評 価
File No.
1820
製作年 / 公開日
2013年 / 2013年06月15日
製 作 国
日 本
監 督
福田 雄一
上 映 時 間
105分
公開時コピー
将来のことは、
考えないようにしています。
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最初に観たメディア
Theater
Television
Video
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キ ャ ス ト
堤 真一
[as 大黒シズオ]
橋本 愛
[as 大黒鈴子]
生瀬 勝久
[as 宮田修]
山田 孝之
[as 市野沢秀一]
濱田 岳
[as 村上政樹]
指原 莉乃
[as 宇波綾]
賀来 賢人
[as 本物の店長]
ムロ ツヨシ
[as 不動産屋]
川久保 拓司
[as 田中]
秋本 黎
[as 宮田正男]
ドナルド・アッシュ
[as ボブ]
蛭子 能収
[as クニさん]
尾上 寛之
[as キャバクラのヒゲ]
小柳 心
[as キャバクラの黒服]
村松 利史
[as キャバクラの新人・ホクロ]
池田 成志
[as 小室武士]
佐藤 二朗
[as 占い師]
水野 美紀
[as 宮田の妻]
石橋 蓮司
[as 大黒志郎]
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あ ら す じ
42歳、バツイチの
大黒シズオ
は、高校生の一人娘・
大黒鈴子
、父親の
大黒志郎
と3人暮らし。「本当の自分を見つける」と勢いで会社を辞めてから1ヵ月経つが朝から寝転んでゲーム三昧の毎日で、志郎はそんなシズオに毎日怒鳴り散らしている。
ある日、本屋で立ち読みをしていたシズオは突然ひらめき、「俺、マンガ家になるわ」と宣言。根拠のない自信をもとに出版社に持ち込みを続け、担当編集者の
村上政樹
に励まされつつ雑誌掲載を目指すが、原稿はすべてボツだった。バイト先のファーストフード店でのあだ名は“店長”だが、新人に叱られ、バイト仲間と合コンに行ってもギャグは不発。さらには鈴子に2万円の借金、何かと理由をつけて幼馴染の
宮田修
と飲みに行ってしまう。
そんな中、バイト先に金髪の新人・
市野沢秀一
がやってくる。初日からやる気がない彼をシズオは飲みに誘うが、宮田の奢りで自分は泥酔。シズオを送った市野沢は大黒家に泊まることとなり、これをきっかけに付き合いが始まる。しばらくした後、市野沢はファーストフードを辞めてキャバクラで働き始めるが、何かと揉め事が多く馴染めない様子だった。シズオも自信作の自伝マンガを持ち込むが、結果はことごとくボツで、「マンガは本気か、趣味か」と悩んだシズオは改めて「デビューしたい」と思い直す。
「自分には運がないだけ」と考えたシズオは、
占い師
に運気の上がるペンネームを付けてもらい“中村パーソン”の名前で描いたマンガが新人賞の佳作に引っかかる。一コマだけ小さく掲載された雑誌を買い占めたシズオ。果たしてシズオにデビューの日は訪れるのか・・・・・?
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たぴおか的コメント
星9個を付けたけれど、誰にでも胸を張って「面白い」と勧められる作品じゃない。多分、主人公の大黒シズオや、彼を演じる堤真一と私が同世代だからこそ、身につまされるというか、「人の振り見て我が振り直せ」というか、考えさせられることの多い作品だったのだと思う。
奇しくも今年の3月に公開された『ダークホース 〜リア獣エイブの恋〜』のコピーが“オレもまだ本気出してないだけ。”で、大黒シズオもまたエイブと同じリア獣と呼ぶにふさわしい。そして、『ダークホース』同様に観ていてとても痛い。恐るべきオプティミストで、自分が成功しないのはすべて周囲に原因があると思っている。ペシミストよりもオプティミストの方が成功する傾向があるようだが、このシズオにそれは当てはまらないだろう。現実に目を向けようとせず(ただ唯一救いなのは、分かっていて敢えて現実を見ないようにしている点かな)、自分がダメなのはまだ本気を出してないだけなんて、自分で自分に言い訳してる。そんなシズオは、一種のモラトリアムから抜け出せずにいる、典型的なダメ大人のひとりなんだろうな。橋本愛演じる娘の鈴子からお金を借りて、「バイト代入ったら返すから」だなんて、完全に親と子の立場が逆転しちゃってるし。もしかしたら、大黒家の家計はすべて鈴子が支えていたんじゃないのかな?
そんなシズオと対照的なのが、生瀬勝久扮する幼なじみの宮田修だ。絵に描いたような“いい人”で、現実の枠から逃れられずにいる、どこにでもいそうなサラリーマンだ。そんな彼のエピソードがシズオのハチャメチャさを中和してくれて、ちょうどよくバランスがとれているのかも知れない。
けれども、さすがのリア獣シズオも、自分を後押ししてくれていた濱田岳演じる村上が突然辞めてしまっていて、後任の女性編集者(予想もしないところでの総選挙で1位になったさしこの登場には驚いた)に自信作をボツだと言われたのは身に染みたようだ。そして、そんな落ち込んだ心境に追い打ちを掛けるように、娘・鈴子の衝撃的な一面を目の当たりにしてしまう。ただ、そんなシズオと鈴子の会話は、初めてまともな父娘の会話になっていて、シズオのお願いに対する鈴子の嬉しそうな笑顔が印象的だ。
その後も性懲りも無く漫画家としてデビューしようとさしこ扮する編集者・宇波綾に掛け合うシズオだが、おそらくは今までは口先だけだった「本気」を初めて出したんじゃないだろうか。綾の「私、生意気ですけど」というセリフには吹き出しそうになったけど(笑)。