評 価
File No.
1873
製作年 / 公開日
2013年 / 2013年09月28日
製 作 国
日 本
監 督
是枝 裕和
上 映 時 間
120分
公開時コピー
6年間育てた息子は、他人の子でした。
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最初に観たメディア
Theater
Television
Video
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キ ャ ス ト
福山 雅治
[as 野々宮良多]
尾野 真千子
[as 野々宮みどり]
真木 よう子
[as 斎木ゆかり]
リリー・フランキー
[as 斎木雄大]
二宮 慶多
[as 野々宮慶多]
横升 火玄
[as 斎木琉晴]
中村 ゆり
高橋 和也
田中 哲司
井浦 新
ピエール瀧
風吹 ジュン
[as 野々宮のぶ子]
國村 隼
[as 上山一至]
樹木 希林
[as 石関里子]
夏八木 勲
[as 野々宮良輔]
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あ ら す じ
学歴、仕事、家庭といった自分の望むものを自分の手で掴み取ってきたエリート会社員
野々宮良多
。自分は成功者だと思っていた彼のもとに、ある日病院から連絡が入る。それは、良多と妻
みどり
の息子・
慶多
が、実はふたりの本当の子供ではなく、他人の子と取り違えられていたというものだった。
6年間愛情を注いできた息子が他人の子だったと知り、愕然とする良多とみどり。取り違えられた先の
斎木雄大
と
ゆかり
ら一家と会うようになる。血のつながりか、愛情をかけ一緒に過ごしてきた時間か。良多らの心は揺らぐのだった・・・・・。
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たぴおか的コメント
ご存じカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した作品で、4日間の先行上映が特別映像付きということで、早速先行上映の初日に観てきた。仕事を終えての鑑賞で、下手な作品だと睡魔に襲われかねないところだが、眠気を催すこともなく120分があっという間に過ぎ、その意味では佳作であることは間違いないのだが、それでいてどこか物足りなさを感じたのも事実だ。
息子を取り違えられた2組の夫婦に福山雅治と尾野真千子、そしてリリー・フランキーと真木よう子という主役のキャスティングがまずは成功の要因じゃないかな。おそらく、福山と真木、リリーと尾野という組み合わせでは巧くいかなかったんじゃないか、そんな気がする。福山扮する一流企業に勤務する野々宮良多の妻は、黒髪が美しく清楚なイメージの尾野真千子じゃなければならないし、一方で庶民的な家庭の主はリリー・フランキーであり、その妻は真木よう子がふさわしい。言葉ではピンと来ないかも知れないが、実際に映画を観てもらえばわかってもらえると思う。
6年間注いできた愛情と血のつながり、そのどちらを優先するかが大命題となっていて、作品中では「ほぼ血のつながりを優先する」と語られているが、果たして本当だろうか。野々宮、そして斎木の夫婦も結局は血のつながりを選ぶのだが、面白いのは4人の反応。良多は血に固執するのに対し、その妻みどりは共に過ごした6年間を優先させたい。対する斎木夫婦は、2人揃って血のつながりだの年月だのにはこだわりがないようだ。そして、そんな斎木夫妻の鷹揚さが、結果的には子供にとって居心地がいいのは間違いない。
子供を交換してはみたものの、琉晴は斎木の家に帰りたい気持ちを捨てきれず、一人で都内から遠く離れた群馬まで帰ってしまう。一方の慶多は、やはり斎木の家の居心地がいいのだろうか、積極的に元の家に帰ろうとしない。これは、良多が社会的な地位では勝る斎木雄大に、人間として、そして父親としても完全に敗北したことを意味する。これはおそらく、それまでは仕事で成功することのみに心血を注ぎ、家庭における父親としてのあり方を顧みることすらなかった良多にとっては、自信の存在価値すらをも揺るがす事態だったに違いない。また、みどりにとっても慶多に愛情を注いできた6年の歳月が、斎木家に慶多がいた1年に満たない月日にかなわなかったという、痛烈な出来事だったことは明らかだ。家庭というものはみどりがひとり努力しても作ることはできない、夫婦と子供が心を通わすことによって、初めて築き上げられるものなのだろう。
そんな良多にも情状酌量の余地がある。彼自身が子供の頃に父親から愛情を注がれた経験がないようで、彼の父親像もおそらくはその時の経験に所以しているのだろう。子供を交換するという、通常ではあり得ないような経験を経て、彼はやっと自分が子供にどう接すべきか、その一端を知ることができたのだ。子供が生まれたからといって、即座に夫が父になるわけではない。そこには子供との気持ちを通い合わせることで一歩一歩父親として成長していくし、子供もまた父親の息子となっていく。「そして父になる」、良多にとってはあまりに遅いスタートかもしれないが、父親への第一歩を踏み出すことができるに違いない。
観る者によって受け取り方は異なるだろうが、必ず何か考えさせられる作品ではある。ちなみに私の場合は、父親失格を宣告された良多に思い切り共感してしまい、観終えた後しばらくは気持ちが落ち込んでしまった。そんな佳作だけに、さらにもう一歩登場人物の心情に深く切り込んで欲しかったと思わずにいられない。父親として、夫として、家族を作ることができなかった、「失格」の烙印を押された良多の苦悩は並大抵ではなかったはず。そして、そんな父親を6年間見てきた慶多が、一体どう感じているのかを。
最後に余談だが、つい先日観たばかりの『凶悪』に木村(リリー・フランキー)と須藤(ピエール瀧)役で悪行の限りを尽くした2人がこの作品でも共演しているのにはちょっとビックリ。『凶悪』では被告人だったリリーがこの作品では原告として、『凶悪』では証人だったピエールがここでは傍聴人として、同じ法廷に居合わせるというのは奇遇としか言いようがない。