評     価  

 
       
File No. 1757  
       
製作年 / 公開日   2012年 / 2013年03月15日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   ラナ・ウォシャウスキー
トム・ティクヴァ
アンディ・ウォシャウスキー
 
       
上 映 時 間   172分  
       
公開時コピー   いま、<人生の謎>が解けようとしている。  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト  

トム・ハンクス as  

  Dr.ヘンリー・グース
安ホテルの支配人
アイザック・サックス
ダーモット・ホギンズ
『カベンディッシュの大災難』の主演俳優
ザックリー

ハル・ベリー as

  農園で働くマオリ族、ジョカスタ・エアズ
ルイサ・レイ
出版パーティーのインド人女性客
ソンミの首輪を外す闇医者オビッド
メロニム

ジム・ブロードベント as

  モリヌー船長
ビビアン・エアズ
ティモシー・カベンディッシュ
路上の二胡弾き
プレシエント族

ヒューゴ・ウィーヴィング as

  ハスケル・ムーア
指揮者ケッスルリング
殺し屋ビル・スモーク
女看護師ノークス
メフィー評議員
オールド・ジョージー

ジム・スタージェス as

  アダム・ユーイング
安ホテルを追い出される客
メーガン(シックススミスの姪)の父親(写真)
スコットランド人のサッカーファン
ヘジュ・チャン
ザックリーの義弟アダム

ペ・ドゥナ as

  ティルダ
メーガン(シックススミスの姪)の母親(写真)
違法工場のメキシコ人女性
ソンミ451
ソンミ351
売春婦ソンミ

ベン・ウィショー as

  船の給仕係
ロバート・フロビシャー
レコード店店員
デニーの妻ジョージェット
部族の男

ジェームズ・ダーシー as

  若きルーファス・シックススミス
老年のルーファス・シックススミス
施設の看護師ジェイムズ
記録官

ジョウ・シュン as

  死体を発見する男性ホテル従業員
ユナ939
ザックリーの妹ローズ

キース・デヴィッド as

  召使いクパカ
ジョーネピア
アンコー・アピス将軍
プレシエント族

デヴィッド・ジャーシー as

  オトゥア
ルイサの父レスター(写真)
プレシエント族のデュオファイサイト

スーザン・サランドン as

  ホロックスの妻、アーシュラ
男性科学者ユースフ・スレイマン
アベス

ヒュー・グラント as

  ホロックス牧師
高級ホテルの警備員
ロイド・フックス
デニー・カベンディッシュ
リー師
コナ族のチーフ
 
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あ ら す じ    老人ザックリーには、時空を超えたいくつもの“自分”の物語があった。
 1849年の太平洋諸島。“彼”は医師ヘンリー・グースとして弁護士アダム・ユーイングと出会う。ユーイングはホロックス牧師と奴隷売買の契約を交わす。島で罹患したユーイングに、グースは無料の治療を買って出るのだが・・・・・。
 1936年、ユーイングの航海日誌を読む音楽家ロバート・フロビシャーは父親に勘当され、ゲイの恋人シックススミスのもとを離れて、スコットランドの作曲家ビビアン・エアズの家へ押し掛ける。フロビシャーはエアズの採譜者を務めながら、後に幻の名曲となる「クラウド アトラス六重奏」を作曲する。
 フロビシャーからの最後の手紙をシックススミスが受け取った37年後の1973年、サンフランシスコ。物理学者となったシックススミスは、人命に関わる原発の報告書をジャーナリストのルイサ・レイに託そうとして殺される。原発の従業員アイザック・スミスである“彼”はルイサと恋におち、会社を裏切る決意をする。
 2012年のロンドンで“彼”は作家ダーモット・ホギンズとして著書を酷評した書評家を殺し、カルト的英雄となる。大儲けした出版元のティモシー・カベンディッシュはダーモットの弟たちに脅迫される。
 2144年、遺伝子操作で作った複製種を人間が支配する全体主義国家ネオ・ソウル。複製種ソンミ451は密かに映画『カベンディッシュの大災難』を観て自我に目覚める。革命軍ヘジュ・チャンと恋におちた彼女は、自ら反乱を率いる。
 ソンミが女神として崇められる地球崩壊後106度目の冬の地で、進化した人間コミュニティーからの使者メロニムが若き日のザックリーの村を訪れる。ザックリーがガイド役となり悪魔の地と呼ばれる険しい山の山頂にたどり着くと、メロニムの驚くべき使命が明かされる・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    当初は公開初日の深夜11:00過ぎの回を観ようと思っていたのだが、172分という長尺作品と知り唖然。仕事を終えてのレイトショーで、しかもほぼ3時間という長さでは、熟睡してしまいかねないので断念し、春分の日の休日を利用して観ることにした。
 この判断は正解で、過去と未来が複雑に交錯するのについていくのは一苦労で、仕事を終えた深夜だったら睡魔に襲われて途中で挫折してしまっていただろう。それでも、次第にこの複雑な時間軸の切り替わりも苦にならなくなるどころか、完全に「今」を忘れてストーリーの虜になってしまっていた。おそらくは、最初の30分を乗り切るか否かによって、この作品が面白く感じるのとそうでないのとに別れると思う。
 6つのエピソードが交錯する壮大な叙事詩で、それなりに登場人物の人数もおびただしいのだが、驚くべきことに上記のキャスト欄を見ればわかる通り、それぞれの俳優が一人二役などちゃんちゃらおかしいとばかりに、数種類の役柄を演じ分けているのだ。その中で、トム・ハンクスは比較的わかりやすいのだが、男性が女性を、またその逆で女性が男性を演じているケースもあって、全てのキャストがどの役を演じていたかを見極めるのは無理だった。
 中には明らかにムチャ振りとしか言いようのないキャスティングもあり、ヒューゴ・ウィーヴィングの女看護師などは登場した瞬間に吹き出しそうになった。どう考えても笑いを取ろうとしているとしか思えず、実際あんなモノを見せられたら、笑うなと言う方が無理。また、ヒュー・グラントが演じたコナ族のチーフなどは最後までわからずじまいだった。あんなバットマンのジョーカーみたいなメイクじゃ、気付という方が無理だろうけど、彼にあんな役柄を振るのもまた凄い。2時間に収まる尺だったら、再度劇場で確かめたくなることは必至。ただ、エンド・クレジットでそれぞれのキャストが演じた役柄を画像で紹介してくれるので、少なくともキャストの紹介が終わるまでは席を立たない方がいい。
 ヒンドゥー教や仏教哲学に見られる「輪廻転生」の思想が、この壮大な物語のテーマのベースになっているようだ。同じ時代に同じ俳優が複数の役柄で登場することがないのは、その証左だろう。この手の輪廻転生だの、とかく宗教の教義をモチーフにした作品は正直好きになれないのだが、この作品の場合にはそれが全く鼻につくことなくすんなりと受け入れられる。その理由のひとつは、近未来のネオ・ソウルから文明が崩壊した遥か未来まで、様々な景観を描いた映像の見事さだ。そして、最初はイライラさせられたオムニバスに展開する6つの時代の切り替えが、逆に心地いい刺激になっていたのも、その一因だと思う。
 『空気人形』で体当たりの熱演を見せてくれたペ・ドゥナが出演しているのには注目していた。『空気人形』では(おそらくは演出だろうと思われるが)日本語の台詞はたどたどしかったが、英語の台詞は・・・・・何とも微妙だが、少なくとも並み居るハリウッドの名優に囲まれて見劣りしない演技を見せてくれていることは確かだ。今後はハリウッドでの活躍が増えるんじゃないかな?