評     価  

 
       
File No. 1720  
       
製作年 / 公開日   2012年 / 2013年01月25日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   アン・リー  
       
上 映 時 間   127分  
       
公開時コピー   なぜ少年は、生きることができたのか。  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   スラージ・シャルマ [as パイ・パテル(少年)]
イルファン・カーン [as パイ・パテル(成人)]
アヤッシュ・タンドン・カーン [as パイ・パテル(11〜12歳)]
ゴータム・ベルール [as パイ・パテル(5歳)]
アディル・フセイン [as サントッシュ・パテル]
タブー [as ジータ・パテル(パイの母)]
アヤン・カーン [as ラヴィ・パテル(パイの兄)]
レイフ・スポール [as カナダ人ライター]
ジェラール・ドパルデュー [as コック]
ジェームズ・サイトウ [as 保険調査員]
ジュン・ナイトウ [as 保険調査員]
アンドレア・ディ・ステファノ [as 僧侶]
シャラヴァンティ・サイナス [as アナディ]
 
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あ ら す じ    インドのボンディシェリで動物園を経営していたパテル一家は、動物園を売却してカナダのモントリオールに移り住むことになる。16歳の少年パイ・パテルと父サントッシュ・パテル、母ジータ・パテル、兄ラヴィ・パテル、そして多くの動物たちは貨物船に乗り込むが、太平洋上を航行中、嵐に見舞われて船は沈没してしまう。ただ一人パイは救命ボートに逃れて一命を取り留めるものの、そのボートにはシマウマ、オランウータン、そしてハイエナの3頭の同乗者がいた。
 その救命ボートに泳ぎ着いたのは、リチャード・パーカーと名付けられたベンガルトラだった。そして、シマウマ、オランウータンが死に、ハイエナもリチャード・パーカーに殺され、ボートに残されたのはパイとトラのみとなる。わずかな非常食で飢えをしのぎ、家族を亡くした悲しみと孤独にも耐えるパイ。そんなパイと一頭のトラとの227日間にも及ぶ太平洋上の漂流生活が始まった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    『ブロークバック・マウンテン』でオスカーを受賞したアン・リー監督が、家族を失った少年が小さな救命ボートで獰猛なベンガルトラと227日間を過ごしたという世界的なベストセラー小説を、3Dで実写化したサバイバル・アドベンチャー作品。尺が127分とちょっと長めのため、一体ボートの上でトラと一緒に過ごす経緯だけで、どうやって間を持たすのかに不安を感じながら劇場へ向かった。
 映像の美しさは特筆すべきで、特に蛍光色を利用した2頭のクジラのシーンなどは圧巻。ただ、それが3Dの効果が遺憾なく発揮された結果かというと、残念ながら私には2D映像で充分なように思える。むしろ、これだけ骨太な中身で勝負できる作品だけに、変に3Dで媚びたりしない方が良かったのではないかとさえ思える。
 トラと一対一になった時、いかに自分がトラよりも強いと思わせるかが鍵になるわけで、自分よりも弱いとトラに思われたが最後、行きつく果てはリチャード・パーカーに秒殺されたハイエナを見れば明らかだ。幼い頃にトラに近づいて父親から教えられた教訓が、身をもって事実だと思い知らされるのだ。そして、トラとの共同生活が始まるのだが、パイの立場に自分に置き換えてみると、トラを餓死させてしまった方が助かる可能性は格段に高かったのではないか?という疑問が浮かぶ。自分が生きるか死ぬかという瀬戸際に置かれれば、“動物虐待”などという綺麗事は言っていられないだろう。おそらくそこには、パイが信じる宗教の影響があったのではないかと推察されるのだが、その点が実は私がこの作品に共感できない最大の要因だった。
 宗教を一切合切否定するわけじゃなく、宗教とはあくまで日常において心の平静を求めるものだと思っている。だから、窮地に陥った時に宗教にすがったとしても、決して神や仏が救いの手を差し伸べてくれるわけはない。だから、コピーにもある「なぜ少年は、生きることができたのか。」という問いかけに対して、宗教を絡ませるようなことをして欲しくなかったというのが、正直な感想だ。