評 価
File No.
1672
製作年 / 公開日
2012年 / 2012年10月06日
製 作 国
カ ナ ダ
監 督
デヴィッド・ウィーヴァー
上 映 時 間
94分
公開時コピー
過去を撃ち抜け
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最初に観たメディア
Theater
Television
Video
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キ ャ ス ト
サミュエル・L・ジャクソン
[as フォリー]
ルーク・カービー
[as イーサン]
ルース・ネッガ
[as アイリス]
トム・ウィルキンソン
[as ゼイビア]
アラン・C・ピーターソン
[as ミロ]
ギル・ベローズ
[as バーテンダー・ビル]
アーロン・プール
[as ジェイク]
トム・マッカムス
[as ディーコン]
マーサ・バーンズ
[as グレッチェン]
デボラ・カーラ・アンガー
[as ヘレナ]
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あ ら す じ
親友でもあり詐欺の相棒でもあった男を殺した罪で25年の刑期を終え出所した元天才詐欺師
フォリー
には、帰りを待つ者など誰一人いなかった。そこに突如現れた、殺した親友の息子
イーサン
の誘いでバーを訪れたフォリーは、
アイリス
と名乗る若い女と出会う。そして後日、フォリーが常連となっているバーで、男に絡まれたアイリスをフォリーが助けたことから2人は互いに好意をを抱き、アイリスと共に新しい生活を送ろうと決心したフォリーの前に再びイーサンが現れる。
イーサンはフォリーの罪悪感を利用し、再び詐欺を持ちかける。これをきっぱりと断ったフォリーだったが、イーサンは驚くべき事実を打ち明けてフォリーを動揺させる。そして、その事実をアイリスに告げないことの交換条件として、フォリーに詐欺を強要するイーサン。フォリーは再び詐欺に手を染める決意をし、理由を知らせないままアイリスに別れを告げようとするが・・・・・。
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たぴおか的コメント
来年3月には閉館となるシネパトス銀座のみの完全に単館上映の作品。初日を避けた2日目の劇場は、客の入りが3割程度というすき具合で、時折地下鉄の音が響くのはご愛敬、都内の劇場でこれほど空席が多く周囲を気にせずに観ることができるのはシネパトスくらいだろう。閉館になる理由は採算の問題ではなく、耐震性に問題があるために都から立ち退き命令があったためだという。3スクリーンのうち1スクリーンを邦画専門の名画座とし、私に言わせればシアターN渋谷と並んでエロ・グロ・ナンセンスなB級・C旧作品を上映しながらも、時折秀作が上映されるから馬鹿にできない劇場だった。ちなみに『コンフィデンスマン』も関東ではシネパトス1館のみの上映だ。おそらくヒューマックスシネマは、シネパトスに替わる新しい劇場を作ることもないだろうだけに、閉館が非常に惜しまれる。
それはともかく、作品は『アベンジャーズ』の司令官ニック・フューリーを演じたサミュエル・L・ジャクソンで、「近年の彼の演技の中でも一番上手い」とも評されているようだ。サミュエル扮する詐欺師のフューリーは、過去に詐欺の相棒だった親友を殺した罪で25年の刑に服したという設定だが、なぜ彼が親友を殺したのか、その理由には一切触れられていない。本筋には影響がないものの、フューリーの性格からするとそうせざるを得ない理由があったとしか思えず、それが何なのか気になって仕方ない。
そんなフューリーに出所早々詐欺の話を持ちかけるイーサンを演じるルーク・カービーは、ちょっと若い頃のジョニー・デップを思わせる二枚目で、それがイーサンの冷酷さを引き立たせている。そして、彼はアイリスという女性を使いフューリーに対して二重の罠を仕掛けるのだ。最初の罠にはフューリーも気づいたものの、さらなる致命的な罠にはフューリーはおろか、アイリスすら気がつかない。そしてその罠が何か知ることは、フューリー当人はもちろんのこと、観ている者をすら愕然とさせる。しかし、やはり最もショックを受けるのは他ならないフューリーへの罠として使われたアイリス自身だろう。そのことを痛いほどわかっていたがために、フューリーはイーサンの申し出を断ることができなかったのだ。
ラストは悲しい反面、希望を感じられる終わり方でもある。原題の“
THE SAMARITAN
”を象徴するような、いかにもフューリーらしい結末だったと言えるだろう。