評     価  

 
       
File No. 1597  
       
製作年 / 公開日   2010年 / 2012年05月12日  
       
製  作  国   イ ン ド  
       
監      督   シャンカール  
       
上 映 時 間   137分  
       
公開時コピー   ワケわからんが面白い  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ラジニカーント [as バシーガラン博士/チッティ]
アイシュワリヤー・ラーイ・バッチャン [as サナ]
ダニー・デンゾンパ [as ボラ博士]
 
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あ ら す じ    天才工学者バシーガラン博士は10年に及ぶ研究の日々を経て、二足歩行型ロボット、チッティを生み出した。あらゆる点で人間以上の能力を持ち、命令に忠実に従うチッティは、人類の未来を切り開く偉大な発明となるはずだった。ところが、チッティを軍用ロボットとして活用しようとしたバシー博士に、彼の師でもあるボラ博士が待ったをかけた。人間の感情を理解できないチッティが、人を傷つける可能性があるというのが表向きの理由だったが、実は自分よりも優れたロボットを開発したバシー博士を妬んでいたというのが本当の理由だった。
 ボラ博士の言葉を真に受けたバシー博士は、チッティを人間の感情をも理解するようにプログラムし直す。ところが、あろうことかチッティは、バシー博士の恋人サナに恋をしてしまう。チッティとバシー博士がサナをめぐって恋の火花を散らす中、板挟みとなったサナは、チッティの思いをきっぱりとはねのける。人間の感情を理解してしまったがために、深く傷つくチッティ。インド軍へのプレゼンの場で失態を演じたチッティはバシー博士の怒りを買い、博士の手で廃棄処分にされてしまう。
 ところが、チッティの残骸を回収したボラ博士は、チッティに殺人マシンのチップを装填し、チッティを冷酷なターミネーターとして甦らせてしまう。チッティは、バシー博士とサナの結婚式場へ乗り込むとサナを拉致し、迫ってくる警官隊を難なく一蹴して逃亡する。そして、ボラ博士の研究所を占拠したチッティは自らのレプリカを量産し、最強のロボット軍を作り上げる。チッティとそのレプリカのロボット兵団は、今や世界の脅威になろうとしていた。
 バシー博士は愛するサナを救うためにチッティの機能を停止させようと命がけの行動に出る。しかしチッティ軍は、バシー博士の想像を超えるほどに進化し、街を恐怖に陥れる。何百体ものロボットが合体しフォーメーションを変えながら暴れ回るチッティ軍団の猛攻の前には、軍隊ですら歯が立たなかった。世界がロボットに支配されるのは、今や時間の問題となった中、ひたすら壮絶化するチッティの暴走をバシー博士は食い止めることができるのか・・・・・?
 
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たぴおか的コメント    インド映画を観るのは、多分これが初めての経験なのだが、一言で表現するならば「とてつもないスケールで描かれた近年まれに観る怪作、いや、快作」とでも言うべきだろうか。“ワケわからんが面白い”というコピーは実に的確にこの作品の本質を言い当てていて、小難しい理屈などすべて力技でねじ伏せてしまうかのような圧倒的なパワーは、まさに今中国に次いで世界を席巻しようというインドの国力の現れのように思える。
 上に書いたあらすじをさらに要約すると、感情をプログラムされたロボットが人間の女性に恋をし、恋に破れたロボットが悪徳工学博士の手で殺人ロボットとして甦る、といったところで、ストーリーは単純明快でわかりやすい。そして、チッティの存在自体が『ターミネーター』のパロディであるのを筆頭に、随所に『スター・ウォーズ』や『マトリックス』、果ては『マスク』までもがパロディ化されて取り込まれている。そんな、観る人が観れば「馬鹿馬鹿しい」と切り捨てかねないこの作品に、最後はうるっとさせられてしまうだなんて、思ってもみなかった。全く予想外の方向から攻めてくるものだから、ついつい・・・・・(笑)。
 韓国が以前『D-WARS』や『グエムル 漢江の怪物』といった、ハリウッドの映像技術の助けを借りた映画を製作したが、この『ロボット』のCGはハリウッドに媚びないインドのオリジナルで、粗さも目立つ反面今までに観たことのないような映像を見せつけてくれる。チッティのロボット軍団が球体やタワー、絨毯状、棒状、巨大な腕、コブラなどに自在に変化し、果ては巨人になって追いかけてきたりと、様々なフォーメーションでこれでもかとばかりにスクリーンから攻めてくるのは、猿真似では決してできないインド独自の奇抜な発想で、「なるほど、そうくるのかぁ」と感心することしきりだった。
 バシー博士とチッティの2役、いや、バシー博士と前半のチッティ、それに後半の殺人チッティの3役と言うべきだろうか、ラジニカーントの演技は見事で、さすがはスーパースター・ラジニと呼ばれるだけのことはある。そして、私の性格からして触れないわけにはいかないのが、バシー博士の恋人・サナを演じたアイシュワリヤー・ラーイ・バッチャン(長い!)の美しさだ(反則的なまでに美し過ぎる!)。1994年のミス・ワールド国際大会で世界一の美女に選ばれたのも当然と納得できる容姿は、特にアンドロイドのコスチュームで唄い踊るシーンで最も引き立っている。何気なく彼女のプロフィールを見ていたら、生まれが1973年・・・・・ということは、この作品の製作時には36歳!?私はてっきり20代後半だと思い込んでいて、だから、バシー博士の恋人という設定はまるで親子のような恋人だなんて思っていたのに。
 実はこの作品、東京国際映画祭で上映された時は、オリジナルの177分!という長尺(インド映画ではこの長さはフツーみたい)だったのだが、それを日本公開用に編集して137分にまで短縮したとのことらしい。それでも観ていて場面の展開を不自然に感じることもなく、むしろ中身が凝縮されてあらゆるエンターテイメントの要素がぎっしりと詰め込まれた感がある。全世界で興収100億円を突破したインドの超大作、必見です。