評     価  

 
       
File No. 1605  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2012年05月26日  
       
製  作  国   スペイン  
       
監      督   ペドロ・アルモドバル  
       
上 映 時 間   120分  
       
公開時コピー   あなたは、
これを愛と呼べるか
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   アントニオ・バンデラス [as ロベル・レガル]
エレナ・アナヤ [as ベラ・クルス]
マリサ・パレデス [as マリリア]
ジャン・コルネット [as ビセンテ]
ロベルト・アラモ [as セカ]
ブランカ・スアレス [as ノルマ]
スシ・サンチェス [as ビセンテの母]
 
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あ ら す じ    トレドの大邸宅に暮らすロベル・レガルは、最先端のバイオ・テクノロジーを駆使した人工皮膚開発の権威としても知られている世界的な形成外科医だった。そんな彼の屋敷の一室には、初老のメイドマリリアの監視の下、全裸と見まがうような特殊なボディ・ストッキングをまとった美女ベラ・クルスが幽閉されていた。そして彼女は、炉ベルの妻ガルに瓜二つだった。
 ガルは12年前の交通事故で全身に火傷を負うという瀕死の重傷を負ったものの、奇跡的に命をとりとめて回復に向かっていた。ところがある日、ガラスに映った火傷の傷跡も生々しい自らの姿にショックを受け、投身自殺を図ったのだった。そしてそれ以来、失意のロベルは愛する妻を救えたであろう“完璧な肌”を創り出すことに執念を燃やしていたのだった。
 そんなロベル狂気の行動へと走らせたのは、6年前の忌まわしい事件だった。青年ビセンテにレイプされかかった娘のノルマが、ガルと同じように身を投げて自殺してしまったのだ。事件をきっかけに、あらゆる良心の呵責を失い倫理観をかなぐり捨てたロベルは、ベラを実験台にして開発中の人工皮膚を移植し、今は亡き妻そっくりの美女を作り上げたのだった。
 ロベルの狂気の実験台となった美女ベラとは、一体何者なのか?彼女はどうやってロベルと出会い、そしてなぜこのような実験に自らの体を提供することになったのか・・・・・?
 
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たぴおか的コメント    いや〜、久しぶりにグゥの音も出ないほど打ちのめされた。「結末を誰にも言うな」なんてコピーの映画は少なくないが、この作品はその典型的な例で、妻そっくりの女性に人工皮膚を移植するという大筋は知っていた私は、ベラが何者でなぜロベルの実験台になったのかがわかった時に受けた衝撃は半端じゃなかった。好みの問題もあるだろうし、決して万人に受け入れられるような内容ではないから、傑作と言い切っていいかどうかは異論もあるだろうが、少なくとも非常に衝撃的な問題作であることは間違いない。
 ベラという女性が一体何者なのか、そして、なぜ人工皮膚移植の実験台に甘んじていたのか、さらにはなぜ彼女はロベルの屋敷に軟禁状態になっているのか、その3点が冒頭から大きな謎としてのしかかってくる。それらの謎はあるシーンを観ればすべて一気に氷解するのだが、ただすんなりと回答を見せるのではなく、一見すると前のシーンと何ら脈絡がないように思えるシーンが、実は場面が進むに従って大きな意味を持ってくる、そんな構成の妙が秀逸だ。だから観る者は、何の心の準備もできないままに、思いもよらない答えを突きつけられて言葉を失ってしまうのだ。
 ペドロ・アルモドバル監督作『セクシリア』でデビューし、これが久々の復帰作となるたアントニオ・バンデラスが、「勝手知ったる」とも言うべき舞台で鬼気迫る外科医・ロベルを熱演している。彼の実験台となるベラを演じたエレナ・アナヤの、スリムな肢体も美しいのだが・・・・・彼女が実は○○○だと知ってしまうと・・・・・彼女を抱こうとしたロベルの行為を思い起こすたびにゾッとする(笑)。