評     価  

 
       
File No. 1615  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2012年06月09日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   サヴィエ・ジャン  
       
上 映 時 間   112分  
       
公開時コピー   NY崩壊
取り残された9人
迫り来る、終末の【余波】
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ローレン・ジャーマン [as エヴァ]
マイケル・ビーン [as ミッキー]
マイロ・ヴィンティミリア [as ジョシュ]
コートニー・B・ヴァンス [as デルヴィン]
マイケル・エクランド [as ボビー]
イバン・ゴンサレス [as サム]
アビー・シックソン [as ウェンディ]
アシュトン・ホームズ [as エイドリアン]
ロザンナ・アークエット [as マリリン]
 
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あ ら す じ    未曽有の爆撃により、ニューヨークが壊滅状態に陥る。そんな中、とあるマンションに住む男女9人が地下シェルターに逃げ込む。薬物中毒だった過去を持つエヴァ、利己的なシェルターの所有者ミッキー、エヴァの婚約者で弁護士のサムジョシュエイドリアンの義兄弟、ジョシュの親友でミッキーと対立するボビー、黒人男性のデルヴィン、心配性な母親マリリンとその娘ウェンディだった。
 地上ではさらなる爆撃と、それによって建造物が倒壊していく音が絶えず、シェルターにまで響いてくる。何が起きたのかわからないままにも9人は、外に出るなとのミッキーの言葉に従って、シェルターにしばらく留まることとなった。そんな中、防護服に身を包み武装した男たちがシェルターの扉をこじ開けて内部に侵入してくる。1名を倒したものの、残る男たちは11歳のウェンディを連れ去ってしまい、その時の銃撃戦でエイドリアンが重傷を負ってしまう。
 残りわずかな食糧、そして“他人”の脅威に怯えながらも保たれていた彼らの均衡がある日破られる。ミッキーが隠し部屋に大量の食料を隠していたことをデルヴィンが知り、2人がもみ合いになった拍子に、ミッキーはデルヴィンを銃で撃ち殺してしまったのだ。リーダー的存在だったミッキーは椅子に縛り付けられ、ジョシュとボビーの拷問を受けて隠し部屋のダイヤル番号を教えてしまう。こうして、ジョシュとボビーはミッキーから奪った食料をを盾に、他のメンバーを支配し始める。2人の暴君によって、地下シェルターは暴力と憎悪が渦巻く阿鼻叫喚の地獄へと変貌しようとしていた・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    突如ニューヨークが何者かによって爆撃され、何が起きたのかわからないままに9人の男女が地下シェルターに逃れるのだが、観ていた私にもそれが同じアメリカ人によるものなのか、それとも異国人によるテロなのか、あるいは地球外からの侵略なのか、さっぱりわからない(笑)。重要なのは攻撃自体ではなく、それによて閉ざされた空間での共同生活を余儀なくされた9人が陥る、終わりの見えない緊張感による恐怖と極限状態がテーマなのだから。
 先日の『グレイヴ・エンカウンターズ』よりも、私にとってはこの作品の方が数段怖い作品だった。得体の知れない超常現象などよりも、最も恐ろしいのはたがが外れて正気を失った人間なのだということを、イヤというほど見せつけてくれる、そんな作品だ。
 有名な俳優がいない中、唯一私が知っていたのは、オープニングのキャスト名の中に見つけたマイケル・ビーンだ。1984年のジェームズ・キャメロン監督『ターミネーター』に、サラを救うために未来からタイムスリップしてきたカイル・リースを演じてからすでに30年近くが経過しているのだから、当然あの時のように若くはないが、一目でミッキーを演じていたのが彼とわかった。
 ミッキーの言い分は利己的かもしれないが、しかし最も冷静に状況を判断できる人間だったのは確かだ。もし彼が本当に利己的ならば、隠し部屋に閉じこもって食料を独り占めすることだって可能だったはず。けれども、彼はそうしなかった。だから、彼がイニシアティブを握っているうちは、緊張感こそぬぐえないにしても、シェルター内には平穏が保たれていたのだ。けれども、それが破られた時、もはやシェルター内には歯止めが利かなくなり、そこが無法地帯と化すのは日を見るよりも明らかだ。
 そんな状況下で、婚約者のサムが全く役に立たないのがエヴァにとってはさぞかし歯がゆかったことだろうし、観てる私ももどかしくて仕方なかった。弁護士だなどといっても、秩序が保たれた世界で法という後ろ盾があってこそ存在価値があるのであって、それが彼のように強い意志も持たずに頭に頼ってきた人間の限界なのだ。そんな彼女の唯一の支えがエイドリアンで、彼があろうことかサムに撃たれてしまったのは、作品中で最も絶望的なシーンだった。そして、支えを失ったエヴァの中ですべての忍耐が限界を超えたのは当然の結果だ。そこからは、一気にラストシーンへと突き進むエヴァだが、地上に出た彼女が目にした光景の絶望的なことといったら・・・・・シェルター内にそのまま留まっていたのと、果たしてどちらがマシだったのだろうか?