評     価  

 
       
File No. 1576  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2012年03月31日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   ニコラス・ウィンディング・レフン  
       
上 映 時 間   100分  
       
公開時コピー  
疾走する純愛
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ライアン・ゴズリング [as ドライバー]
キャリー・マリガン [as アイリーン]
ブライアン・クランストン [as シャノン]
アルバート・ブルックス [as バーニー・ローズ]
オスカー・アイザック [as スタンダード]
クリスティナ・ヘンドリックス [as ブランチ]
ロン・パールマン [as ニーノ]
ケイデン・レオス [as ベニシオ]
 
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あ ら す じ    天才的なドライビングテクニックを持つ寡黙な“ドライバー”は、昼は映画のカースタントマン、夜は強盗の逃走を請け負う運転手という2つの顔を持っていた。家族も友人もいない孤独なドライバーはある晩、同じアパートに暮らすアイリーンと偶然エレベーターで乗り合わる。夫は刑務所に服役中で、一人息子ベニシオと懸命に生きるアイリーンに、ドライバーは一目で恋に落ちる。不器用ながらも次第に距離を縮めていくふたりだったが、ある日、アイリーンの夫スタンダードが服役を終え戻ってくる。本心から更生を誓う夫を見たアイリーンは、ドライバーに心を残しながらも家族を守る選択をするのだった。
 ところがスタンダードは、服役中の用心棒代として多額の借金を負ってしまっており、妻子の命を盾に強盗を強要されていた。絶体絶命のスタンダードに助けを求められたドライバーは、無償で彼のアシストを引き受ける。そして計画当日、質屋から首尾よく金を奪還したかに見えたスタンダードだったが、ドライバーの車に乗り込む寸前で撃ち殺されてしまう。ドライバーはスタンダードの共犯を務めたブランチを乗せ、車で逃走を図ったが、潜伏先にも刺客が送られる。何者かによって自分たちが嵌められたことを知ったドライバーは、手元に残された100万ドルを手に黒幕解明に動き出す。だが、ドライバーを消し去ろうとする魔の手は、すでに彼の周囲の人間にも伸びていた。
 ドライバーは、彼の恩人で雇い主でもあるシャノンの無残な死体を発見し、その報復として、そして愛するアイリーンとベニシオを守るため、捨て身の攻撃に身を投じるのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    この終末(3月31日)に、奇しくもライアン・ゴズリングの主演作が2本も公開される。先に観た『スーパー・チューズデー』も良かったが、この作品にはある意味意表を突かれた。オープニングのタイトル画面に「R15+」の映倫視聴制限が表示され、何が理由で「R15+」指定なのかが引っかかっていたのだが、観終えた時には納得。度を超しているんじゃないかと思われるような、過激なバイオレンスシーンが理由であることは明らかだ。そう、この作品はカー・アクションやラブ・ストーリーを期待しているとトンデモない目に遭うので、その辺りは間違わないように。あくまでこれは一流のバイオレンス作品なのだ。
 全編に漂う緊張感みなぎる空気、そして独特の色彩感覚が作り上げる異世界。そんな空気に感染し陶酔した観客は、容赦ないバイオレンスシーンによってさらに深みへと引きずり込まれてしまうのだ。そして、ライアン・ゴズリング扮するドライバーがあまりに寡黙なだけに、ちょっとした表情の変化や些細な仕草がセリフ以上に雄弁に物語る。加えて、一見虫も殺せないような穏やかなルックスの彼に、実は驚くべき凶暴性が潜んでいるという二面性。そんなドライバーを演じきったライアンの演技力は、やはりさすがだと改めて感じた。
 『SHAME−シェイム−』にも書いた通り、私は個人的にその演技力は認めているものの、キャリー・マリガンという女優がどうしても好きになれない。だが、この作品のアイリーンは彼女ならではだろう。どこか生活に疲れたような倦怠感漂う物憂げな表情が、彼女の境遇を如実に表していて、ドライバーが彼女に引かれるのも充分うなずける。彼の言葉通り、アイリーンやベニシオと過ごした時間は、彼の人生においても至高の時だったのだろう。そこからも、彼がこれまで歩んできた人生が決して平穏無事なものではなかったことを察することができる。
 だから、エレベーターの中で、アイリーンが観ているにもかかわらず彼の凶暴性を余すところなく発揮したのは、アイリーンへの一種の訣別宣言だったのだろう。所詮、2人は生きる世界が違っていて、アイリーンはともかくとしても、ドライバーにはそのことが痛いほど解っていたのだ。そして、それはアイリーンとの訣別であると同時に、おそらくはドライバーの人生への訣別を告げるものでもあった。愛するアイリーンとベニシオを守るために、単身で組織と相対するという死に直結するような選択肢を彼は迷わず選択したのだ。