評     価  

 
       
File No. 1924  
       
製作年 / 公開日   2013年 / 2013年12月07日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   田中 光敏  
       
上 映 時 間   123分  
       
公開時コピー   狂おしき
<美>の原点。
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   市川 海老蔵 [as 千利休]
中谷 美紀 [as 宗恩]
成海 璃子 [as おさん]
伊勢谷 友介 [as 織田信長]
福士 誠治 [as 石田三成]
クララ [as 高麗の女]
川野 直輝 [as 山上宗二]
袴田 吉彦 [as 細川忠興]
黒谷 友香 [as 細川ガラシャ]
市川 團十郎 [as 武野紹鴎]
檀 れい [as 北政所]
大谷 直子 [as たえ]
柄本 明 [as 長次郎]
中村 嘉葎雄 [as 古渓宗陳]
伊武 雅刀 [as 千与兵衛]
大森 南朋 [as 豊臣秀吉]
 
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あ ら す じ    織田信長の茶頭として仕えた千利休。利休は信長にへつらうことなく美を徹底的に追い求め、その美意識はやがて信長家臣だった豊臣秀吉をも魅了する。秀吉の庇護のもと、利休は茶の湯を芸術の域にまで高め、茶聖と謳われるほどになる。しかし彼の名声が高まるにつれ秀吉は心を乱していき、利休を窮地に追い詰め、ついには切腹を命じる。3千もの兵が利休の屋敷を取り囲み、自刃のときが迫っていた。妻・宗恩の、ずっと想い人がいたのではないかとの問いかけに、利休は胸に秘めていた遠い記憶を蘇らせる。
 若い頃利休は色街に入り浸り、遊び呆けていた。そんな中ある女と出会い、彼女の気高さや美しさにすっかり心を奪われる。茶人・武野紹鴎の指導を受け、骨身を惜しまず彼女の世話をする利休。彼女は高麗からさらわれてきた、一国の王への貢ぎ物だった。いくら彼女と気持ちを通わせても、恋が叶うはずもなかった。別れの時が近づき、利休はやむにやまれぬ思いである事件を起こす・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    侘び茶を極めた希代の茶人・千利休の人物像を、美に対する異常なまでの執念という新たな解釈による観点で描いた同名小説を映画化した作品。今年の2月に肺炎のために66歳の若さで急逝した十二代目・市川團十郎が特別出演しており、私の記憶に間違いがなければ、團十郎と海老蔵父子のこれが最初で最後のスクリーンでの共演になるはず。
 市川海老蔵の重厚な演技が圧巻。時の天下人・織田信長や豊臣秀吉のいかなる言にも臆することなく、ただ己の信じるままに美を追究するその信念というか、もはや執念とも言うべきその姿勢には鬼気迫るものがある。そして、ただ鬼気迫る様相を演じるのは難しくないが、彼の場合は表面は常に感情を表さずに平静でいて、なおかつその内面では狂おしいまでの美を求める欲求を秘めているという利休を見事に体現していて、さすがだと感心するほかない。それでこそ「美は自分が決めるもの」「自分が選んだ物が伝説となる」なんていう大言壮語も現実味を帯びるというものだ。
 千利休が信長や秀吉のお抱え茶人だったことは知っていたが、その最後は秀吉によって切腹に追い込まれたのだとは初めて知った。この作品の利休を観る限り、天衣無縫な天才武将である信長のような男ならともかく、知略家である秀吉では利休と対等に渡り合うことは不可能だったのだろう。おそらくは神経を蝕まれていくような感覚に囚われて、心を乱さずにはいられなかったのだと思う。利休が自害した知らせを聞いて天守閣で叫んだ言葉が、秀吉の心情を如実に表している。
 つい先日『清須会議』で信長の弟・織田三十郎信包を演じていた伊勢谷友介に、今度は信長役でお目にかかったわけだが、彼の演じる信長は悪くない。次にもしも某局の大河ドラマで信長を描くなら、是非とも伊勢谷友介を使ってもらいたいものだ。