評     価  

 
       
File No. 1650  
       
製作年 / 公開日   2012年 / 2012年08月25日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   山口 雅俊  
       
上 映 時 間   129分  
       
公開時コピー   彼がツイてなかったのは、
この人と出会ってしまったこと。
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   山田 孝之 [as 丑嶋馨]
大島 優子 [as 鈴木未來]
林 遣都 [as 小川純]
崎本 大海 [as 高田]
やべ きょうすけ [as 柄崎]
片瀬 那奈 [as 千秋]
岡田 義徳 [as 猪俣さん]
ムロ ツヨシ [as 広告代理店の上原]
鈴之助 [as 根岸裕太]
金田 明夫 [as 西尾弁護士]
希崎 ジェシカ
内田 春菊 [as 101号室の内田]
市原 隼人 [as アキト]
黒沢 あすか [as 鈴木文江(未來の母)]
新井 浩文 [as 肉蝮]
 
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あ ら す じ    10日で5割(トゴ)、1日3割(ヒサン)という法外な金利を取って客に金を貸す、伝説の闇金・丑嶋馨。彼の元に訪れる客は、もはやどこの貸金業者からも金を借りることができないようなブラックな債務者ばかりで、丑嶋はそんな客に対して日々容赦ない取り立てを行っている。
 高校を卒業しても定職に就かず、目的もなしにその日その日に流されて遊び暮らしている鈴木未來。パチンコ狂いの母親が丑嶋から借金をしたために、毎日のように取り立てに訪れる丑嶋の迫力に、つい返済を約束してしまう。そしてそんな折、高校時代の友達・冬美から「楽に稼げる」と紹介されて、出会いカフェでバイトを始める。売春だけはしないと固く心に誓うものの、簡単に大金が手に入ることを知ってしまい、未來の決意は揺らぐ。
 3台の携帯に登録された3,000件を超えるアドレスのネットワークを武器にのし上がろうとする、イベントサークルBUMPS代表の小川純。2,000人の大イベントを控えて金策に行き詰まったうえに、狂気に走る謎の男・肉蝮にBUNPSのイケメングループ、ゴレンジャイのメンバーを拉致されて、100万という身代金を要求されてしまう。追い詰められた純はカウカウファイナンスから金を借りるが、被害届を警察に提出して丑嶋を逮捕させ、借金を踏み倒そうと目論むのだが・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    週刊ビッグコミック・スピリッツに連載された同名コミックを原作にした劇場映画で、私は原作のコミックはスピリッツ連載当時から読んでいたが、この映画の前に深夜の連ドラがあったことは全く知らなかった。そして、ドラマを観ていない私にとっては、この作品だけでは肝心の丑嶋のキャラクターが把握できないように思えた。
 確かにクレジットでは主役が丑嶋を演じた山田孝之になっているものの、どう観ても実質的な主役は林遣都扮するチャラ男の純であり、準主役が大島優子演じる鈴木未來だろう。3,000人のアドレスが入った3台の携帯が武器だと豪語する純は、一世一代のイベントのために現金が必要になった上に、肉蝮というワケのわからん男(ホント、何者だろうね、コイツ)からも金を要求されてにっちもさっちも行かなくなる。そんな純に金を貸してくれる相手は違法な高利で利益を貪る闇金しかないわけで、闇金は回収リスクが極めて高いから金利も高いという丑嶋の言葉は真理だろう。結局、3,000人という彼のネットワークもいざという時には何の役にも立たなかったわけだ。
 一方の未來は、黒沢あすか扮するパチンコ中毒のだらしない母親が丑嶋から金を借りたために、災難に巻き込まれるのだが、彼女自身の金に対する考え方は、実は母親のそれと大差ないのだ。友人に誘われて出会いカフェでバイトを始める未來にとって、体を売るという一線だけは決して越えないことが彼女のプライドをかろうじて保っていたのだが、実は丑嶋の言葉通り体を売らない代わりに心を売り、徐々に心を磨り減らしていたのだ。どうでもいいことだけど、もし本物の大島優子が出会いカフェにいたら、食事やお茶するだけでも5万だったら安いもんだ、なんていう客はいくらでもいるだろうな(笑)。
 そんな純と未來は、金を使うのではなく知らず知らずに金に使われてしまっていたのだ。それは社会のほんの縮図に過ぎずに、現実には金のためにもっと悲惨な状況に追い込まれている人も少なくないだろう。そんな追い詰められた人々に手を差し伸べる闇金は、ある意味今の社会にとって必要悪なのかも知れない。暴利は借りる前から解っているのだから、返済できないなら借りなければいい。闇金から金を借りて返済できなくなる、あるいは純のように闇金は違法だから返済する必要などないと開き直る、それらはすべて身から出た錆であって、その結果どのような目に遭わされたとしても他人を責めることなどできないのだ。金をそして闇金を甘く見ていた純は悲惨な目に遭わされることとなり、一方で今までの自分を顧みて金の魔力の虜になっていた自分に気づいた未來は、自分があるべき姿を見つけ出す。因果応報とはまさにこのことを言うのだろう。
 未來の母親がいとも簡単に元金を丑嶋に返済できたのは正直「??」だが、最後の利息をファミレスのバイト代から支払った未来をみて、「今までの5万とこの5万の価値は全然違う」と呟いた丑嶋の言葉が心にしみる。丑嶋という男、実は誰よりも金の恐ろしさを熟知している男なのだろう。その場面で初めて、私が原作コミックを読んで受けた丑嶋のキャラクターと映画のキャラクター重なった気がした。