評     価  

 
       
File No. 1725  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2013年02月01日  
       
製  作  国   イギリス / アメリカ / アラブ首長国連邦  
       
監      督   ジョン・マッデン  
       
上 映 時 間   124分  
       
公開時コピー   インドの風がささやいた。
やりたいように、やればいい。
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ジュディ・デンチ [as イヴリン・グリーンスレード]
ビル・ナイ [as ダグラス・エインズリー]
ペネロープ・ウィルトン [as ジーン・エインズリー]
デヴ・パテル [as ソニー・カプー]
セリア・イムリー [as マッジ・ハードキャッスル]
ロナルド・ピックアップ [as ノーマン・カズンズ]
トム・ウィルキンソン [as グレアム・ダッシュウッド]
マギー・スミス [as ミュリエル・ドネリー]
ティナ・デザエ [as スナイナ]
 
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あ ら す じ    40 年間連れ添った夫を亡くしたイヴリン・グリーンスレードは、多額の負債を返済するために家を売却する。そして、同居を勧める息子の誘いを断り、インドの高級リゾート“マリーゴールド・ホテル”での一人暮らしを決意する。彼女の他、このホテルに申し込んでいたのは6人の男女で、イギリスに家を買うはずだったが、退職金を貸した娘が事業に失敗してインドにやってきたダグラス・アインスリージーンの夫婦。股関節の手術を受けようとしたミュリエル・ドネリーは、イギリスの病院では半年待ちと言われ、渋々インドへ。独身者ノーマン・カズンズの悲願は、異国の地での最後のロマンス。結婚と離婚を繰り返すマッジ・ハードキャッスルの目的は、“金持ちの夫探し”。以前この地に住んでいた元判事のグレアム・ダッシュウッドは、20年ぶりに知人に会いに来たのだが、ある事情があって迷っていた。
 彼らが想像していた優雅な生活は、実際のホテルを目にして無残にも砕け散る。改装中というそのホテルを亡き父から譲り受けた若い支配人ソニー・カプーは、やる気だけは人一倍ながら経験不足。電話は使えず、ドアのない部屋もある。だが、既に前金を支払った7人に選択の余地はなかった。
 ジャイプールの街に溢れる音と色彩、喧騒と人の数、そして暑さに圧倒されながらも、それぞれの生活を踏み出す7人。様々な悩みを抱えながらも、この地で過ごす時間が長くなり、互いの交流が深まるにつれて、少しずつ前に進んでいく。その一方で、ホテルを復活させるために、ソニーは地元の投資家に援助を依頼する。しかし、ホテルを一緒に相続した2人の兄と母親は売却するつもりでいた。こうして、インドに来て45日が過ぎた頃、母親の説得に負けたソニーがホテルを閉鎖すると言い出す。再び人生の岐路に立ったイヴリンたちが巡り逢った、意外な運命とは・・・・・?
 
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たぴおか的コメント    会社の同僚に「この週末は何を観るか?」と尋ねられて、「ジイさんバアさんインドへ行く」なんてふざけて答えたように、中身にはあまり期待していなかった作品なのだが、これが観てみると予想を覆す面白さだった。インドという国を舞台に選んだのが成功の要因のひとつで、今中国と並んで大きく発展しつつあるこの大国は、ビル・ナイ扮するダグラスの言う通り、光・色彩・笑顔、そして命の輝きにあふれている。そして、訪れた者をも巻き込むような、とてつもないパワーに溢れている。今の日本が中国やインド、韓国といった新進国に圧倒されているのも、人々がこの作品に観られるようなパワーを失ってしまったことに理由があるように思えてならない。
 登場人物のセリフにも、思わずうなずいてしまうものが少なくない。中でも最も感銘を受けたのは、ジュディ・デンチ扮するイヴリンの「本当の失敗とは“やらないでおくこと”」というもの。確かにその通りで、実際に試みて上手くいかなかったことは、経験となって後に同じケースに遭遇した時の糧ともなるが、何も行動しなければ何も得るものはないのだ。あそして、自分を省みるに、今まで考えた末に理由を付けて行動に移せなかった事がいかに多かったがを痛感した。とは言っても、わかっていながら実際に言葉だけじゃなく実践するのは難しいものなんだろうな。
 若い者でさえ、急激に新しい環境に馴染むことは難しいのだから、増して年老いて余生を送ろうという老人たちでは、インドに馴染めないのも無理はない。だから、イヴリンやビル・ナイ演じるダグラスのように環境の変化を苦にもしない順応力は驚くべきで、むしろダグラスの妻・ジーンのような反応が自然なのかもしれない。ただ、あまりにインドを拒否するあまり、夫をも受け入れようとしなくなるほど頑なな性格も考え物だが。
 登場人物は皆イギリスの名優たちで、他の作品で演じたキャラクターのイメージが拭いきれない人物も少なくない。主演のジュディ・デンチは『007』シリーズのMで、マギー・スミスはマクゴナガル先生、そして極めつけのビル・ナイはどうしてもヴァンパイアに思えてしまう(笑)。そんなビル・ナイをもってして、こんな爽やかな映画が出来上がるとは、まさに奇跡を観るようだ。そう、ヴァンパイアやイカの化け物のようなデイヴィ・ジョーンズを演じていても、素顔はこの作品のような軽快な人物なのだ・・・・・なんてことばかり言ってはビル・ナイに失礼かな(笑)。
 なんせ老人ばかりが登場するもんだから、刺身のつま、ステーキに添えるクレソンのように、デヴ・パテルと恋人スナイナのエピソードを絡ませているのが、一筋の爽やかな空気を吹き込むような効果を生んでいる。韓流女優の美しさばかりが取り上げられるが、『ロボット』でサナを演じたアイシュワリヤー・ラーイ・バッチャンといい、この作品のテナ・デザエといい、インドの女優もなかなかの美人揃いで侮れないね。