評     価  

 
       
File No. 1872  
       
製作年 / 公開日   2013年 / 2013年09月21日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   白石 和彌  
       
上 映 時 間   128分  
       
公開時コピー   知るべき闇は、
真実の先にある。
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   山田 孝之 [as 藤井修一]
ピエール瀧 [as 須藤純次]
リリー・フランキー [as 木村孝雄]
池脇 千鶴 [as 藤井洋子]
白川 和子 [as 牛場百合枝]
吉村 実子 [as 藤井和子]
小林 且弥 [as 五十嵐邦之]
斉藤 悠 [as 日野佳政]
米村 亮太朗 [as 佐々木賢一]
松岡 依都美 [as 遠藤静江]
ジジ・ぶぅ [as 牛場悟]
村岡 希美 [as 芝川理恵]
外波山 文明
廣末 哲万
九十九 一
原扶貴子
 
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あ ら す じ    ある日、雑誌『明朝24』の編集部に一通の手紙が届いた。それは小菅に身柄を拘置されている、死刑を求刑されて最高裁に上告中の未決囚須藤純次から届いた、まだ白日のもとにさらされていない殺人事件についての告発だった。彼は判決を受けた事件とはまた別に3件の殺人事件に関与しており、その事件の首謀者は“先生”と呼ばれる木村孝雄であること、“先生”はまだ捕まっていないことを訴えたものだった。
 上司から藤井に面会することを命じられた『明朝24』の記者藤井修一は、須藤から直接余罪を告白されて戦慄しながらも、ぬぐい去れない疑問を感じて裏付けの取材を開始する。徐々に裏付けされていく須藤の告白。その事件の凶悪さに憤りを抑えることができない藤井は、認知症の母の介護に疲れ果てた妻洋子の訴えにも耳を貸さなくなるまでに事件にのめり込んでいく・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    文字通り「凶悪」と言うべきか、あるいは「邪悪」とでも言うべきか。ピエール瀧とリリー・フランキーの老獪な演技が光る作品だが、これを観終えた後で爽快な気分になれる者はいないだろう。肝心の主役である山田孝之も、2人の演技には完全に翻弄されている感があるが、おそらくはそれが演出の狙いだったのかも知れない。
 ピエール瀧扮する須藤の極悪非道の限りは凄まじく、こういうヤクザが現実にいたらと思うと寒気を感じる。とにかく“人を殺す”という行為に微塵の躊躇も感じないのだ。こうしたらこういう結果を招くという先読みや計算ができない、その時その時の刹那のみを生きるような男なのだろう。そして、こういう直情型の単細胞な人間よりも怖いのは、冷静に計算づくで人を殺せる、リリー・フランキー扮する木村のような男だ・・・・・と思っていたのは中盤までで、終盤にさしかかるとこの須藤もまた驚くべき狡猾さを現してくるのには驚かされる。
 この作品、前半は木村がまったく登場せず、中盤になると今度は藤井がやはりまったく姿を見せない。シーンを時系列通りに並べるんじゃなく、現在からスタートして過去のシーンを挿入するという構成のためだが、この作品の場合はそんな凝った構成にせず、素直に時系列通りにした方がいいんじゃないだろうか。過去に須藤と木村がどれほど悪辣な行為を重ねてきたかを嫌というほど知らされた上で、おもむろに主人公の藤井が登場すれば、藤井の印象も途中でぼけてしまうようなこともなくなるんじゃないかな。
 藤井は木村の“凶悪”さに次第に虜になっていき、どんどん深みにはまって取材をやめられなくなっていくのだが、それを観ている自分も藤井と同じ陥穽に落ち込んでいたことに気づいた。だから、仕事を理由に認知症の母親の介護をすべて妻任せにする藤井の態度には腹立ちを覚え、池脇千鶴扮する妻・洋子が離婚届を突きつけた時には、思わず「よくやった!」と叫びたくなった。“悪”というものを嫌悪しながらも、無意識のうちにそのその徹底した“悪”に本能的に惹かれてしまう。それは、人間誰もが持つ悲しい性なのかもしれない。
 どうしても納得できない疑問が最後にひとつだけ残る。3件の殺人で起訴された須藤が懲役20年の確定判決なのに対し、1件の殺人だけで起訴されて残りは立件不可能な木村が無期懲役とは・・・・・木村はまだ第一審の判決だからなのだろうか?