評     価  

 
       
File No. 1652  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2012年09月01日  
       
製  作  国   フランス  
       
監      督   エリック・トレダノ  
       
上 映 時 間   113分  
       
公開時コピー   さぁ、人生に繰り出そう。  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   フランソワ・クリュゼ [as フィリップ]
オマール・シー [as ドリス]
アンヌ・ル・ニ [as イヴォンヌ]
オドレイ・フルーロ [as マガリー]
クロティルド・モレ [as マーセル]
アルバ・ガイア・クラゲード・ベルージ [as エリサ]
トマ・ソリヴェレ [as バスチャン]
シリル・マンディ [as アダマ]
ドロテ・ブリエール・メリット [as エレノア]
 
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あ ら す じ    スラム街出身で無職の黒人青年ドリスは、失業手当が目当てでパリの邸に住む大富豪フィリップの介護者選びの面接に応募する。フィリップはパラグライダーの事故で首から下が麻痺してしまっていて、常に身近に介護する者を必要としていたのだ。候補者の誰もが自分をセールスするのに必死な中、ドリスは自分を不採用にしてくれれば失業手当がもらえると言ってのける。他人の同情にウンザリしていたフィリップは、自分に対して遠慮のないドリスこそが自分を対等に扱ってくれると考え、彼の採用を決定するのだった。
 次の日から相容れないふたつの世界の衝突が始まった。クラシックとソウル、高級スーツとスウェット、文学的な会話と下ネタ。だが、ふたりとも偽善を憎み本音で生きる姿勢は同じだった。互いを受け入れ始めたふたりの毎日は、やがてワクワクする冒険に変わり、ユーモアに富んだ最強の友情が次第に育まれていく。そんなある日、心配してドリスの経歴を調べた親戚が、宝石強盗で半年服役した前科者だから気をつけるようにとフィリップに忠告する。しかしフィリップは、「彼は私に同情していない。そこがいい。彼の素性や過去など、今の私にはどうでもいい事だ」と、毅然と答えるのだった。
 フィリップを車の荷台に乗せるのを「馬みたいだ」と嫌がって助手席に座らせたり、早朝に発作を起こした彼を街へ連れ出して落ち着くまで何時間も付き合ったり、意外にもドリスには自然な思いやりや優しさがあった。だが別れは突然やってくる。ヘマをして仲間にシメられたドリスの弟が、ドリスのもとに逃げ込んで来たのだ。家族のことを真剣に思うドリスを見たフィリップは、「やめにしよう。これは君の一生の仕事じゃない」と提案する。翌朝、名残を惜しむ邸の人々に、陽気に別れを告げてドリスは邸を去って行く。
 フィリップは真っ当な介護者を雇い、ドリスは運転手の仕事を見つける。自分の新たな人生を歩み始めたドリスに対し、うわべだけの介護者に嫌気がさしたフィリップは再び孤独に陥っていた。そしてドリスは突然真夜中に呼び出される。いったいフィリップに何があったのか・・・・・?
 
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たぴおか的コメント    フランスで歴代3位という興収を記録したヒット作で、早々とハリウッドがリメイク権を獲得した話題作。実話に基づいたこの作品、某映画サイトには「しっとりとした人情ものではなく、さらっとしたコメディタッチで描いたのは正解」との評が書かれていたが、私には逆にコメディに振り過ぎたために、あまりにあっさりしていて重厚さというか深みに欠けるように感じたのが残念に思える。この手の感動作にはついつい涙腺が緩んでしまう私でも、この作品に関しては一度もそんな状態に陥らなかったから。
 笑いを誘う小ネタには事欠かない作品で、特に極めつけなのはフィリップが伸ばした無精髭をドリスが剃るシーンで、ドリスはフィリップの髭を色んな形に剃って遊んでいるのだ。中でも最もウケたのは言うまでもない、フィリップが「これは笑えないぞ」といったあの髭の形(1930〜1940年代に名を馳せた、おそらく世界で最も有名なドイツ人の髭です)で、これがまた妙にフィリップに似合っているのだ。
 金は腐るほどあっても自由がないフィリップと、金はないが自由なドリス。互いに生きる世界は本来決して交わることのないはずだったそんな2人が出会い、互いに足りない部分を埋め合うことで生まれた最強コンビ。障害者に対すると誰もが得てして腫れ物に触るような扱いをしてしまう中、ドリスは相手の障害などにはお構いなしに、相手の心に土足で踏みいるような言動を平気でする。フィリップに雪玉をぶつけて「たまには投げ返してこい」なんて、とても言えるような台詞なじゃい。だが、そんな付き合い方こそ、フィリップが求めてやまない人との触れ合いだったのだ。
 だからこそ、ドリスの身内にトラブルが発生したとき、フィリップは自分の気持ちを抑えてまでドリスのために彼を解雇したのだ。ドリスがいなくなった空虚な気持ちを埋められる相手など見つからないことは百も承知の上だっただろう。そして、再び鬱に陥っていったフィリップを救えるのは、やはりドリスしかいなかったのだ。ドリスはそんなフィリップにこの上ないプレゼントを贈って身を引いたが、それは決して“最強のふたり”を解消するものではない。2人の絆は、それ以降もずっと続いているのだ。