評     価  

 
       
File No. 1834  
       
製作年 / 公開日   2013年 / 2013年07月20日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   宮崎 駿  
       
上 映 時 間   126分  
       
公開時コピー   生きねば。  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   庵野 秀明 [as 堀越二郎]
瀧本 美織 [as 里見菜穂子]
西島 秀俊 [as 本庄季郎]
西村 雅彦 [as 黒川]
スティーブン・アルバート [as カストルプ]
風間 杜夫 [as 里見]
竹下 景子 [as 次郎の母]
志田 未来 [as 堀越加代]
國村 隼 [as 服部]
大竹 しのぶ [as 黒川夫人]
野村 萬斎 [as カプローニ]
 
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あ ら す じ    大正から昭和にかけての日本。戦争や大震災、世界恐慌による不景気により、世間は閉塞感に覆われていた。子供の頃から飛行機が好きで、航空機の設計者への道を進む堀越二郎は、イタリア人飛行機製作者カプローニを尊敬し、いつか美しい飛行機を作り上げたいという野心を抱いていた。
 ある日二郎は、関東大震災のさなか汽車で出会った里見菜穂子と再会する。2人は恋に落ち、二郎は菜穂子に結婚を申し出る。けれども、奈穗子は彼女の母親の命を奪った結核に冒されていた・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    『崖の上のポニョ』以来5年ぶりとなる宮崎監督作品は、実在した零戦の設計者として知られる堀越二郎の伝記物。舞台は大正末期から昭和初期にかけての日本で、関東大震災や、アメリカ・ニューヨークの証券取引所の株価暴落に端を発する世界恐慌の煽りを受けた不況、そして太平洋戦争へと確実に歩を進める、そんな状況が描かれている。宮崎監督と言えば、どうしても『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』はもちろん、あの『ルパン三世』でさえも、ファンタジーの世界で包み込んでしまうという、そんなイメージが強いから、これはファンにとっては明らかに異色作となるだろう。
 最近のアニメにありがちな、主人公の声を声優じゃないタレントが演じるのにはうんざりしていたが、この作品ではあろうことか、声優でも俳優でもない庵野秀明に主役の堀越二郎の吹き替えをさせるのには、さすがに観る前から「大丈夫なのか?」という危惧を覚えた。で、観てみると案の定。二郎の台詞はあまりにも完璧な棒読みで、感情の起伏が微塵も感じられない。これなら『ハウル』のキムタクや『ゲド戦記』の岡田准一の方が数倍マシというもの。彼以外のキャスティングがしっかりと演じてくれていただけに、余計に主役の下手さが際立ってしまったようだ。作品自体は悪くないだけに、主役の吹き替えの下手さがすべてをぶち壊してしまったようで非常に残念だ。なぜ“声優”という職業が存在するのか、その意義をもう一度初心に返って考えてみる必要があるのではないだろうか。
 また、以前にもMemorandumに書いた通り、あの雑音としか思えない荒井由実の主題歌。何度も聞かされてきたとはいえ、エンド・クレジットで改めてあの悪声を聞かされると、はやはり耳を塞がずにはいられない、そんな不快感を抱かずにはいられなかった。
 フルCGのアニメに慣れてしまっている目には、手描きの映像は暖かさが感じられる。特に、宮崎アニメの人物の柔らかい造作は、やはり何度観てもいい。特に女性キャラクターは、『ルパン三世 カリオストロの城』のクラリス以来、私の期待を裏切ることのない魅力的な女性なのは嬉しい。また、極端にデフォルメされた地震の描写は、まるで大地が生き物のように躍動して、まさにアニメならではの映像と言えるだろう。
 夢に生きた男、堀越二郎・・・・・この作品を観る限りは、いささか子供じみた執着心の強い人物と見受けられる。得てして、天才肌の人間は周囲のことなどにはお構いなしで我が道を行く、というタイプが多いものだが、果たして二郎もそんなキャラクターだったのだろうか。