評     価  

 
       
File No. 1928  
       
製作年 / 公開日   2013年 / 2013年12月20日  
       
製  作  国   アメリカ / イギリス / ド イ ツ  
       
監      督   ジム・ジャームッシュ  
       
上 映 時 間   123分  
       
公開時コピー   世紀を越える愛  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ティルダ・スウィントン [as イヴ]
トム・ヒドルストン [as アダム]
ミア・ワシコウスカ [as エヴァ]
アントン・イェルチン [as イアン]
ジェフリー・ライト [as ワトソン医師]
スリマヌ・ダジ [as ビラル]
ジョン・ハート [as マーロウ]
 
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あ ら す じ    ミシガン州デトロイト。寂れたアパートでひっそり暮らすアダムは、何世紀も生き続ける吸血鬼だった。今はその正体を隠し、アンダーグラウンド・シーンでカリスマ的な人気を誇る伝説のミュージシャンとして活動していた。起きて行動するのは夜間だけで、必要な物の多くはイアンという男に調達を依頼する。時折、素顔を隠してワトソン医師の病院を訪れ、密かに血液を入手していた。そんな彼の元にある夜、モロッコのタンジールに滞在していた吸血鬼の恋人イヴがやってくる。
 久々に再会した2人は、アダムのアパートで愛を交わし、音楽や人間たちの犯した歴史上の蛮行について語り合う。少し眠った後、車に乗った2人はパッカード工場跡の廃墟、ジャック・ホワイトの生家、元ミシガン劇場の跡地を車で巡る。かつて自動車産業で栄えた都市も、今では貧困率の上昇と人口減少によって荒廃が進んでいた。やがて会話の中に、歴史上では16世紀末に死んだとされる異端の作家クリストファー・マーロウの名前が上る。その男は今、“キット”という名でタンジールに身を潜めていた。
 そんなある日、ロサンゼルスからイヴの妹エヴァが2人を訪ねてくる。87年前にパリで起きた“ある一件”が原因で、アダムはエヴァに怒りを抱いていたが、彼女はそのまま居座ってしまう。それから間もなく、エヴァがイアンの血を吸う事件が起きる。妹を庇っていたイヴも“なんてことを!今は21世紀なのよ”と激昂し、彼女を追い出す。イアンの死体を始末したアダムとイヴはタンジールへ向かい、血液を求めてマーロウのいる“カフェ千夜一夜”を訪れる。だがそこでは、汚染された血を飲んだマーロウが死の床にあった。血液を手に入れる術を失い、衰弱してゆくアダムとイヴ。もはやこの世では、高潔な吸血鬼たちは滅びるしかないのか・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    ヴァンパイアの恋人アダムとイヴを描いたラヴストーリーだが、ヴァンパイア物としてもラヴストーリーとしても異色の作品。全編を通じてあまりに気だるい雰囲気は、とてつもなく長い生を生きるヴァンパイア2人の気分そのものか。イヴを演じるティルダ・スウィントンは、もともとヴァンパイアが似合いそうな顔立ちだったが、さらに痩せた青白い顔はまさにハマリ役だ。そして、相手役のアダムを演じたトム・ヒドルストンは、一目見て『マイティ・ソー』『アベンジャーズ』のロキ役の俳優だとわかった。
 アダムとイヴが、なぜアメリカのデトロイトとモロッコのタンジールという、遙か離れた場所で暮らしているのかが謎。この作品の場合、2人が同居していたという設定でも、本筋に影響はないように思えるのだが。そしてもう一つ、アダムがアントン・イェルチン演じるイアンに頼んだ、木で作った弾丸の使い道も、最後までわからず仕舞いだ。こちらもストーリーの展開には影響ないようだが、どうも気になってしまって・・・・・。
 気だるさの中で生きる2人と対照的なのが、ミア・ワシコウスカ演じるイヴの妹・エヴァで、良く言えば天衣無縫で破天荒、悪く言えば人間にとってもアダムとイヴにとっても危険きわまりないヴァンパイアで、何をしでかすかわからないから観ていて不安で落ち着かないのなんのって(笑)。ただ、彼女の登場でスクリーンから伝わる雰囲気が一転して活気を帯び、明るくなるように感じるのはさすがで、これで眠気を覚まされた向きも少なくないんじゃないだろうか。
 この作品のヴァンパイアは、人間の血だったら何でもいいわけではないらしく、汚れた血を飲んでしまうと命に関わるのはマーロウを観れば一目瞭然だ。それでいて人を襲うことはしないのだから、食料の入手には苦労したことだろう。アダムは病院から血液を買うというルートを確保していたのだが、それもエヴァのせいで断念せざるを得なくなる。そして、背に腹は代えられないと、血に飢えたアダムとイヴが選んだ手段は・・・・・やっぱりね。