評     価  

 
       
File No. 1784  
       
製作年 / 公開日   2013年 / 2013年04月26日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   三池 崇史  
       
上 映 時 間   125分  
       
公開時コピー  
日本全国民が、敵になる
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   大沢 たかお [as 銘苅一基]
松嶋 菜々子 [as 白岩篤子]
岸谷 五朗 [as 奥村武]
伊武 雅刀 [as 関谷賢示]
永山 絢斗 [as 神箸正貴]
本田 博太郎 [as 大木係長]
余 貴美子 [as 由里千賀子]
藤原 竜也 [as 清丸国秀]
山崎 努 [as 蜷川隆興]
 
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あ ら す じ    日本の財界を牛耳る大物・蜷川隆興の孫娘が惨殺したいとなって発見される。犯人は、8年前にも少女に対する暴行殺人を犯して逮捕され服役し、出所したばかりの清丸国秀だった。清丸は全国に指名手配され、警察による捜査が続けられていたが、行方はわからかった。
 ある日、大手の全国紙に「この男、清丸国秀を殺して欲しい。報酬として10億円お支払いする。」という、見開き全面広告が掲載される。蜷川による清丸への宣戦布告だった。そして、清丸を匿っていた男が清丸に対し殺意を露わにしたことから、身の危険を感じた清丸は自ら福岡県警に出頭するのだった。
 清丸を警視庁へ移送するために、護衛として選ばれたのは、警視庁警備部警護課SPから銘苅一基白岩篤子、捜査一課から奥村武神箸正貴、それに福岡県警の関谷賢示の5人だった。
 1,200kmに及ぶ清丸の移送には、5人の予想を遥かに超えた危険が伴っていた。日本全国民の誰が狙ってくるか分からず、それは警官すらも例外ではなかった。しかも、極秘に行われたはずの移送は、どこから情報が漏れているのか、蜷川が開設した“清丸サイト”に正確な現在位置が示されていた。
 誰がどこから襲ってくるか分からないという極限の緊張状態は続き、やがて精神的に疲弊していく5人は、理性を保つことも困難となり、自問自答をするようになる。「この男に命がけで守る価値があるのか?」「これが本当の正義なのか?」と。果たして彼らは、無事に清丸を東京まで移送することができるのだろうか・・・・・?
 
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たぴおか的コメント    原作を読んだことはないが、この映画を観た限りでは、間違いなく今年観た邦画の中ではトップクラスに属する作品。藤原竜也演じる清丸国秀という最低なクズを通して、人間なら誰もが心の奥底に抱える闇の部分があぶり出されるような作品だ。でもその反面、最低のクズに対して大沢たかお扮する銘苅や松嶋菜々子扮する白岩らが、何の手出しもできずにただ命がけで守らなければならないというジレンマが観る者にも伝わってきて、フラストレーションが溜まる一方で精神衛生上あまりよろしくないのも事実だ(笑)。
 観客の大半が、清丸に対して相当な嫌悪感を抱いたというこの作品。その点は前評判通りで、正直私も清丸を切り刻んでも足りないと思えるほどの不快感を感じた。それは裏を返せば、清丸を演じた藤原竜也の演技が非凡であるということだろう。清丸の行動には一貫したポリシーなど無く、場当たり主義的な愉快犯で、同情の余地など微塵もない。その姿勢は徹頭徹尾貫かれ、裁判での最後のコメントでも驚くべき発言をしている。もっとも、彼がその場で何を言うのかは、うすうす見当はついていたけど。
 大沢たかお扮するSPの銘苅と、松嶋菜々子が演じるSP白岩が優秀だという設定だが、それにしては油断して一度は清丸に逃げられそうになり、二度目は銃を奪われてしまうなど、信じられないような失態を繰り返すのは疑問だ。また、原作がそういう設定になっているのかは知らないが、余貴美子演じる由里千賀子のタクシーの登場や、清丸の最初の犯行の犠牲者となった少女の父親の登場は、あまりにも唐突すぎて不自然。
 ラストでは、溜まりに溜まったフラストレーションが一気に解消されるようなカタルシスを期待したが、残念ながらモヤモヤしたままで幕を閉じてしまった。あれほどまでに任務を貫き通した銘苅の倫理観、その原点には何があるのかを知りたい。