評     価  

 
       
File No. 1644  
       
製作年 / 公開日   2012年 / 2012年08月10日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   レン・ワイズマン  
       
上 映 時 間   118分  
       
公開時コピー   なりたい自分になれる記憶、
あなたは買いますか?
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   コリン・ファレル [as ダグラス・クエイド/カール・ハウザー]
ケイト・ベッキンセイル [as ローリー・クエイド]
ジェシカ・ビール [as メリーナ]
ブライナ・クランストン [as コーヘイゲン]
ボキーム・ウッドバイン [as ハリー]
ビル・ナイ [as マサイアス]
ジョン・チョー [as マクレーン]
ウィル・ヤン・リー [as マレック]
 
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あ ら す じ    “記憶”が簡単に売買される近未来。世界は大きな戦争の果てに、正常な環境を失い、人々は裕福なブリテン連邦と、連邦のちょうど地球の裏側にある貧しいコロニーという二つの地域に分かれて暮らしていた。コロニーに住む工場労働者のダグラス・クエイドもその一人だった。工場で働く何も変わることのない型にはめられたような毎日に疑問を感じていた彼は、毎晩のように同じシーンで同じ女性と行動を共にするという、奇妙な夢にうなされていた。
 そんなダグはある日、仕事の同僚マレックから紹介されて、人工の記憶を売ることで人気のリコール社を訪れる。だが、事前にダグの記憶を確認する処理の最中に、なぜか突然ブリテン連邦の連邦警察官の襲撃を受ける。思わず無意識に反応して警官たちをあっという間に倒したダグは、そんな優れた戦闘能力が自分の体に備わっていたことに困惑する。
 帰宅したダグは、今度は彼の妻ローリーに襲われる。「記憶を消され、新しい記憶を植えつけられただけ。ダグラス・クエイドなんて人間は、この世に存在しない」と話すローリーからさらに、結婚生活も偽装で、彼女はコーヘイゲンから命じられたダグの監視役だという、驚くべき話を聞かされ、さらに困惑を深める。本気でダグを殺そうと襲ってくるローリーを振り切り逃げるダグは、夢で見た女性メリーナと出会う。
 メリーナを連れたダグは、かつて自分が住んでいたというマンションを訪れ、そこで記憶を植え付けられる前の自分からのメッセージを受け取る。彼の本当の名はカール・ハウザーで、コーヘイゲンの右腕とも言うべき凄腕の諜報員だった。だが、メリーナと出会ったことをきっかけに  メリーナに導かれたダグは、レジスタンスのリーダー、マサイアスに引き合わされる。ところが、そこへ配下を連れたコーヘイゲンが現れて、マサイアスが殺されてしまう。さらにコーヘイゲンは、溢れかえるブリテン連邦の人々の新たな居住区を確保するため、レジスタンスを制圧するという名目でコロニーの人々を壊滅させようと動き出すのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    ご存知、1990年にシュワちゃん主演でポール・ヴァーホーヴェン監督がメガホンを執った同名作品のリメイク作。当然のことながら前作と比較してしまうわけで、どうやら大勢の意見はリメイク作を推す声が多いようだが、私個人としては主役の好き嫌いは抜きにして、前作に軍配を上げたい。そもそも、中国の貧民街のようなコロニーの景観が陳腐で安っぽく見えて仕方ない。前作のリコール社だったらまだしも、今回登場するリーコール社には、私だったら絶対にお世話にはなりたくない(笑)。また、火星の利権を巡るというスケールの大きさが、今回はコロニーにスケールダウンしてしまっているのも残念だ。
 CMや予告編を観ていると、「記憶を買うか否か?」がこの作品の最大のキー・ポイントになっているような錯覚をしてしまいかねないが、そもそもこの作品におけるリコール社の役割は、ダグの無意識下に押し込められている真の記憶を甦らせるトリガーに過ぎない。記憶を買うこと自体ではなく、脳をいじったがために封じられたハウザーの記憶を呼び覚ましてしまう、その点が重要なのだ。
 ダグがハウザー(=自分自身なんだけど)からのメッセージで自分の為すべき事(=コーヘイゲンを倒すこと)を知るのは前作も本作も同じだが、前作ではその裏にもうひとつのハウザーの真の企みが隠されているという、二段仕掛けの構成になっていた。つまり、記憶を封じ込めたのはハウザー自身で、その目的はメリーナに近づき、レジスタンスの首魁であるクアトーを倒すことだったのだ。だが、今回はそんな凝った造りもなく、ハウザーはコーヘイゲンからレジスタンスに単純に寝返っただけ。その辺りには大いに物足りなさを感じる。また、前作ではレジスタンスの指導者クアトーの姿を誰も見たことがなく、その正体が謎に包まれていた。この作品ではクアトーに相当するのがビル・ナイ扮するマサイアスなのだが、その正体は何の特殊能力もない単なるオッサンで、神秘性も何もあったもんじゃない。しかも、彼のこの作品における重要性は極めて低く、ハッキリ言っていてもいなくてもいいようなキャラクターに成り下がってしまっている。
 放射能の影響を受けてミュータントとなった人々が多数“最後の楽園”に集まっていた前作に登場した、乳房が3つの女性が今回も何の脈絡なしに登場する。また、前作でダグが肥満女性に変装して火星へ乗り込んだが、その時の女性を彷彿とさせる女性がやはり同じ衣装で登場したりして、それらは前作に対するオマージュ的な意味合いなんだろうな。
 映像技術に関しては22年前となる前作よりも今回が優れているのは当然のことで、上下だけでなく水平方向にも動くエレベーターが交錯する描写や、エアカーによるチェイスシーンなどは、前作にない・・・・・と言うよりも、前作の頃の技術では不可能だったに違いない、リアリティに溢れる映像を堪能できる。
 前作でシャロン・ストーンが演じたローリーを今回演じるのは、『アンダーワールド』ですっかりアクションが板に付いた感のあるケイト・ベッキンセイル。そして、レジスタンスのメリーナ役が今回はジェシカ・ビールで、この2人の配役に関しては前作よりも今回の方が圧倒的にいい。そして、前作ではローリーに本物の恋人・リクターがいたが、今回は彼が登場しないために、ローリーが最後の最後まで悪役のメイン・キャラとして活躍してくれているのは、ケイトのファンとしては喜ぶべきか、それとも悲しむべきか・・・・・複雑な心境だ。