評     価  

 
       
File No. 1754  
       
製作年 / 公開日   2012年 / 2013年03月09日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   ブライアン・クラグマン  
       
上 映 時 間   96分  
       
公開時コピー   大切なのはプライドか、
モラルか、それとも
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ブラッドリー・クーパー [as ロリー・ジャンセン]
ジェレミー・アイアンズ [as 老人]
デニス・クエイド [as クレイ・ハモンド]
オリヴィア・ワイルド [as ダニエラ]
ゾーイ・サルダナ [as ドラ・ジャンセン]
ジョン・ハナー [as リチャード・フォード]
マイケル・マッキーン [as ネルソン・ワイリー]
J・K・シモンズ [as ロリーの父]
ジェームズ・バブソン [as ダン・ツッカーマン]
ロン・リフキン [as ティモシー・エプシュタイン]
ブライアン・クルーグマン [as ジェイソン・ローゼン]
リズ・シュウタウバー [as キャミー・ローゼン]
 
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あ ら す じ    とあるホールで行われた、作家クレイ・ハモンドによる自らの著書“THE WORDS”の朗読会。観客席で彼の熱烈なファンと思われる女性ダニエラが見守る中、クレイは小説を読み始める。
 主人公ロリー・ジャンセンは作家としての成功を夢見ながら、なかなか芽が出ないでいた。しかし妻のドラ・ジャンセンは、そんな夫の才能を信じ、どんなときも彼を支えていた。2人は新婚旅行先のパリでとある骨董屋を訪ね、薄汚れたアタッシュケースを見つける。ドラはそのアタッシュケースを、ロリーへのプレゼントだと言い、購入するのだった。
 帰宅してアタッシュケースを手にしたロリーは、その中に彼が書きたいと切望していたような、魅力的な悲恋を描いた一束の原稿を見つける。ロリーは罪悪感を抱きながらも、無我夢中でその原稿を一字一句違えずにタイプで打ち直し、「窓辺の涙」とタイトルを付けて自分の小説として出版する。すると、本は瞬く間にベストセラーとなり、ロリーは金と名声を得るのだった。
 作家としての評価もうなぎ上りになったロリーの前に、1人の老人が現れる。彼は、「窓辺の涙」の原稿を執筆した本人だと告げ、自らが体験した辛い物語をロリーに語り始める。それは、第二次大戦終戦間もないパリで、彼がフランス人女性と恋に落ち結婚したものの、生まれたばかりの子供を死なせてしまった2人の気持ちは元に戻らず、彼はひとり故郷のアメリカに帰ってしまったというものだった。
 そこでクレイの朗読は終了する。そして、朗読を終えたクレイにダニエラが現れて、小説の続きはどうなるのかを執拗に尋ねる。彼女の問いに対する、クレイの答えとは果たして・・・・・?。
 
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たぴおか的コメント    つい先頃、『世界にひとつのプレイブック』『HIT & RUN』で立て続けにお目にかかったばかりの、ブラッドリー・クーパー主演作がまたもや公開。ブラッドリー・クーパー扮する主人公のロリーが、つい魔が差して誰の手になる物かわからない原稿を盗作してしまうという、よくある盗作ものかと思っていたが、この作品の場合はちょっと趣を異にする。
 ロリーとゾーイ・サルダナ演じる妻のドラは、実は小説の中の架空の人物で、小説の中の小説家が盗作をするという、二段構えの構成になっているのがこの作品の最大のポイントだ。そして、現実の中に虚構が入り混じるような感覚に囚われて、いつしか虚構と現実が逆転するような感覚を覚える、それがこの作品の最大の魅力だ・・・・・なんて思っていたのは、デニス・クエイド扮するクレイが小説の朗読を終えるまでで、そこからの展開は全くの予想外だった。そんなどんでん返しこそが、実はこの作品の最大の見せ所だったのだ。
 それがわかると、なぜクレイに自らの小説を朗読させたのか、そして、なぜオリヴィア・ワイルド扮するダニエラが執拗に小説の続きを知りたがったのかが見えてくる。まるで、ジグソーパズルの最後のピースを埋めた時に、全ての絵柄がハッキリと見て取れるのと同じように。そして、彼女の問いに対するクレイの回答に、彼のどんな気持ちが込められていた自ずと理解できるはずだ。また、そんな結末に至る布石が、序盤から巧みに配されていたことにも気付くだろう。
 ロリーの妻を演じたゾーイ・サルダナの、『コロンビアーナ』のイメージを完全に払拭するような、女性らしさを前面に押し出した演技が光っている。そして、『トロン LEGACY』のクオラのような目が覚める美しさはないものの、オリヴィア・ワイルドのミステリアスな雰囲気が役柄にマッチしているのもいい。ロリーとドラ、老人とその恋人、そしてクレイとダニエラという3つのペアのストーリーが見事に絡み合った、派手さこそないものの手堅い秀作で好感が持てる。惜しまれるのは、公開される劇場が完全に単館であることくらいかな。