評     価  

 
       
File No. 1621  
       
製作年 / 公開日   2012年 / 2012年06月09日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   谷口 正晃  
       
上 映 時 間   112分  
       
公開時コピー   君のことが知りたい  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   三根 梓 [as 杉本ルカ]
西島 隆弘 [as 宮瀬恵介]
白石 隼也 [as 宮瀬春人]
おかやま はじめ [as 宮瀬雄三]
宮田 早苗 [as 宮瀬路子]
梅沢 昌代 [as 南川妙子]
緑 友利恵 [as 江花さおり]
趣里 [as 神崎杏奈]
高良 健吾 [as ウルシダレイジ]
井上 順 [as 南川健吾]
宇津井 健 [as 杉本剛造]
 
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あ ら す じ    夏休みに地元に帰省した大学生の宮瀬恵介は、地元の古い映画館・銀映館での映像技師助手のアルバイト募集に応募する。そこは支配人の南川健吾とその妻妙子が経営している劇場で、映像技師が脚を怪我したために臨時の映写助手を募集していた。そして、採用の合否はすべて技師長の判断だと南川から言われて紹介されたのは、意外にも若くて美しくミステリアスな雰囲気の持ち主の杉本ルカだった。
 ルカの眼鏡にかなって採用が決定した恵介は、この町のバイト料の相場の倍額という破格の時給の条件として、南川から不思議な3つの約束をさせられる。それは、
 1.ルカとの恋愛は禁止
 2.月曜日にルカは憂鬱になるのでそっとしておく
 3.ルカの過去を聞いてはいけない
というものだった。
 翌日から銀映館に通い始めた恵介は、つっけんどんな態度のルカにどう接したらいいのかわからずに戸惑い、思わずルカ自身についてあれこれ聞いてしまう。その都度南川から注意されるが、彼からルカはこの3年間映画館に住み込みで働いていて、一度も銀映館から外へ出ていないことを教えられる。
 ますます彼女について興味を持った恵介は、次第にルカに惹かれていく。アルバイトを始めて迎える最初の月曜日、ルカは心ここにあらずの様子で、仕事がまったく手につかない。代わりに恵介が上映しようとするが、映写事故を起こしてしまう。一人でもフィルムを回せるよう奮闘する恵介を見て、ルカは祖父杉本剛造が書いた映写技法の虎の巻を渡し、剛造が銀映館で映写技師をしているときには横に必ずいたとの思い出を話し始める。恵介も幼い頃に家で問題が起こるたびに銀映館へきており、実は二人とも同じ映画館で一緒の映画を観ていたことを知るのだった。
 その日、恵介が銀映館からの帰宅途中で見知らぬ男ウルシダレイジから銀映館について聞かれるが、そのしつこさに警戒して恵介は適当にあしらう。翌日、旅行に出かけた妙子の代わりに売店のアルバイトに採用された江花さおりが、ルカについて探りを入れ始める。彼女は、レイジに頼まれてルカについて報告していたのだ。レイジがずっとルカの居場所について調べていたことを知った恵介は、映画館にこもる前のルカについて調べ始める・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    ポスターのルカの画像がなんだか気になって仕方なく、千葉県内では2館しか上映していない中、さすがに柏まで出かける気にはなれないから、京成ローザ10のレイトショーに行ってみた。ポスターの女の子に惹かれて観た作品は少なくなく、たいていはスクリーンで観て幻滅させられることが多いのだが、この作品で主役のルカを演じる三根梓チャンはポスターよりも映像で観る方がより可愛くて、それだけでも単細胞な私は満足してしまった(笑)。
 その三根梓チャンだが、この作品が映画主演はもちろんのこと、出演自体も初めてとのこと。ショートヘアながら漆黒の髪が非常に印象的で、「みどりの黒髪」とはまさに彼女のような髪を言うのだろう。そして、前髪の間から右眼だけがのぞく彼女のミステリアスさ、両眼が見える時に感じられる意志の強さなど、久しぶりに日本の女優から強い印象を焼き付けられた気がする。そして、滅多に感情を表に出さない役柄だけに、たまに見せる笑顔がより魅力的に感じられて、私のようなオジサンにはそれがたまらなく可愛いらしく見えるのだ。
 相手役の恵介を演じたのは、『愛のむきだし』でやはり映画初出演・初主演の西島隆弘。『むきだし』のユウのようなヘンタイチックなキャラを一掃して、爽やかなイメージが観ていて気持ちいい。今時ちょっと見られないほどに実直で純な青年ではあるけどね。そして、恵介もまた表には出さない悩みを抱えていて、それがある意味ルカのトラウマに通じるものがあるために、2人は互いに惹かれ合うのもごく自然に受け入れられる。周囲を固める俳優陣も素晴らしく、映画館の支配人・南川を演じる井上順が彼の持ち味である人の良さをフルに発揮していて、彼の醸し出す雰囲気が舞台となる銀映館と絶妙にマッチしているのだ。そして、最近は老人役でしかお目にかかれない宇津井健。出番こそ少ないものの、それでいてきっちりと存在感を印象づけるのはさすがの貫禄だ。
 私が嫌いな高良健吾が、この作品でも人の気持ちなど微塵も理解しようとせず、すべてを自分中心でしか考えられない、利己主義と傲慢さの権化のようなサイテーキャラ、ウルシダレイジを怪演している。こういうキャラが彼には実に良く似合っているんだな。そして悔しいけど、得てして彼(レイジ)のようなヤツが中高校生時代にはモテたりするものなのだ。とは言え、曜日毎に付き合う女の子を変えてだなんて、やはり金持ちのボンボンというバックボーンがあってこそなのだろう。副題の『月曜日のルカ』の意味も、ここまで言えば想像がつくかもしれない。
 舞台となる地方の名画座“銀映館”のノスタルジックな雰囲気がたまらなくいい。谷口監督はイメージにピッタリの映画館を全国から探し出したらしいが、その苦労は充分に報われていると思う。私が生まれて初めて映画を観たのも、決して大都会とは言えない地方都市の小さな劇場で、そんな懐かしい思い出も呼び覚まされるファンタジーの秀作だ。