評     価  

 
       
File No. 1620  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2012年06月16日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   ロジャー・ドナルドソン  
       
上 映 時 間   106分  
       
公開時コピー   “代理殺人”の契約から始まる、
危険な罠
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ニコラス・ケイジ [as ウィル・ジェラード]
ジャニュアリー・ジョーンズ [as ローラ・ジェラード]
ガイ・ピアース [as サイモン]
ハロルド・ペリーノ [as ジミー]
ジェニファー・カーペンター [as トゥルーディ]
サンダー・バークレイ [as ダーガン警部補]
ジョー・クレスト [as ルデスキー刑事]
マーカス・ライル・ブラウン [as グリーン刑事]
デヴィッド・ジェンセン [as スタンド店員]
カレン・モス [as ジョーンズ]
ジェイソン・デイヴィス [as アラン・マーシュ]
 
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あ ら す じ    高校教師のウィル・ジェラードは、音楽家の妻ローラと共に平穏な生活を送っていたが、ある日ローラが帰宅途中に暴行されるという事件が起こる。病院に駆けつけたウィルは、顔中に痛々しい傷を負って鎮静剤で眠るローラの姿にショックを受けると同時に、犯人に対する激しい怒りを覚える。そんなウィルは、待合室でサイモンと名乗る見知らぬ男から声をかけられるのだった。
 サイモンは穏やかな口調で驚くべき提案をウィルに持ちかけてくる。それは、ウィルの代わりに犯人を殺し復讐するという代理殺人だった。見返りに金銭を要求することもなく、ただ簡単な仕事を手伝ってもらえばいい、それがサイモンの持ち出した条件だった。そして、彼の属する組織は、警察に先んじてすでに犯人を突き止めているという。一度はサイモンの提案を断ったウィルだったが、彼が額に触れた手にさえ怯えて払いのけたローラの姿を思い出して、サイモンの提案を飲んでしまう。
 それから半年後、その代償として今度はウィル自身が誰かの代わりとして殺人をするよう迫られる。相手は幼児ポルノを作り販売しているという男だった。殺人を拒否するウィルはだったが、妻や自分の妹にまで危険が及ぶことを悟り、やむなく標的となる男を殺すようサイモンから指示された場所へと向かう。ところが、男はウィルの姿を見るやいなや、いきなり襲いかかってくる。そして、ウィルともみ合っていた拍子に男は歩道橋から転落して死んでしまう。
 ところが、亡くなった男の名アラン・マーシュはサイモンから聞いていた名と違い、しかも彼は児童ポルノとは無関係のジャーナリストだった。さらに、マーシュへの殺人容疑で、ウィルは警察から指名手配されてしまう。ウィルは警察に追われながら、執拗に伸びてくるサイモンの魔の手と戦うことになる。果たしてサイモンの正体は?そして、サイモンの背後にある“Hungry rabbit jumps”を合い言葉にする組織とは・・・・・?
 
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たぴおか的コメント    原題“SEEKING JUSTICE”とは、世の中に存在する悪を超法規的手段をもって葬り去ろうとする影の組織名で、その組織が使う合い言葉“Hungry rabbit jumps(空腹の兎は跳ぶ)”が邦題『ハングリー・ラビット』になっている。主演のニコラス・ケイジは大作の谷間にB級作品に主演するパターンが多く、この作品もそんな(言っちゃ悪いけど)谷間の作品のひとつだが、これがなかなか侮れない面白さだった。
 善人の代表のような主演のニコラス・ケイジに対して、ガイ・ピアースに謎の組織のエージェントのサイモンを演じさせたのが当たっている。そして、ニコラス・ケイジ扮するウィルの妻ローラ役にジャニュアリー・ジョーンズを配したのもいい。この作品では暴行を受けて顔が傷だらけになってしまうのが痛々しいけど。
 妻が暴行を受けて心身共に傷を負わされ、犯人は逮捕されても数ヶ月の懲役で出所してしまう、そんな不条理からウィルはついついサイモンの提案に応じてしまう。観ている側からすれば、あんな見るからにアブナイ野郎の口車に乗ったらあとでトンデモない目に遭うことは一目瞭然だが、妻の哀れな姿に平常心を失ったウィルにはやむを得ない選択だったのだろう。そして、そこから物語は俄然加速していくのだ。
 事前に予想していたのは、ウィルが最後にサイモンが属する組織“SEEKING JUSTICE”を崩壊させるという結末だったが、そんな私の予想を裏切って、“SEEKING JUSTICE”はとてつもなく大きな組織で、サイモンでさえもその手足の一部に過ぎず、ウィルがひとり徒手空拳で太刀打ちなどできる相手ではなかったことを、ラストで思い知らされる。ウィルを逮捕した警察のダーガン警部補が、ウィルの取り調べで「空腹の兎は?(Hungry rabbits?)」などという質問を投げかけ、ウィルが「跳ぶ(Jumps)」と答えた途端にウィルを逃走させたくだりでは意味不明で狐につままれたような思いだったが、そのあまりに唐突な展開に対する回答も実はそこにあったのだ。
 そんな巨大組織のメンバーが社会の至る所にまで入り込んでいるという事実には正直空恐ろしさを感じたが、“SEEKING JUSTICE”が実は超法規的手団を使うものの、ウィルがサイモンに強いられたような理不尽な行為を強いるようなことはせず、あれはあくまでサイモンの暴走だったようだ。その証拠に、廃墟となったショッピングモールでの騒動の後始末に関しても、ウィルとローラに対して紳士的かつ友好的だし、組織への加入を断ったウィルに報復するようなこともなかった。
 ストーリーの展開にはあまりにご都合主義的なところはあるものの、先が読めないスリリングな展開に惹き付けられる作品だった。