評     価  

 
       
File No. 1871  
       
製作年 / 公開日   2012年 / 2013年09月20日  
       
製  作  国   イギリス / アイルランド  
       
監      督   ニール・ジョーダン  
       
上 映 時 間   118分  
       
公開時コピー   これが 本当の 私  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ジェマ・アータートン [as クララ]
シアーシャ・ローナン [as エレノア]
サム・ライリー [as ダーヴェル]
ジョニー・リー・ミラー [as ルヴェン]
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ [as フランク]
ダニエル・メイズ [as ノエル]
マリア・ドイル・ケネディ [as モラグ]
ウォーレン・ブラウン [as ギャレス]
トゥーレ・リントハート [as ウェルナー]
 
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あ ら す じ    放浪生活を送る16歳の少女エレノアと8歳年上のクララが、海辺のリゾート地を訪れる。高齢者向けの保養施設で、若いウェイターのフランクに声を掛けられたエレノアは、彼に自分に似た孤独を感じ、親近感を抱く。その頃、夜の遊園地で、クララが内気な青年ノエルを言葉巧みに丸め込んでいた。ノエルは唯一の肉親である母を亡くし、ビザンチウムという老朽化したゲストハウスを相続していた。
 クララはビザンチウムを売春宿に仕立てて隠れ家にすることを思いつき、遊園地を根城にするポン引きの男を誘惑する。クララは男の喉笛を切り裂き、その血を飲み干す。クララとエレノアは、人間の血を吸って生きるヴァンパイアだったのだ。ある日エレノアは、自転車事故を起こしたフランクと再会する。フランクの左手から流れる血に、エレノアは胸騒ぎを覚える。彼は白血病の治療のため、抗凝血剤を服用しているという。フランクと心を通わせるにつれ、自分たちの秘密を知った人間は抹殺するという掟に良心の呵責を感じたエレノアは、自分の生い立ちを綴った“物語”を彼に手渡す決意をする。
 19世紀初頭、少女だったクララは海軍大佐ルヴェンの毒牙にかかり、娼婦に堕とされる。クララは身籠るが、娼館では育てられず、娘を孤児院に預ける。ダーヴェルが絶海の孤島の小さな神殿で儀式を受け、“同盟”と呼ばれる不老不死のヴァンパイア集団の一員になったことを聞きつけたクララは、孤島の地図を奪いヴァンパイアとなるが、男だけの“同盟”から追われる身となる。孤児院で16歳になっていたエレノアにも儀式を受けさせ、逃避行を続けたのだった。
 フランクは“物語”に動揺しながらも、エレノアへの愛を貫こうとする。しかしそれに気づいたクララはフランクを殺すため、彼の家へ向かう。しかし、その時既に“同盟”の追跡者も2人に迫っていた・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    この日は奇しくも午前中はゾンビ(『ウォーム・ボディーズ』)、そして午後からはヴァンパイアが主人公のこの作品と、モンスターのオンパレードとなった。主演がジェマ・アータートンとシアーシャ・ローナンという美女2人(と一応言っておこう)で、ヴァンパイアが絡む作品だという点以外は、例によって予備知識なしに観てみた。
 久しぶりに観たシアーシャ・ローナンが、ずいぶんと大人びて雰囲気が変わっていたのには驚いた。あまり好みとは言えない彼女だが、以前のような透明感が消えて、なんだか華のないフツーの女性になってしまったように思えるのは少し残念だ。シアーシャが演じるエレノアを静とするなら、動のクララを演じたのがジェマ・アータートン。最初は2人の関係が他人なのか姉妹なのか判別がつかなくて戸惑うが、実は2人が他人でも姉妹でもなく○○だったとは・・・・・不老不死のヴァンパイアならではの設定だ。
 この作品のヴァンパイアは従来のヴァンパイアと違って、血を吸う時には爪が伸びてきて、その爪で血管を切って吸い付くというスタイルは初めて観る。そして、血を吸われた者はヴァンパイアになることがなく、そのまま死ぬだけだ。だったら、2人がどうやってヴァンパイアになったかというと、実はある特殊な儀式を経なければならない。ただ、その儀式を女性が受けることは禁忌とされていて、実に封建的なヴァンパイア社会なのだ。だから、その禁を破ったクララとエレノアは同僚の組織に命を狙われることになるわけだ。
 『ぼくのエリ』や『トワイライト・サーガ』じゃないが、この作品でもヴァンパイアと人間とのロマンスが一つの核になっている。エレノアとフランクが恋に落ちるのだが、フランクを演じたケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、その長ったらしい名前は完全に忘れていたが、一目見て『アンチヴァイラル』の主役の彼だとわかった。『アンチヴァイラル』で強烈に印象に残っていた病的なまでの青白い肌が、この作品でも健在(?)だったからね(笑)。それはともかく、この作品での彼の役柄は末期の白血病患者という、やはり不健康なキャラクターだ。もしも彼が健康体だったら、エレノアの“物語”を読んで、それでも彼女に近づこうとしただろうか。おそらくは、自分の命が長くないという諦観が、ヴァンパイアに対する恐怖心を消し去ったのだろう。病魔に命を奪われるくらいなら、彼女の手にかかって死にたい、おそらくはそんな気持ちがあったことは、同じ男性として容易に想像できる。
 男尊女卑なヴァンパイアにも理解者がいたおかげでクララとエレノアは救われ、クララはエレノアを自らの手から巣立たせる。ラストは『トワイライト』よろしく、エレノアが瀕死のフランクを連れて秘密の儀式の場所へ。儀式の旅に流れる川の水が染まる深紅の色が印象的だ。