評     価  

 
       
File No. 1858  
       
製作年 / 公開日   2012年 / 2013年08月31日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   熊切 和嘉  
       
上 映 時 間   114分  
       
公開時コピー   だって、愛してるの。  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   満島 ひかり [as 相澤知子]
綾野 剛 [as 木下涼太]
小林 薫 [as 小杉慎吾]
赤沼 夢羅
安部 聡子
小市 慢太郎
 
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あ ら す じ    昭和30年代の暮れ。染色家の相澤知子が帰宅すると、一緒に暮らしている年上の作家小杉慎吾から、木下涼太という男が訪ねてきたと告げられる。木下とは、知子が結婚していた12年前に出会い恋に落ち、夫と子どもを置いて駆け落ちした相手だった。大みそかの夜、風邪をひいて寝込む知子を小杉は優しく介抱していたが、妻の家へと赴く。小杉には妻子があり、きっちりと週の半分ずつを両方の家で過ごしているのだ。
 小杉との生活は8年になり、普段は安定した収入を持ち自立していることに自負を持つ知子だったが、このときばかりは寂しさがよぎった。年が明けて快復した頃にかかってきた木下からの電話に、寂しさから、会いにきてほしいと言ってしまう。その日から、小杉が妻の家に行っている間に木下と会い、小杉が帰って来たらいつもの穏やかな日々に戻る生活が始まった。嫉妬に駆られた木下は、こんな関係がいつまでも続けられると思っているのかと問い詰めるようになるが、知子は木下との関係を断つことができないでいた。
 木下の知子への執着が日に日に増す一方、知子は揺らぎないと思っていた小杉との生活に疑問を持つようになる。ある日、小杉の妻からの手紙を見つけて読んでしまい、そこに込められた妻の愛情に触れてしまった知子は、小杉の妻の家を訪ねる。小杉の妻は出かけており小杉しかいなかったが、家に溢れる二人の生活の生々しさを目にし、知子は逃げるように家を後にする。その後、何事もなかったかのように知子の家に来た小杉は、大衆小説の仕事を引き受けたことを告げる。軽蔑していた仕事をなぜ引き受けたのか責める知子を前に、居場所がないと泣き崩れる小杉。二人ともこの関係に息苦しさを感じていたと気付いた知子は、一から人生をやり直そうと決心する。そして夏の終わり、再出発を切った知子の前に、ある人が現れる・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    ひさしぶりの満島ひかり主演作だが、原作が瀬戸内寂聴の小説とあって、映画には向いてないのでは?という不安があった。この『夏の終り』という小説、瀬戸内寂聴本人に言わせれば、「自分が最も好きな作品」で、この作品を越える作品を書きたいと思いながらも果たせずに今に至っているとのこと。私は当然ながら原作たる小説を読んではいないから、小説としての評価はわからないが、「映画は娯楽でなければならない」という私の勝手なポリシーに真っ向から対立する映画であることは確かだ。
 全編から漂ってくる気だるさ、それはまさに夏の終わりの雰囲気そのものだろう。音楽もなくて台詞も少なく、恐ろしいくらい抑揚がなく静かに淡々と進んでいくうえに、場面が時系列をごちゃ混ぜにして展開するのには戸惑う。その結果、どうしても睡魔に襲われそうになる・・・・・というか、正直言えば何度か意識を失いかけた(笑)。
 作者の実体験に基づいた作品らしいが、単純に三角関係という言葉では片付けられない、まるで一本のロープの上を歩く綱渡りのような微妙な関係で、ほんの些細なきっかけで崩れてしまいそうな、そんな脆弱な人間関係は、観ている者をも不安にさせる。そもそも妻子ある男が若い女性と不倫に陥るという状況に反感を覚える私には、それが小杉の自分勝手な我が儘に過ぎず、知子はその犠牲者だと思えて仕方ない。そうじゃないと頭では分かっていても、感情がどうしても先行してしまうのだ。
 涼太を演じた綾野剛は、言っちゃ悪いがミスキャストに思える。悪い役者じゃないとは思うが、まだこの作品のような役柄を演じられるほど演技の幅が広いとは思えないし、人間関係の修羅場も経験していないだろうし。下手な役者が演じたら、作品そのものをブチ壊しにしかねない役柄だけに(幸い、そこまでの酷い演技じゃなかったが)、キャスティングをもう少し考えて欲しかった。