評 価
File No.
1920
製作年 / 公開日
2013年 / 2013年11月29日
製 作 国
アメリカ
監 督
ポール・グリーングラス
上 映 時 間
134分
公開時コピー
「生きて還る
」
勇気だけが彼の希望となった。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
最初に観たメディア
Theater
Television
Video
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
キ ャ ス ト
トム・ハンクス
[as リチャード・フィリップス船長]
バーカッド・アブディ
[as ムセ]
バーカッド・アブディラマン
[as ビラル]
ファイサル・アメッド
[as ナジェ]
マハト・M・アリ
[as エルミ]
マイケル・チャーナス
[as シェーン・マーフィー]
コーリイ・ジョンソン
[as ケン・クイン]
マックス・マーティーニ
[as SEAL部隊長]
クリス・マルケイ
[as ジョン・クローナン]
ユル・ヴァスケス
[as フランク・カステラーノ艦長]
デヴィッド・ウォーショフスキー
[as マイク・ペリー]
キャサリン・キーナー
[as アンドレア・フィリップス]
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
あ ら す じ
2009年3月28日。マークス海運に勤務する
リチャード・フィリップス
は、マークス・アラバマ号の船長としてオマーンからケニアへ援助物資を運搬するため、妻
アンドレア
や2人の子どもたちとともに暮らす米国バーモント州の自宅を出発する。到着したオマーンのサラーサ港では、ベテラン船長らしく手際よく出航準備を進めていく。
乗組員は20名。マークス・アラバマ号は予定通りケニアのモンバサ港へ向けて出航するが、海賊の活動が激化する航路上で、2隻のモーターボートの追跡に気付いたフィリップスは警戒を指示する。ドバイの英国海運オペレーションとの交信を傍受した海賊たちは、フィリップスの芝居に乗せられて一度は引き返す。しかし、翌4月7日、再び追跡を始めた海賊がハシゴを使ってアラバマ号へ侵入してしまう。
大混乱の中、乗組員の大半は訓練通り機関室へ身を隠す。海賊は4人。英語堪能なリーダー格の
ムセ
に、血気盛んな
ナジェ
と
エルミ
、そして、まだ少年の面影を残す
ビラル
だった。フィリップスは金庫に保管した3万ドルの現金を持って渡すかわりに船から立ち去るようムセに提案するが、たかが3万ドルとフィリップの申し出を聞き入れようとしないムセは、ビラルとフィリップスを伴って他の乗組員を探し始める。
ガラス片を床にばら撒く、電源を止めるなどの時間稼ぎによって、機関室に隠れた乗組員たちが命を辛うじて繋ぎ止めると、やがて事態が急転する。隠れていた乗組員たちがムセの捕獲に成功したのだ。これにより、海賊たちは現金3万ドルを受け取ってアラバマ号の救命艇でソマリアへ向かうことを決断する。しかし、救命艇の発進直前、フィリップスが人質に取られてしまう。船会社との交渉によって、身代金を手に入れようというのだ。その頃、事件を知った米軍も救出に動き始めていた。一瞬の隙を狙って進行する救出作戦。全世界が固唾を飲んで見守るその結末とは・・・・・。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
たぴおか的コメント
久しぶりのトム・ハンクスの主演作は、ソマリア沖で実際に起きた海賊による人質事件を映画化した作品。実はあまり期待していなかったのだが(1,000円で観られる映画の日まで待ったのはその証拠)、ポール・グリーングラス監督の手腕もあってか130分を超える尺も全く苦にならない、スリルと緊迫感が心地良い秀作だった。
観る前はフィリップス船長が孤軍奮闘して乗組員を守るような展開を予想していたのだが、実は船を守ったのは海賊のリーダー、ムセを確保した乗組員たちで、確かに冷静に海賊たちを抑えようとしていたものの、フィリップスは大した活躍はしていないのだ。そんな状況でも、フィリップスが主役であることは誰が観ても明らかで、それはひとえにトム・ハンクスの存在感であり、それを裏付ける確かな演技力の賜物であることは間違いない。
この作品では確かに海賊側が一方的な悪なのだが、彼らにも彼らなりの海賊という行為を止むに止まれぬ理由があってのことで、それは富める者と貧しい者、さらには富める国と貧困に喘ぐ国という社会事情がある。マークス・アラバマ号を襲った4人の行動も決して私利私欲のためではなく、奪った金銭は彼らを操る上層部へそのまま吸い上げられてしまうようだ。
そう考えると、一方的に海賊を憎むわけにもいかない。リーダーであるムセは以前にも海賊の経験があり手慣れたものだが、彼にしたって専門の訓練を受けた軍人ではなく、一介の漁民でしかない。他の3人のメンバーにしても同様で、組織だった行動もできない素人集団なのだ。真の悪は、彼らを海賊行為に走らせた“長老”と呼ばれている集団で、4人“長老”たちによっては誤った観念を植え付けられた、哀れな操り人形でしかないのだ。
フィリップスはおそらく、4人の海賊たちがそんな哀れな犠牲者であることを知り、冷徹な計算の上に行動していたのだろう。銃を所持しているとはいえ、素人海賊でしかない4人とと、最新鋭の武器を装備したアメリカ軍の勝敗は戦う前から決している。そんな青写真があったからこそ、フィリップスは海賊たちに毅然と対することができたんじゃないだろうか。これを単純に「勇気」と賞賛することはできない、そんな気がするのは私だけ?