評     価  

 
       
File No. 1726  
       
製作年 / 公開日   2012年 / 2013年02月02日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   廣木 隆一  
       
上 映 時 間   131分  
       
公開時コピー   痛みを知る、すべての人へおくる感動のラブストーリー  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   宮ア あおい [as 妻利愛子(ツマ)]
向井 理 [as 武辜歩(ムコ)]
濱田 龍臣 [as 大地]
浅見 姫香 [as 洋子]
本田 望結 [as 幼少時代のツマ]
緒川 たまき [as 緑]
リリー・フランキー [as 夏目]
松原 智恵子 [as セイカ]
柄本 明 [as アレチ]
【声の出演】
大杉 漣 [as ソテツ]
柄本 佑 [as コソク]
安藤 サクラ [as カンユ]
高良 健吾 [as クモほか]
 
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あ ら す じ    “ツマ”こと妻利愛子は、幼少の頃過ごした入院生活の中で、『きいろいゾウ』という絵本を大切に読み、日々の慰めにしていた。絵本を通じて自由に旅をする空想をするうちに、ツマは木々や動物たちの声が聴こえるようになる。
 売れない小説家の“ムコ”こと無辜歩は、過去に捕らわれていた。彼の背中には、大きな鳥のタトゥーが入っている。ある満月の夜、ツマとムコは出会い、すぐに結婚する。日々を慈しみながら穏やかに生活をする2人。しかし二人はそれぞれ秘密を抱えている。
 ある日、ムコ宛てに差出人名のない手紙が届く。それはムコがぬぐい去ることができない過去に関係しており、それを機に2人の関係は微妙に揺らぎ始める・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    う〜ん・・・・・何なんだろうね、この作品は(笑)。決してつまらないわけじゃない(かな・・・・・?)、けれども面白いとも感じられず、ましてやコピーにあるような「感動のラブストーリー」だとは到底思えない。主演の宮アあおいと向井理は揃って原作の愛読者だったようだが、そんな作品に対する思い入れのある2人が奏でる映像を観る限り、原作の小説を読んでみようなどという気持ちには、言っちゃ悪いが少しもなれない。
 夫婦という関係は結婚で成立するわけじゃなく、結婚してからの2人の気持ちの積み重ねで出来上がる関係だと思うが、その意味では典型的な夫婦だと言えるこの作品の“ツマ”と“ムコ”。宮アあおい扮する“ツマ”の旧制が妻利で、“ムコ”の姓が武辜だなんていうのは、無理矢理のこじつけにしか感じられず、却って不自然。同じく宮アあおいが主演の『ツレがうつになりまして。』では、堺雅人扮する夫を実際に“ツレ”と呼んでいた例もあることだし、互いの呼称“ムコさん”“ツマ”を姓にこじつける必要はない。そして、そんな小細工をすることがどうもあざとく思えてしまうのだ。
 ストーリーは大きな盛り上がりもなく、静かに淡々と進んでいく。こういう作品で私が意識を失うのは珍しいことじゃなく、むしろレイトショーにもかかわらず眠気に襲われなかったのが驚くべきことだ(なんて偉そうに断言することじゃないけど)。幼い頃に読んだ絵本『きいろいゾウ』の世界を大人になるまで引きずるツマは、当然夢見がちな性格にもなるはずで、だからこそ動物や植物と会話できたりもするのだろう。ただ、子供向けファンタジーならいざ知らず、大人である夫婦関係にまでそんなファンタジックな世界観を持ち込むのというのにははなはだ疑問を感じてしまう。
 だから、ある時を境にして、ツマが話しかけてもソテツは何も答えなくなった、その日からが本当の意味での夫婦生活のスタートなんじゃないだろうか。本物の夫婦の絆は、決して夢のような暮らしからは築き上げることができない、それだけは疑う余地のない真理なんだろうということだけが、この作品から得られた収穫だったように思う。