評     価  

 
       
File No. 1632  
       
製作年 / 公開日   2012年 / 2012年07月14日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   蜷川 実花  
       
上 映 時 間   127分  
       
公開時コピー   最高のショーを、
見せてあげる。
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   沢尻 エリカ [as りりこ]
大森 南朋 [as 麻田誠]
寺島 しのぶ [as 羽田美知子]
綾野 剛 [as 奥村伸一]
水原 希子 [as 吉川こずえ]
新井 浩文 [as 沢鍋錦二]
鈴木 杏 [as 保須田久美]
寺島 進 [as 塚原慶太]
哀川 翔 [as 浜口幹男]
窪塚 洋介 [as 南部貴男]
原田 美枝子 [as 和智久子]
桃井 かおり [as 多田寛子]
 
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あ ら す じ    芸能界の頂点に君臨するトップスターのりりこ。完璧なスタイルと美貌を持った人気No.1モデルの彼女の美貌は、実は全身整形で作られたものだった。副作用に苦しみ整形を繰り返す彼女は、日本中から愛されながらも、後輩の吉川こずえに人気No.1の地位を奪われるのではないかと恐れ、精神的に不安定になっていた。
 自分に心酔するマネージャーの羽田美知子とその恋人奥村伸一を利用し、こずえを陥れようと企むりりこ。そんなりりこを通じて彼女を整形した美容整形医和智久子の不正医療を暴こうとする男がいた。検察庁の麻田誠検事と事務官の保須田久美、そして2人に協力する刑事の塚原慶太だった。
 やがて社長の多田寛子からも見限られたりりこの整形疑惑がマスコミにリークされ、追い詰められたりりこは、マスコミ会見の席で驚くべき行動に走るのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    2007年の『クローズド・ノート』の初日舞台挨拶で「別に」とお騒がせ発言をして以来、5年ぶりとなる沢尻エリカの主演作。この作品の撮影後にもマスコミと一悶着あったようで、感情の起伏の激しさは相変わらずのようだ。女優としての資質は十分なだけに、もっと自制することができれば今頃はトップ女優になっていただろうと思うと、非常にもったいない気がする。もっとも、そんな偏った性格があってこそ彼女の女優としての才能が成り立っているのかもしれないが。
 タイトルの『ヘルタースケルター(“Helter Skelter”)』とは、1968年に発表されたビートルズのアルバム「ザ・ビートルズ」に収録された曲のタイトルで、その意味はイギリスではすべり台のことだが、「狼狽する」「混乱した」といった意味もあり、日本語版の対訳「しっちゃかめっちゃか」だと書かれているとのこと。大森南朋扮する麻田検事のセリフにも「ヘルタースケルター、つまりしっちゃかめっちゃか」とあるが、語源は意外なところにあるのだ。
 あくまでも美に執着し女王然として芸能界に君臨するりりこと、現実の沢尻エリカのスタンスがあまりに相似していて、主役としてはおそらくこれ以上はないキャスティングだろう。そして、オープニングからいきなり思ったよりも均整のとれた美しい裸身を惜しげもなく披露してくれていて、彼女のこの作品にかける意気込みがひしひしと伝わってくる。
 けれども、そんな沢尻エリカの熱演もどこか空回りしているように感じるのは、ひとえに人間を表面上しか描き切れていない、演出の拙さにあるように思う。りりこと寺島しのぶ扮するマネージャーの羽田美知子との微妙な関係、そして、水原希子ふんする後輩モデルの吉川こずえとの確執など、あまりに平板すぎて何の面白味も感じられない。しかも、全身整形で芸能界のトップに登り詰めるという、今では何ら目新しさもない題材(同じ題材では韓流の『カンナさん大成功です!』の方が、ジャンルは違えども数倍面白い)だけに、なおさらのこと監督の手腕がものをいう。そして残念ながら上っ面の描写しかできていないから、どうしても大森南朋扮する麻田検事のセリフによるアシストが必要になるのだ。
 りりこのマネージャー、羽田美知子を演じた寺島しのぶの演技はさすがで、りりこを崇拝しながらも反発するという微妙な立場を、絶妙とも言うべき演技で表現しているのは見事だ。そして、彼女だけではなく周囲を固める俳優陣は皆曲者揃いで、彼らの演技を堪能する価値はある。ただ、こずえを演じた水原希子だけは、『ノルウェイの森』で初めて観て以来どうしても好きになれないし、彼女のルックスが女性から絶大な支援を受けるという設定も大いに疑問だ。もしそうだったら、今頃彼女は口禍以前の沢尻エリカ並に人気が出ていておかしくないと思うのだが。
 極彩色のヴィジュアルが売りのひとつだが、私にとっては単に眼が疲れるだけで何らプラスの要素にもなっていない。そう言えば、2007年の『さくらん』でも同じように疲労困憊したことを思い出した。