評     価  

 
       
File No. 1839  
       
製作年 / 公開日   2012年 / 213年07月27日  
       
製  作  国   日  本 / アメリカ  
       
監      督   ピーター・ウェーバー  
       
上 映 時 間   107分  
       
公開時コピー  
戦いの果てに、わかり合えるのか
 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
キ ャ ス ト   マシュー・フォックス [as ボナー・フェラーズ准将]
トミー・リー・ジョーンズ [as ダグラス・マッカーサー元帥]
初音 映莉子 [as 島田アヤ]
西田 敏行 [as 鹿島大将]
羽田 昌義 [as 高橋]
火野 正平 [as 東條英機]
中村 雅俊 [as 近衛文麿]
夏八木 勲 [as 関谷貞三郎]
桃井 かおり [as 鹿島の妻]
伊武 雅刀 [as 木戸幸一]
片岡 孝太郎 [as 裕仁天皇]
コリン・モイ [as リクター少将]
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
あ ら す じ    1945年8月30日。第二次世界大戦で降伏した日本にGHQを引き連れたダグラス・マッカーサー元帥が降り立つ。直ちにA級戦犯の容疑者たちの逮捕が命じられ、日本文化の専門家であるボナー・フェラーズ准将は“名誉”の自決を止めるため、部下たちを急がせる。そんなフェラーズにマッカーサーは、戦争における裕仁天皇の役割を10日間で探れと命じる。連合国側は天皇の裁判を望み、GHQ内にもリクター少将を始めそれを当然と考える者たちがいたが、マッカーサーは天皇を逮捕すれば激しい反乱を招くと考えていたのだった。
 大学生の頃、フェラーズは日本人留学生島田アヤ<と恋に落ちるが、彼女は父の危篤のため帰国してしまった。以来13年の間、フェラーズは片時もアヤを忘れたことはなかった。だがアヤの捜索を頼んでいた運転手兼通訳の高橋から、アヤが教員をしていた静岡周辺は空襲で大部分が焼けたという報告が届く。そんな中、フェラーズは開戦直前に首相を辞任した近衛文麿に会い、開戦の3ヶ月前、戦争回避のため秘密裏に米国側と接したが、国務省がそれを拒否したという事実を知る。
 調査が行き詰まり、宮内次官の関屋貞三郎に狙いを定めたフェラーズは、マッカーサーの命令書を楯に強引に皇居へ踏み込む。関屋は開戦前の御前会議で、天皇が平和を望む短歌を朗読したと語る。説得力のない証言に腹を立てて立ち去るフェラーズだったが、深夜、天皇に最も近い相談役である内大臣で、近衛から重要人物と教えられていた木戸幸一が現れる。木戸はフェラーズに、天皇が降伏を受諾し反対する陸軍を封じるために玉音放送に踏み切り、千人の兵士から皇居を襲撃されたという経緯を聞かされる、だがその話を証明する記録は全て焼却されており、証人の多くも自決していた。
 戦争を始めたのが誰かはわからない。だが終わらせたのは天皇だ。フェラーズはマッカーサーに、証拠のない推論だけの報告書を提出する。マッカーサーは結論を出す前に、天皇本人に会うことを希望する。異例の許可が下り、社交上の訪問としてマッカーサーに会うという建前に沿って、ついに天皇がマッカーサーの公邸に現れる。しかし、天皇は周りの誰も知らない日本の未来を決めるある一大決意を秘めていた・・・・・。
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
たぴおか的コメント    太平洋戦争の終戦後、マッカーサー率いるGHQが日本の戦犯を洗い出す過程を、特に時の天皇裕仁を巡る経緯を、フェラーズ准将を主人公に仕立てて描かれた日米合作の歴史ドラマ。この手の真面目な作品のこと、さぞかし劇場はすいているだろうと思ったら、意外にもほぼ満席に近い状態だった。原爆記念日まで10日、そして終戦記念日まで約1ヶ月というなかなかの好タイミングでの公開だ。
 マッカーサーや東條英機、近衛文麿といった、日本史の教科書を開けば必ず遭遇する人物が登場し、仮にストーリーが少々つまらなかったとしても、歴史的興味に引っ張られて最後まで退屈せずに観ることができる。そして、そうならないように、主人公フェラーズと日本人女性・アヤの恋愛も絡められていて、こちらもおおかたの予想はつくものの、結末が気になって仕方ない。
 登場人物が大物ならそれを演じる俳優陣も豪華で(さすが日米合作だけある)、マッカーサーを演じるのはつい前日にメリル・ストリープの夫役でお目にかかったばかりのトミー・リー・ジョーンズ、東條英機に火野正平(もっとも、セリフは一言もないけど)、近衛文麿に中村雅俊、西田敏行、伊武雅刀、それについ2ヶ月前に亡くなった夏八木勲(味わいのある俳優だけに、本当に惜しまれる。遺作がこの作品を含め6作もあるらしい)といったそうそうたる顔ぶれだ。興味があるのはマッカーサーで、この作品では天皇を利用して日本国民をコントロールし、それを手柄にアメリカ大統領の椅子を狙う野心的な男として描かれているが、本当のところはどうなのだろう・・・・・?
 話はそれるかもしれないが、この作品を観ると日本が太平洋戦争に敗戦した理由が分かる気がする。西田敏行扮する鹿島大将とフェラーズ准将との会話で、鹿島は「もし日本とアメリカが戦争になったら、日本が勝つ」と断言している。けれども、その根拠にあるのは完全な精神論で、気合いだけで戦争に勝てるというものでは決してない。そして、もしもアメリカと日本の国力を冷静に分析したならば、日本がアメリカに勝てるはずなどないことはすぐに分かるはず。けれども、当時の日本の軍部はいわゆる狂信者たちの集まりだから、そんな冷静な判断ができる者がいるはずもなく、もしいたとしても非国民扱いされただろうことは間違いない。こうして、日本は負けるべくして負ける戦争へと突入していったのだ。
 そんな日本において、裕仁天皇が国民を救うために、戦争に終止符を打つべく動いたという事実は、天皇など所詮軍部の傀儡に過ぎない無力な存在だと思っていた私にとっては、非常に意外だった。そして、もし天皇のそんな英断がなければ、軍部は諦めることなく戦争を続けていたかと思うと、背筋が寒くなる。大学時代の憲法の教授を真似て、天皇陛下を「天ちゃん」などと呼んじゃいけなかったみたいだな(笑)。