評     価  

 
       
File No. 1875  
       
製作年 / 公開日   2013年 / 2013年09月28日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   園 子温  
       
上 映 時 間   129分  
       
公開時コピー   世界が笑った。  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   國村 隼 [as 武藤大三]
堤 真一 [as 池上純]
長谷川 博巳 [as 平田純]
星野 源 [as 橋本公次]
二階堂 ふみ [as 武藤ミツコ]
友近 [as 武藤しずえ]
成海 璃子
渡辺 哲
神楽坂 恵
でんでん
板尾 創路
江波 杏子
ミッキー・カーチス
 
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あ ら す じ    夫であるヤクザの武藤組組長・武藤大三を守るため、敵対する組織の幹部池上純らを刺して刑務所に服役した、妻の武藤しずえ。事件から10年が経過し、あと10日ほどでしずえが刑期を終えて出所することになる。武藤はしずえに、娘のは娘のミツコが女優になり、主演映画を撮影していると得意げに話したが、当のミツコは撮影現場から逃げ出して、映画はやむなく代役の女優を立てて間もなくクランクアップという事態になっていた。
 そんな時、10年前にしずえが殺し損ねた池上が組長となった池上組が、武藤の組に殴り込みをかけ、2つの組は一触即発の状態にあるにもかかわらず、しずえを失望させたくないあまりに武藤は驚くべき命令を組員に下す。それは、ミツコを主演にした映画を製作するというものだった。そして、組員からの「池上組への殴り込みを撮影する」というアイデアを気に入った武藤は、一石二鳥とばかりに殴り込みを映画にすることを決定するのだった。
 一方、ミツコは街で出会った青年橋本公次に恋人のふりをさせ、組の追っ手から逃げていた。橋本は10年前にCMに出ていたミツコに恋をして、今なおその気持ちを持ち続けていた。けれども、そんな2人はついに組員に捕まえられてしまう。橋本は落とし前に殺されかけると、ミツコは橋本を救いたい一心で、とっさに橋本が映画監督だと嘘をついてしまう。
 こうして橋本は、一転監督として祭り上げられるが、映画などずぶの素人の橋本は、ついに逃走を図る。そして、ひょんなことで映画の神様を信じるうだつのあがらない映画青年平田純の存在を知った橋本は、彼に映画を撮るよう頼み込む。これを映画の神様が与えてくれたチャンスと確信した平田は、橋本の頼みを一も二も無く引き受けて、自ら池上組に乗り込んでミツコに恋心を抱いていた池上を撮影に同意させる。こうして、本物のヤクザ同士の抗争を舞台に、史上最も命がけの映画がクランクインするのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    『愛のむきだし』といいこの『地獄でなぜ悪い』といい、こんなタイトルの作品は園子温監督作しかあり得ないと言いたくなるような奇抜なタイトルだが、中身もタイトルに負けず劣らずブッ飛んでいて、『冷たい熱帯魚』や『恋の罪』とは違った面白さだ。主役は國村隼演じるヤクザの組長・武藤だが、もう私の視線は最初から最後まで二階堂ふみから離すことができなかった。
 『ヒミズ』に続く起用で園監督のミューズと言ってもいい二階堂ふみだが、今回は『指輪をはめたい』のエミや『ヒミズ』の茶沢景子とは真逆な、どちらかと言えば『脳男』の緑川紀尚に近いようなキレた役柄。そして、これがセクシーなコスチュームもあって、コワイけど抗えない魅力的を持ったキャラクターを作り上げている。宮アあおいに似ているなんて言われている彼女だが(私も不覚にも一度だけ彼女と宮アあおいを間違えたことがある)、演技では型にはまった役柄が多い宮アに対して、どんな役柄もこなしてしまう二階堂ふみはすでに宮アを超えている・・・・・なんて思ったりする。
 いわゆる園組の俳優陣も渡辺哲を筆頭に、神楽坂恵やでんでんらもカメオ出演している。驚いたのは何とあの成海璃子が出演していたことで、最初は正直信じられなかった。一部のマニア向けだったような園作品が、『ヒミズ』の受賞がきっかけでその他大勢の映画ファンの間でも市民権を得た、そんな証でもあるような気がする璃子チャンの出演だ。
 出演者の異様なまでのテンションの高さは相変わらずで、中でも長谷川博巳の映画バカぶりは特筆すべきだ。ラストシーンで夜の街を一人で歓声(奇声?)をあげて走るシーンなどはその典型だろう。前述の二階堂ふみはもちろん、堤真一や星野源といった面々もまるで熱病に冒されたようで、クライマックスの抗争シーンは血まみれなのだがそれでいてどこか可笑しく、“世界が笑った”というコピーもあながち的外れではない、コミカルな仕上がりになっている。