評     価  

 
       
File No. 1625  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2012年06月23日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   ジョエル・シューマカー  
       
上 映 時 間   91分  
       
公開時コピー   臨界に達する緊迫感に
あなたの忍耐力が試される
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ニコラス・ケイジ [as カイル・ミラー]
ニコール・キッドマン [as サラ・ミラー]
ベン・メンデルソーン [as エライアス]
リアナ・リベラト [as エリヴリー・ミラー]
キャム・ギガンデット [as ジョーナ]
ジョルダーナ・スパイロ [as ペタル]
ダッシュ・ミホク [as タイ]
エミリー・ミード [as ケンドラ]
ニコ・トルトレッラ [as ジェイク]
ブランドン・ベルクナップ [as ディラン]
テリー・ミラム [as トラヴィス]
ティナ・パーカー [as 警備会社オペレーター]
デヴィッド・マルドナド [as 警備会社ガードマン]
 
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あ ら す じ    緑生い茂る森に囲まれた豪邸。ダイヤモンド・ディーラーとして成功を収めているカイル・ミラーは、美人の妻サラ、反抗期を迎えた10代の娘エイヴリーと3人で、何不自由ない生活を送っていた。その日カイルが帰宅すると、「友達とパーティへ行く」と言うエイヴリーと、それに反対するサラがリビングで言い争っている。大事な商談を控えたカイルは書斎へ退散し、いつものように防犯システムを夜間モードへと切り替える。屋外の照明が庭を照らし、赤外線装置と防犯カメラが作動する。
 やがてチャイムが鳴り、カイルが防犯モニターを覗くと、そこには2人の警官の姿があった。「強盗が多発しているので巡回に来た。家族を全員リビングに集めるように。」との言葉に、カイルは警官を招き入れる。ところが、ドアを開けた途端、武装した覆面の4人組が押し入ってくる。捕えられ、リーダーのエライアスから銃を突きつけられるカイル。カイル宅に大金とダイヤモンドが隠されていると確信した彼らは、計画的に襲撃してきたのだ。サラもエライアスの仲間であるジョーナペタルタイに捕えられるが、エイヴリーは襲撃前に家を抜け出していた。
 妻子の命と引き換えに金庫を開けるよう、エライアスはカイルに命じる。しかし、金庫を開ければ、用済みになった自分たちは殺されてしまうカイルは、サラが懇願するにもかかわらず断固として応じようとしない。実は、カイルにはどうしても金庫を開くことができない事情があったのだ。
 極限状態の中、カイルは家族の命を守るため、ビジネスで磨いた交渉テクニックを駆使して、強盗団に心理戦を仕掛けていく。その一方で、サラもカイルに打ち明けられない秘密を抱えていた・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    先日の『ハングリー・ラビット』で、“ニコラス・ケイジ主演の谷間の作品”などと書いたが、こんなにも立て続けに谷間に遭遇するとは思ってもいなかった。しかも今回は、『ハングリー・ラビット』よりもさらにB級度合いが強いにもかかわらず、共演がニコール・キッドマンとは驚きだ。2大オスカー俳優が、こんな作品で初共演だなんて、本当にそれでいいのか?なんて問いかけてみたくなる。余談だが、ニコラス・ケイジの役名がカイル、ニコール・キッドマンの役名がサラだなんて・・・・・『ターミネーター』のカイル・リース&サラ・コナーとは偶然の一致?
 原題の“TRESPASS”とは「家屋等への不法侵入、財産等への不法侵害、身体への暴力行使」という意味の名詞で、それらすべてがこの作品には当てはまる。それに対して、邦題の『ブレイクアウト(Break out)』はピンとくる訳が見つからない。個人的には原題の直訳で『不法侵入』とでもした方がよっぽどマシじゃないかな?と思う。
 一見何の不満もない円満な家庭に見えるミラー一家だが、カイルとサラの関係がぎこちないことがすぐわかる。原因はカイルとサラのどちらにあるのだろう、なんて考えている間に4人組の強盗に押し入られて物語は早くも佳境に突入する。リーダー格のエライアスとその恋人ペタル、エライアスの弟ジョーナ、そしてタイという構成だが、一見統率がとれているように見える彼らにも実はそれぞれ思惑があって、実は全く統率がとれていないド素人に近い集まりであることがやがて露見する。そして、強盗達の間にもまた複雑な事情があることが次第にわかってくる。実の兄弟であるエライアスとジョーナの間にさえ、チームワークを決裂しかねない大きな秘密があるのだ。そして、その秘密及ぼす影響が二転三転してミラー一家に及んで、緊迫感を高めるのに一役買っている。
 妻や娘を人質にとられてもなお頑なに金庫を開くことを拒むカイルの態度には不信感を覚えると同時に、金庫の中に何が入っているのか知りたくてたまらなくなる。その中身がカイルのサラにも隠している秘密で、一報のサラもまたジョーナから言い寄られていたことをカイルに打ち明けられずにいる。いくら家族や夫婦だといえ、大なり小なり互いに何らかの隠し事はあるもので、それが強盗に押し入られたことによって相手への不信感を生む結果となったわけだ。強盗たち同様に、ミラー一家もまたバラバラだったのだ。「雨降って地固まる」の言葉通り、今回の騒動で家族の絆が強くなったことだろう。
 強盗の一人、サラと愛し合っていると豪語するジョーナを演じた俳優キャム・ギガンデッドの顔、どこかで観た記憶があると思ったら、『トワイライト 初恋』でベラを執拗に狙う流れ者のヴァンパイア、ジェームスを演じていた俳優だった。あの顔つきだから、悪役専門というのは仕方ないだろう。