評     価  

 
       
File No. 1746  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2013年02月23日  
       
製  作  国   フランス  
       
監      督   オドレイ・フーシェ  
       
上 映 時 間   82分  
       
公開時コピー  
思う気持ちは永遠
苦しいほど静かな、愛の物語
 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
キ ャ ス ト   デボラ・フランソワ [as アダ]
西島 秀俊 [as 岡部]
阿部 寛 [as 石田]
フランソワ・パピノ [as ポール]
國村 隼
塩見 三省
倍賞 美津子 [as 岡部の母]
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
あ ら す じ    フランス人ジャーナリストのアダは、1995年に起きた阪神大震災の式典を取材するために神戸を訪れる。街は復興を遂げ、誰もがかつての悲劇と決別して豊かな暮らしを楽しんでいるかのようだ。通訳の岡部とともに、かつての被災者の家を訪ね歩くアダ。そして、マンションのとある部屋で彼らを出迎えたのは、今でも後遺症に悩む寡黙な男、石田だった。
 頑なな態度を見せる彼の心を開かせようとするアダだったが、岡部は石田が現世の男ではないと忠告する。しかし不思議な石田の存在に魅せられた彼女は、取材にのめり込んでゆく。やがて、彼が幻であることを悟ったアダは、岡部の故郷・淡路島の美しい風景の中に、石田の記憶を見出していく・・・・・。
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
たぴおか的コメント    神戸を舞台に撮影されて、登場人物も一部を除いてすべて日本人、台詞もほとんど日本語というフランス映画。コピーにある通り、終始静かに展開する物語だ。
 こんなことを言うと不謹慎かも知れないが、2年前に東日本大震災を経験した日本を舞台に、今ナゼ阪神淡路大震災をモチーフにするのかが疑問。確かに、阪神淡路大震災も東日本大震災も、日本にとっては多くの犠牲者を出した未曾有の大災害で、その記憶は何年経とうが決して風化させてはならないものだと思う。ただ、物事にはTPOというものがあり、それは映画においても然りで、この映画が製作された2011年に東日本を差し置いてまでも阪神淡路をテーマに取り上げると、フランス人にとってはともかくとしても、日本人には奇異に感じてしまう可能性があるのは否定できないだろう。
 映像を観ていると、大震災がどれほど悲惨なものだったかが、残念ながら伝わってこないように感じる。それもそのはず、既に震災から15年が経過した今では、震災が残した傷跡も癒え、神戸は完全に復興してしまっているのだから。もしかしたら、そんな神戸だからこそ、この作品の舞台に選ばれたのかもしれない。時によっては、震災の爪痕を露骨に見せる直説法よりも、敢えて震災の被害を目の当たりにはさせない間接法が有効であることは確かだから。ただ、それが震災を経験していないフランス人監督にできるかというと、実ははなはだ疑問だったりする。
 主演のデボラ・フランソワの透明感のある清楚な美しさは、この作品の趣旨に沿っていると言っていい。けれども、彼女の案内役である岡部を演じた西島秀俊の、相変わらずハッキリしない演技はいかがなものかと思う。フランス語の台詞に意識が完全に行っちゃってるんじゃないのかな(笑)。それに対して、阿部ちゃん扮する石田が、フランス語ではなく英語で会話するのはなぜ?その意図を作品からくみ取ることはできない。
 その石田の存在が、この作品をいたずらにオカルトチックにしてしまっている。彼が最初にアダに投げた質問、「地震がなぜ起きるか知っていますか?」その答えがラストで明らかになるが、地震の悲惨さを伝えるためとはいえ、あれじゃまるでホラー映画みたいで・・・・・。