評     価  

 
       
File No. 1836  
       
製作年 / 公開日   2012年 / 2013年07月26日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   デヴィッド・フランケル  
       
上 映 時 間   100分  
       
公開時コピー   全部吐き出したら、
愛だけが残った。
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   メリル・ストリープ [as ケイ・ソームズ]
トミー・リー・ジョーンズ [as アーノルド・ソームズ]
スティーヴ・カレル [as バーナード・フェルド医師]
ミミ・ロジャース [as キャロル(近隣の住人)]
ジーン・スマート [as エリーン(ケイの友人)]
ベン・ラパポート [as ブラッド(ケイとアーノルドの息子)]
マリン・アイルランド [as モリー(ケイとアーノルドの娘)]
パッチ・ダラー [as マーク(ケイとアーノルドの義理の息子]
ブレット・ライス [as ヴィンス(アーノルドの友人)]
ベッキー・アン・ベイカー [as コーラ(ウェイトレス)]
エリザベス・シュー [as カレン(バーテンダー)]
チャールズ・テックマン [as チャーリー(博物館の案内人)]
ダニエル・フラハーティ [as ダニー(書店の店員)]
ダミアン・ヤング [as マイク(宿屋の主人)]
 
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あ ら す じ    アーノルド・ソームズケイ・ソームズは結婚31年目の夫婦。いつのまにか寝室は別、アーノルドの唯一の趣味はゴルフ番組、毎日の日課も夫婦の会話も365日ほぼ同じ。子供たちは独立し、二人にはもはや喧嘩の種さえ見つからない。そんな夫婦関係を見直したいと思い立ったケイは結婚生活のカウンセリング本を購入し、夢中で読み終えると著者のバーナード・フェルド医師のホームページにアクセスする。
 朝食の席、アーノルドに“カップル集中カウンセリング”を受けたいと告げるケイ。1週間4000ドルという料金に目をむいたアーノルドだったが、ケイは定期預金を解約して既に申し込んだという。アーノルドは行かないと突っぱねるが、結局渋々飛行機に乗る。メーン州のグレート・ホープ・スプリングス、海辺の小さな町でカウンセリングは始まった。フェルドはここに来た理由をケイに尋ねると「結婚したいんです。もう一度。ただ同じ家に住んでいるだけで、触れ合いも絆もない」と訴える。「まず長年の夫婦生活でできた傷痕を取り除くところから始めましょう」と勿体ぶった口調で語るフェルド。そんなカウンセリングの終了後、アーノルドは不平不満をまくしたてるのだった。
 2日目。出逢い、プロポーズ、いつから寝室を別にしたか・・・・・聞かれるままに夫婦の歴史を語る二人。だが、「最後のセックスは」という質問にアーノルドは口を閉ざす。フェルドは二人に、今夜お互いに抱き合うことという“最初の課題”を与える。猿のしつけじゃあるまいし、と食ってかかるアーノルドについにケイの感情が爆発。いつも明るく穏やかで夫に従順なケイの涙に動揺したアーノルドは、その夜遅くホテルに帰って来たケイと“課題”を実行する。
 3日目。課題をクリアしたことを嬉しそうに報告する二人。ところが、フェルドは更にハードな課題を二人に与えるのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    メリル・ストリープとトミー・リー・ジョーンズが、結婚31年目で倦怠期を迎えた夫婦を演じるコメディ。メリルが主演だけに、そうそうハズすことはないだろうと期待していたが、その期待にちゃんと応えてくれるのはさすがだ。そして、今まで何度もメリルにはお目にかかってきたが、今までの強い女性というイメージを覆し、初めて彼女が可愛らしく(と年上の女性に対して言うのも何だけど)見えた作品でもある。
 今まで多くの俳優がメリルの夫役を演じるのを観たが、この作品のトミー・リー・ジョーンズが何だか一番しっくりくるような気がする。2人を観ていると、結婚30年を過ぎた夫婦の典型的な関係なんだろうな、と自然に思えてしまう。ただでさえ口数の少ない夫・アーノルドのこと、次第にお互い言いたいことも言わずにいる、そんな状況に慣れっこになってしまうんだろう。そして、そんな状況に不満を感じるのは、得てして妻の方のようだ。
 そんなソームズ夫妻が選んだカウンセラーが、別の作品では40歳にして童貞という主人公を演じたスティーヴ・カレルというのも、映画というフィクションの世界ならではで、彼の出演歴を知る者にとっては、このキャスティングは見物かもしれない。そして、スティーヴ演じるフェルド医師がクソ真面目に夫婦に対して行うカウンセリングは、大抵の夫はアーノルド同様怒り出すに違いない(笑)。それでいて、フェルド医師は妙にコミカルだが決してふざけているわけじゃない、そう感じられるのもまた彼のキャラクターならではだ。
 フェルド医師の言葉「結婚したのが間違いの夫婦もある。でも、あなた達はそうじゃない」という言葉が重くしかし暖かく聞こえる。コピーにある通り“全部吐き出したら愛だけが残った。”ならいいのだが、全部吐き出したら何も残らない夫婦も存在するのだ。そして、結婚自体が間違いだった、“何も残らない”夫婦関係を修復できるとすれば、それはもはやカウンセラーではなく魔法使いだ。そして、魔法使いではない彼の目から見て、ソームズ夫妻は大丈夫だと判断したからこそ親身になってカウンセリングを行う、そんなフェルド医師の良心的な態度には心を動かされる。だからこそ、アーノルドでさえも最後まで投げ出すことなくカウンセリングを受けたのだろう。
 エンド・クレジットが始まって即座に席を立って早々に劇場を退出した観客がいたが、エンド・クレジットの映像は決して見逃しちゃいけない。私にとっては、エンド・クレジットでの映像が実に効果的で、グッと胸に迫るものがあった。確かに一旦は心が離れかけはしたものの、ソームズ夫妻は理想の夫婦像であることは間違いない。