。愛する夫や子供たちとの時間を犠牲にし、マーガレットは深い孤独を抱えたままたった一人で闘い続けた。
 現在のロンドン。どんなに苦しい時も支え続けてくれた夫・デニスは既に他界した。だが、マーガレットは未だに夫の死を認識していないのか、時折不可解な行動が目立つ。思い出の洪水の中で、デニスの遺品を手に取り彼女は「あなたは幸せだった?」とつぶやくのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    イギリス初の女性首相となった、“鉄の女”と称されたマーガレット・サッチャーをメリル・ストリープが演じて、85年の『ソフィーの選択』に続いて2度目のアカデミー主演女優賞に輝いた作品。ちなみに、79年の『クレイマー、クレイマー』でも助演女優賞を受賞しているから、通算3度目のオスカー女優賞受賞ということになるわけだ。
 遠慮なく言わせてもらうならば、主演女優賞に輝いた主演のメリル・ストリープの演技に頼り切りで、作品自体は実に凡庸な伝記に終わってしまっている気がする。邦題の副題に「鉄の女の涙」とあるように、本来であればその辺りをもっと突っ込んでマーガレットの本質に迫るような内容にすべきだが、Wikipediaで調べればわかるような史実をなぞっただけで特段の演出もない。首相に就任するまでの紆余曲折も描かれていなければ、おそらく彼女にとって首相に就任したことと並ぶ大きな出来事だっただろう、最愛の夫デニスの死にも全く触れられておらず、登場するデニスはすべてマーガレットの回想(あるいは幻想)のみ。これじゃぁ「感動しろ」と言う方が無理な話だ。伝記作品が得てして陥りやすい、抑揚がなく平板な出来の典型だと思うね、これは。
 首相を引退した後のマーガレットの回想という形で作品は展開するのだが、そこに亡くなったはずのデニスがマーガレットの想像(あるいは幻想)として登場するために、最初は一体引退前なのかそれとも後なのか混乱してしまった。なぜ敢えてそんな構成にしたのか、私には理解できない。その構成がこの作品に何らかの効果を与えているかといえば、私には観る者を混乱に陥れるという弊害こそあっても、プラスの効果があるとはとうてい思えない。『マンマ・ミーア!』は観ていないが、少なくともこの作品では監督のフィリダ・ロイドが力不足だったのは明らかだ。
 作品自体はダメダメだけど、主演女優賞とメイクアップ賞を受賞しただけあって、メリル・ストリープの演技とメイクは観て損はない。メリル・ストリープを知らない人がこの作品を観たら、首相時代のマーガレットと引退してからの彼女を演じているのは別の女優だと勘違いしてもおかしくないんじゃないかな。