評     価  

 
       
File No. 1663  
       
製作年 / 公開日   2012年 / 2012年09月15日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   滝田 洋二郎  
       
上 映 時 間   141分  
       
公開時コピー   江戸時代の天文学者・安井算哲、
800年の歴史をひっくり返す。
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   岡田 准一 [as 安井算哲(渋川春海)]
宮ア あおい [as 村瀬えん]
佐藤 隆太 [as 村瀬義益]
市川 猿之助 [as 関孝和]
笹野 高史 [as 建部伝内]
岸部 一徳 [as 伊藤重孝]
渡辺 大 [as 安藤有益]
白井 晃 [as 山崎闇斎]
横山 裕 [as 本因坊道策]
市川 染五郎 [as 宮栖川友麿]
笠原 秀幸
染谷 将太 [as 徳川家綱]
きたろう [as 安井算知]
尾藤 イサオ [as 本因坊道悦]
徳井 優
武藤 敬司
中井 貴一 [as 徳川光圀]
松本 幸四郎 [as 保科正之]
 
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あ ら す じ    将軍に碁を教える名家の息子として生まれたが、対局よりも星の観測とと算術の設問を解いている時が一番幸せで、夢中になるあまり時間を忘れてのめり込んでしまい周囲のことが目に入らなくなってしまう安井算哲。彼は足繁く通う神社の絵馬に書かれた、関孝和による算術の出題を解く喜びに魅せられ、関が通うという村瀬塾を訪ね、主の村瀬義益とその妹村瀬えんと懇意になるのだった。
 ある日算哲は、若き将軍・徳川家綱の後見人である会津藩主・保科正之から、日本全国で北極星の高度を測りその土地の位置を割り出すという、“北極出地”を命じられる。建部伝内伊藤重孝らと友に一年半をかけて日本全国を行脚した算哲は、現在使われている暦にズレを生じていることを身をもって知らされる。
 北極出地を終えた算哲は、再び保科正之からとてつもない計画の責任者に任命される。当時使われていた暦は800年も前の唐の暦でずれが生じ始めているために、新しい暦に改暦せよとの命だった。暦は朝廷が司る聖域で同時に莫大な利権が絡むものでもあった。幕府が改暦を行うことはすなわち、朝廷を敵に回すのも同然だったのだ。
 壮大な事業に戸惑いながらも、妻となったえんや彼の師である山崎闇斎、そして大勢の仲間にに支えられて、算哲の挑戦は始まるのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    実はこの作品にはあまり期待していなくて、劇場で観るか迷っていたのだが、3連休ということもあって劇場で観ることにした。そして現金なもので、監督が『おくりびと』の滝田洋二郎と知って俄然期待感が盛り上がってきた(笑)。公開2日目の初回で、スクリーンは182席という中規模のキャパだったが、ほぼ満席状態(空席はわずか10席程度だった)なのには面食らった。
 江戸時代に実在した、囲碁棋士にして天文暦学者の渋川春海(安井算哲)の半生を描いた作品で、多少の脚色はあるもののほぼ史実に基づいた内容のようだ。主人公の安井算哲を演じた岡田准一の演技はやはりソツなく上手いし、その妻となるえん役の宮アあおいも、個人的にはあまり好きな女優ではないのだが、あの童顔でニコッと微笑まれるとついついコロッと参ってしまいそうに魅力的だった。また、北極出地での岸部一徳扮する伊藤重孝と笹野高史扮する建部伝内らのコミカルさがいい意味での弛緩状態を与えてくれる。
 周囲を固める脇役陣の豪華さは特筆すべきだ。水戸光圀役に中井貴一、会津藩主・保科正之に松本幸四郎と公家の宮栖川友麿に市川染五郎の父子共演、天才的な和算術士に今でもついつい“亀治郎”と呼んでしまいそうになる市川猿之助。意外だったのは桜井将太が演じた将軍・家綱で、これが威厳も感じられてなかなか様になっていた。
 測量技術も天文学も拙く、現在のような正確な地図すら存在しなかった江戸時代のこと、北極出地に始まる改暦作業には想像を絶する困難が伴ったことがよくわかる。北極星の高度を正確に測量しようとしてはいたが、おそらく測量値の地面は完全に水平ではなかっただろうし、それでもできる限りの正確さを期するために払われる努力は並大抵じゃな狩ったことが観て取れる。
 それにしても、保科正之から改暦を命じられた算哲が、なぜチームに関孝和を加えなかったのだろうか、不思議で仕方ない。関が暦にあれほど精通していることを知らなかったとしても、彼の算術の能力は十二分に役に立っただろうし、彼がいれば誤った暦で幕府の面目をつぶすこともなかっただろう。