評     価  

 
       
File No. 1732  
       
製作年 / 公開日   2013年 / 2013年02月09日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   瀧本 智行  
       
上 映 時 間   125分  
       
公開時コピー   悪に裁きを下す、美しき殺人者  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   生田 斗真 [as 鈴木一郎(入陶大威)」]
松雪 泰子 [as 鷲谷真梨子]
二階堂 ふみ [as 緑川紀尚]
太田 莉菜 [as 水沢ゆりあ]
大和田 健介 [as 広野]
染谷 将太 [as 志村]
光石 研 [as 黒田雄高]
甲本 雅裕 [as 空身]
小澤 征悦 [as 伊能]
石橋 蓮司 [as 藍沢]
夏八木 勲 [as 入陶倫行]
江口 洋介 [as 茶屋刑事]
 
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あ ら す じ    都内近郊で無差別連続爆破事件が頻発し、路線バスが爆破される。乗客が全員死亡したその犯行に使われたのは、舌を切り取られた女性の全身に爆薬を巻きつける“人間爆弾”だった。動機不明の異常な事件を担当する刑事の中に、粗暴だが人一倍正義感の強い茶屋が、犯人のアジトを突き止めて踏み込むと、別の男と格闘していた犯人がアジトを爆破して逃走する。茶屋が確保したその男は、“鈴木一郎”と名乗った以外、一切の身元が不明だった。
 爆破の共犯者と見なされ精神鑑定を受けるが、担当医師の鷲谷真梨子は彼の態度に違和感を覚える。平均的過ぎる受け答え、正確過ぎる生活行動。その様子を観察した真梨子は、一郎の過去を調べ始め、彼の過去を知る医師藍沢伊能にたどり着く。そして、彼らから聞いた話は真梨子の想像を絶するものだった。
 一郎の本名は入陶大威(=いりすたけきみ)といい、幼い頃に轢き逃げ事故で両親を亡くした彼は、大富豪の祖父・入陶倫行に引き取られる。ところが、倫行は息子夫婦を失った怒りから、並外れた知能を持つ一郎を、人間らしい感情を持たず、正義のために犯罪者を抹殺する殺人ロボットに鍛え上げたのだ。そんな彼を藍沢は“脳男”と呼んでいた。だが真梨子は、どんな人間でも必ず人間性を取り戻せると信じていた。
 一方、茶屋も「一郎は犯人一味ではなく、犯人を殺そうとしたのではないか」という仮説に辿り着く。そんな中、一郎を移送していた護送車が、緑川紀子水沢ゆりあの2人組に襲われる。一郎を出せと要求する彼女たちこそ連続爆破事件の真犯人だった。争いの中でゆりあは一郎に撃たれ、護送車は緑川が仕掛けた爆弾で爆破される。そして、混乱に乗じて緑川と一郎は姿を消してしまう。
 1週間後、姿を現した緑川が、真梨子を人質に取って病院に立て籠もる。病院中に仕掛けられた爆弾に警察が翻弄される中、緑川を抹殺するため一郎が姿を現す。様々な想いが錯綜する中、一郎と緑川の死闘が幕を開けるのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    実は結構楽しみにしていた作品で、もしかしたら今年初の星10個になるかもしれない・・・・・なんて過剰な期待をしていたのだが、予想していた内容とはちょっと違っていた気がする。知的能力と身体能力がズバ抜けていながら、生まれつき感情だけが欠落した主人公、“脳男”。警察に拘束された彼が、そこからどんな驚くべき方法で何をしでかすのかが興味の焦点だったのだが、実際には彼中心ではなく、むしろ刑事の茶屋や医師の鷲谷、そして、連続爆破犯の緑川らの描写も怠らない、どちらかと言えば人間ドラマ的な要素が強いように感じられた。
 だから、今をときめく生田斗真が主演であるにもかかわらず、決して彼の独壇場に終始するようなことはなく、振り返ってみると彼の印象が薄く思えてしまう。だからと言って、生田斗真の演技が下手だなんて言っているわけじゃなく、脚を怪我したうえ車に撥ねられ、それでも立ち上がろうとするシーンは鬼気迫るものがあり、本当に大怪我をしているんじゃないかと思えるほどだ。感情を表に出さない無表情も、彼のような端正なルックスだからこそ際立つのだろう。痛みを感じない、そして感情を持ち合わせない、正義感溢れる殺人マシンを体現できる俳優はそうはいないだろう。
 松雪泰子と江口洋介のベテランの演技はさすがだ。悪を許せずに突っ走る茶屋刑事、そして、人間はロボットじゃないを信条に脳男に真っ向から向かっていく精神科医の真梨子なのだが、彼らがいかに力もうとも脳男・鈴木一郎に対して、さらには連続爆破犯の緑川に対しての無力化は圧倒的だ。一郎も緑川も、常人の力の及ばない場所にいることを観る者は思い知らされ、必然的に結末は両者の直接対決しかないのだろうと察することになる。ただ、いくら頭がいいといっても、警察がたった少女2人にあれほど翻弄させられるというのは、ちょっと現実離れし過ぎているとは思うけど。
 『ヒミズ』でマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞して以来、『指輪をはめたい』『悪の教典』とスクリーンで目にする機会が増えた二階堂ふみだが、今まではどちらかと言えば穏やかな役ばかりだった彼女の、これほどまでに強烈な演技には驚いた。と同時に、これほどまでに幅広いキャラクターを作り上げることができる彼女の才能は本物で、これからの彼女がますます楽しみになった。