評     価  

 
       
File No. 1594  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 212年05月12日  
       
製  作  国   アメリカ / フランス / カ ナ ダ  
       
監      督   ジュリアン・マニャ  
       
上 映 時 間   102分  
       
公開時コピー   まばたきするたび、
人の顔がリセットされる
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ミラ・ジョヴォヴィッチ [as アンナ・マーチャント]
ジュリアン・マクマホン [as サム・ケレスト]
デヴィッド・アトラッキ [as ラニヨン]
マイケル・シャンクス [as ブライス]
サラ・ウェイン・キャリーズ [as フランシーン]
セバスチャン・ロバーツ [as ラニヨン/浮浪者]
マリアンヌ・フェイスフル [as ランゲンカンプ医師]
ヴァレンティナ・ヴァーガス [as ニナ]
 
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あ ら す じ  ニューヨーク・イーストサイドを騒がす、女性ばかりを狙った5件の殺人事件。殺してレイプしたあとは泣く、というそのシリアルキラーに名付けられたあだ名は“涙のジャック”。手がかりは一切なく、迷宮入りしかけていた頃、6件目の犯行が起こる。目撃者は小学校の教師アンナ・マーチャントで、恋人のプライスと順風満帆な生活を送り結婚を目前に控えていた彼女だったが、事件を機に人生が一変してしまう。
 親友のフランシーンニナとバーで飲んだ帰路途中に、“涙のジャック”が被害者を惨殺する現場を目撃してしまう。震えながらも、声を押し殺し逃げようとするアンナだったが、その瞬間、携帯が無情にも鳴り響く。アンナは必死に逃げるが“涙のジャック”に捕まり、殺される寸前というところで、幸か不幸か川に転落してしまう。転落の際に頭を強打したアンナが目を覚ましたのは、1週間後だった。
 昏睡状態から目覚めたアンナの目の前には、3人の見知らぬ人間がいた。3人は、恋人のプライス、親友のフランシーンとニナだと名乗るが、アンナにはわからない。彼女は一命を取り留めるも、側頭葉を強打したことで相貌失認(人の顔が判別できない症状)になってしまったのだ。目撃したはずの犯人の顔がまったく思い出せないアンナは、事件の担当刑事サム・ケレストやプロファイラーのラニヨンに協力するため、ランゲンカンプ医師の治療を受けて、必死に記憶を呼び起こそうとするが、捜査は一向に進まない。家族や恋人の顔がわからないことから、ますます混乱状態に陥っていくアンナ。そんな彼女に“涙のジャック”の影が忍び寄ってくる。やがて、7人目、8人目の被害者が発見された・・・・・。
 
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たぴおか的コメント  2週連続で公開されたミラ嬢の主演作で、前週の『エターナル』に続いて『バイオハザード』のアリスのイメージが固まってしまうのを払拭しようとするかのような印象を受けるこの作品。相貌失認症という、人の顔が判別できなくなるという実在する記憶障害に陥った女性を主人公にしたサスペンスだ。観るたびに相手の顔が認識できない、つまりはいつも違う顔を観ているようなものというわけで、この作品は一人のキャラクターを数人が演じているため、エンド・クレジットでは例えば“ブライス#1”“ブライス#2”“ブライス#3”といった具合に、登場人物の人数の割には膨大な人数のキャスト名が表示されていた。そのお陰で、観終えた直後にはすでにブライスの本当の顔がどんなだったのか全く思い出せなくなっていて、まるで私まで相貌失認症に陥ったかのような気分だった(笑)。
 相貌失認症に陥ったミラ嬢扮するアンナには犯人の顔がわからない、けれども犯人はアンナの顔だけではなく彼女の名前や素性がすべて知られている、そこからくるアンナの不安を全編にわたって最大限に活用すべきなのだが、実際に緊迫するシーンと言えば地下鉄の中でオレンジ色のシャツに追われるくだりくらいで、それ以外のシーンでは今ひとつ緊迫感に欠けるのが残念だ。もっとも、その地下鉄のシーンには、ちょっとしたオチが隠されていて、その点だけは緊張と緩和が見事なバランスで配されている。
 この手の作品の常として、最後に明かされる真犯人は意外な人物なのだが、それが全く登場していない人物ではなかったことは救いだが、やはりあまりに唐突すぎて面白くない。随所に観る者が気づかないよう布石を仕掛けておいて、犯人がわかった途端にその意味もすべてわかる、そんな痛快な後味を味わえる作品だったなら、星の数は8個にも9個にもなっていただろうけど、そこまで期待するのは酷なのだろうか。