評     価  

 
       
File No. 1665  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2012年09月22日  
       
製  作  国   ド イ ツ / ポーランド  
       
監      督   アグニェシュカ・ホランド  
       
上 映 時 間   143分  
       
公開時コピー   その暗闇は、
やさしい秘密を隠している
 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
キ ャ ス ト   ロベルト・ヴィエツキーヴィッチ [as レオポルド・ソハ]
ベンノ・フユルマン [as ムンデク・マルグリエス]
アグニュシュカ・グロホウスカ [as クララ・ケラー]
マリア・シュラーダー [as パウリナ・ヒゲル]
ヘルバート・クナウプ [as イグナツィ・ヒゲル]
マルチン・ボサック [as ヤネック・ワイス]
キンガ・プレイス [as ヴァンダ・ソハ]
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
あ ら す じ    1943年、ポーランド。下水修理と空き巣稼業で妻子を養っているレオポルド・ソハは、収容所行きを逃れようと地下水道に繋がる穴を掘っているユダヤ人たちを発見した。ドイツ軍に売り渡せば報奨金を得られるが、狡猾なソハはユダヤ人たちを地下に匿ってやり、その見返りに金をせしめようと思いつく。ソハは迷路のような地下水道の構造を最も知り尽くした男だったのだ。
 ところが、子供を含むユダヤ人グループは面倒見きれないほど人数が多く、隠れ場所の移動や食料の調達さえ容易ではなかった。おまけに執拗なユダヤ人狩りを行う将校が目を光らせ、ソハの妻ヴァンダ・ソハや一人娘、それに若い相棒は処刑の恐怖におののいていく。
 自らも極度の精神的な重圧に押しつぶされそうになり手を引くことを決心するが、時すでに遅かった。同じ生身の人間であるユダヤ人たちに寄り添い、その悲惨な窮状を目の当たりにしてきたソハは、彼らを“守る”という自分自身も信じがたい茨の道を選ぶのだった・・・・・。
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
たぴおか的コメント    1943年、ホロコーストの嵐が吹き荒れるナチス占領下のポーランドで、ユダヤ人を匿った実在する人物レオポルド・ソハを描いた作品。いかにもドイツ映画らしい骨太の筆致が、見るものに有無を言わせない迫力で迫ってくる。不要に扇情的なシーンが多かったような気がするのだけは、果たしてそれらのシーンが本当に必要だったが疑問ではあるけど(例えば、大勢のユダヤ人女性が全裸でナチスから逃げるシーンとか)。
 主人公のソハという男、ユダヤ人でもなければ、決して英雄でもヒーローでもない。むしろ“副業”と称して空き巣を働くような、下水修理を生業とする貧しい中年男だ。そんなソハがユダヤ人を匿ったのも、最初は金のためだった。そのソハが、やがて自分の身や家族にまで危険が及ぶのにもかかわらず、見返りを求めることなくユダヤ人たちを助けるようになる。そんなソハの心境に変化が起きた理由が、必死に生きようとするユダヤ人たちを見ていると理解できる気がする。戦争が終わり、ユダヤ人たちを地下から地上へと迎えた時のソハの、無償で彼らを助けたことが報われたことに対する心からの笑顔が非常に印象的だ。
 残念ながらソハは終戦後まもなく、身を挺して娘を暴走自動車から助けたために亡くなったという。歴史には名を残すこともない一人のポーランド人だが、彼に救われた人々にとっては紛れもないヒーローとして心に刻まれたことだろう。