評     価  

 
       
File No. 1671  
       
製作年 / 公開日   2012年 / 2012年10月06日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   北野 武  
       
上 映 時 間   112分  
       
公開時コピー   全員悪人 簡潔。
  
一番悪い奴は誰だ?
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ビートたけし [as 大友(元・大友組組長)]
西田 敏行 [as 西野(花菱会若頭)]
三浦 友和 [as 加藤(山王会会長)]
加瀬 亮 [as 石原(山王会若頭)]
中野 英雄 [as 木村(元・村瀬組若頭)]
松重 豊 [as 繁田(マル暴刑事)]
小日向 文世 [as 片岡(マル暴刑事)]
高橋 克典 [as 城(花菱会)]
桐谷 健太 [as 嶋(木村の子分)]
新井 浩文 [as 小野(木村の子分)]
塩見 三省 [as 中田(花菱会幹部)]
名高 達男 [as 白山(山王会幹部)]
光石 研 [as 五味(山王会幹部)]
田中 哲司 [as 舟木(山王会)]
中尾 彬 [as 富田(山王会幹部)]
神山 繁 [as 布施(花菱会会長)]
 
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あ ら す じ    熾烈な下克上抗争から5年。先代亡きあと加藤が会長となり、関東の頂点を極めた暴力団・山王会は、ついに政治の世界にまで手を伸ばし始めた。山王会の過剰な勢力拡大に警察もさすが見て見ぬふりをすることもできなくなり、刑事の片岡は関西の雄である花菱会に目を付ける。表向きは友好関係を保っている東西の巨大暴力団の対立を目論んだ片岡は、両者を衝突させるべく裏で策略を仕掛けていく。
 抗争前は単なる末端組織に過ぎなかった大友組の金庫番から、今や山王会の若頭にまでのし上がった石原に不満を持つ古参の幹部、富田白山五味らを焚き付けた片岡は、花菱会と密約を結ばせて山王会に対抗させようと考える。しかし、富田らの行動は山王会に筒抜けになっており、首謀者である富田は殺されてしまう。
 そんな中、獄中で死んだと思われていた元山王会配下大友組の組長・大友が出所すると、片岡は大友に加藤・石原に対してケジメをつけるべくけしかける。かつて大友組が潰した村瀬組の頭で、今は小野の2人の子分と共に、バッティングセンターを営む木村との仲を取り持ち、2人を花菱会と山王会の抗争を巻き起こすための鉄砲玉とすべく画策するのだが・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    前作『アウトレイジ』のラストで服役中に殺されたはずのビートたけし扮する大友が、実は生きていたという設定で繰り広げられる続編。前作よりも殺しのシーンの過激さが薄れたように思えるが、その代わりとばかりに怒鳴る怒鳴る、全編を通して怒号の嵐だ。現実にはあそこまでの怒鳴り合いになると、双方とも“吐いたツバは飲めない”つまり引っ込みがつかない状態になり、そく命の取り合いとなるところだろうが、とかく陰湿になりがちなヤクザの抗争を派手なエンターテイメントに昇華するのに充分な役割を果たしている、そんな意味を込めた演出であろう怒号の応酬だ。
 これほど主役級の俳優をふんだんに使う贅沢なキャスティング、そしてその彼らをいとも簡単にバッサリと切り捨ててしまう、ある意味無駄遣いのような大胆な使い方が逆に爽快だ。大友と木村のタッグが花菱会のバックアップを受けて、次々と山王会の面々を次々と倒していく様は、不謹慎かもしれないが前作を観た者にとってはカタルシスを感じずにはいられない。
 一方、大友に組を潰されたにもかかわらず、大友を慕い行動を共にする中野英雄扮する木村は、「全員悪人」のこの作品の中で、唯一「コイツいい奴じゃん」と思わせる存在なのだが、彼もまた殺されてしまうのは、彼の2人の子分の死と共に数少ない悲しむべき死だと言えるだろう。
 この作品で北野組初参加となる西田敏行の迫力は見事で、さすがに『ザ・マジックアワー』のギャングのボスとはワケが違う・・・・・って当たり前か(笑)。また、最後まで誰が演じていたのか気づかなかった、花菱会の城役の高橋克典がコワイ。そんな中でも、異様にテンションが高かったのが、石原役の加瀬亮だ。あの加瀬が演じた石原を観て「演技が下手」と感じる人が少なくないようだが、あれはその逆で演技が上手いからこそだと思う。山王会の下部組織の金庫番でしかなかった器の小さな男が、頂上の山王会で若頭などというナンバー2に抜擢されたりすると、得てして虚勢を張るあまりに必要以上に怒鳴ったり暴力に訴えたりするのだ。その証拠に、後ろ盾を失って大友の前に引き出された石原は、とんでもない失態を演じている。そんな彼にはあの最期はある意味ぴったりだったのかもしれない。