評     価  

 
       
File No. 1607  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2012年05月26日  
       
製  作  国   スペイン / アメリカ  
       
監      督   ウディ・アレン  
       
上 映 時 間   94分  
       
公開時コピー   真夜中のパリに
魔法がかかる
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   オーウェン・ウィルソン [as ギル]
レイチェル・マクアダムス [as イネズ]
カート・フラー [as ジョン]
ミミ・ケネディ [as ヘレン]
マイケル・シーン [as ポール]
ニーナ・アリアンダ [as キャロル]
カーラ・ブルーニ [as 美術館ガイド]
キャシー・ベイツ [as ガートルード・スタイン]
エイドリアン・ブロディ [as サルバドール・ダリ]
マリオン・コティヤール [as アドリアナ]
トム・ヒドルストン [as F・スコット・フィッツジェラルド]
イヴ・ヘック [as コール・ポーター]
アリソン・ピル [as ゼルダ・フィッツジェラルド]
レア・セドゥー [as ガブリエル]
コリー・ストール [as アーネスト・ヘミングウェイ]
マーシャル・ディ・フォンゾ・ボー [as パブロ・ピカソ]
オリヴィエ・ラブルダン [as ポール・ゴーギャン]
フランシス・ロシュタイン [as エドガー・ドガ]
 
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あ ら す じ    ハリウッドの売れっ子脚本家ギルは、婚約者イネズとともに愛するパリを訪れていた。ワンパターンの娯楽映画のシナリオ執筆に虚しさを覚えているギルは、作家への転身を夢見てノスタルジー・ショップで働く男を主人公にした処女小説に挑戦中だった。パリへの移住を夢見ているギルに対し、お嬢様育ちで現実主義者のイネズは、安定したリッチな生活を譲らない。そんな2人の前に、恋人キャロルを伴ったイネズの男友達ポールが現れる。イネズと水入らずでパリを満喫しようとしていたギルにとって、何かにつけて博学をひけらかすようなポールが邪魔で仕方なかった。
 そうして迎えた第1夜。ワインの試飲会に参加した後、誘われたダンスを断って1人で真夜中のパリを歩いていたギルは、道に迷ってモンターニュ・サント・ジュヌヴィエーヴ通りに迷い込む。物思いに耽っていると時計台が午前0時の鐘を鳴らした時、旧式の黄色いプジョーがやってくる。誘われるがままにその車に乗り込んだギルは、古めかしい社交クラブで開かれているパーティに参加する。そこで出会ったのはF・スコット・フィッツジェラルドゼルダ・フィッツジェラルドの夫妻に、ピアノを弾くコール・ポーター、パーティの主催者ジャン・コクトーといった信じ難い面々だった。そして、別のバーで彼が敬愛するアーネスト・ヘミングウェイを紹介されたギルは、完全にパニック状態に陥ってしまう。
 翌晩、前夜と同じ場所でプジョーに乗り込んだギルは、自分の小説の批評をしてもらうため、ヘミングウェイに連れられてガートルード・スタインのサロンを訪問する。そして、そこでガートルードと絵画論を戦わせていたパブロ・ピカソの愛人アドリアナと出会い、互いに惹かれ合う。毎晩1920年代のパリに繰り出すギルは、どんどんアドリアナに惹かれていくが、思いがけないことで婚約者イネズの存在を知られてしまう。そして5度目のトリップで、通りかかった馬車に乗ったギルとアドリアナは、さらに過去へとタイムスリップしてしまうのだった。
 タイムスリップを終えたとき、ギルは人生を左右する大きな決断を下すことになる。果たして最後のタイムスリップの先で、ギルとアドリアナに一体何が起こったのか?そして、ギルが下した大きな決断とは・・・・・?
 
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たぴおか的コメント    『マッチポイント』『タロットカード殺人事件』『それでも恋するバルセロナ』で立て続けにスカーレット・ヨハンソンを起用した時は、「ついにウディ爺さんも色ボケで身を落としたか」などとついつい思ってしまったが(ゴメンナサイ)、まさに面目躍如と言わんばかりの作品。、本国アメリカでウディ・アレン監督作として、最大のヒットを記録したのも充分頷ける。
 パリを舞台にしたということもあり、とにかく全編を通して「お洒落」さに目を奪われる。冒頭から昼間のパリ、夜のパリ、晴天のパリに雨のパリと、様々なパリの顔を見せられ、それだけでも充分にパリという街の魅力が伝わってくる。それは、私が今まで観たパリを舞台にしたフランス映画からは伝わってこなかった感覚で、それはウディ・アレンが私と同じ外国人であるからこそ為し得た業ではないだろうか。
 毎夜12時の鐘と共に、オーウェン・ウィルソン扮する主人公ギルを迎えに来る古いプジョー、その時点ですでにウディ・アレンの魔法にかけられてしまっていた。レトロな雰囲気のパーティやバーでギルが遭遇するのは、フィッツジェラルド夫妻やコール・ポーター、ジャン・コクトー、アーネスト・ヘミングウェイ(私はこの作家の小説は『老人と海』以外は通俗的な大衆小説だと思っているが)、パブロ・ピカソといった顔ぶれ。冷静に考えれば、そんな面々が同日同夜のパリに集合するワケもないのだが、それがすんなりと受け入れられてしまう。まさに時代縮図を見ているような、錚々たる芸術家のオンパレードだ。
 ギルが憧れていた、1920年台のパリ。そこで出会ったアドリアナは17世紀末のパリに憧れていて、その時代に訪れるとエドガー・ドガらはルネッサンス期が黄金時代だったと嘆いている。人間はとかく自分の境遇の悪い面と過去のいい面を比較しがちなもので、そのことに気づいたギルは、過去に憧れる懐古主義に浸るのではなく、自分の置かれた現状を自分の力で変えなければならないと気づく。そんな前向きなメッセージには好感が持てるし、共感してしまう。過去に憧れているだけでは、結局どの時代にタイムスリップしたとしても、結局不満を感じてしまうのだろう。
 そのことを知ったギルが現実の世界に戻って起こした行動は、「よくやった!」と褒めてあげたい反面、イネズ役が私のお気に入りのレイチェル・マクアダムスだけに、手放しで喜べない少々複雑な心境だった。それはともかく、そんなギルの思い切りに女神が手を差し伸べたかのように、彼の前に現れる美女。どこかで観た顔だと思ったら、『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』で殺し屋を演じていたレア・セドゥーだった。